浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・弁天山美家古寿司 その1

6月24日(土)夜

土曜日。
ちょっと久しぶり。

浅草[弁天山美家古寿司]。

段々、予約が取れなくなってきた。

予約は18時から。

暖簾を分けて入る。

付け場の若親方に挨拶。

親方の姿は見えない。

鮨やの主人は、東京では親方。
大将ではない。間違えてはいけない。
大将は関西の言葉であろう。

伝統的には、江戸・東京は職人などの場合、
主人や頭を、親方といっていた。
唯一、大工だけが頭のことを、棟梁、という。
発音は江戸弁ではトウリュウと訛る。
江戸落語に登場する。

いきなり余談で恐縮だが、放送中の、NHKの朝ドラは
かなりひどい。
今東京が舞台だが、長屋になにか落語家がいた。
この人が自分のことをワシなどといっていた。
これはあり得ない。ワシは江戸弁ではない。
ワシは、西日本の言葉であろう。東日本は、男女ともに
オレであろう。あるいは江戸東京でいうとするとワッチ、
あるいはアッシになる。落語家など江戸弁を使う
代表ではないか。

また、印刷所が出てきたが、この主が奥田瑛二氏。
ちゃんとした江戸弁を使っていたのが、流石。
だが、いけないのは従業員が大将と呼んでいたこと。
これも先の理由で、親方が正しかろう。
NHKはもう東京弁の考証はしないことにしたのか。
このドラマでは牧野先生の出身、土佐弁には力が入っているよう。
東京弁はどうでもよいのか!、で、ある。
ベランメイにしろとはいわない。雰囲気を壊すので。
せめて語彙ぐらいは配慮してほしいのだが。

閑話休題

カウンター、若親方の前に掛けて、ビール。
キリンラガー。

お通しはマグロの佃煮。

さて、まずは、つまみなのだが、
なにがよかろう。
たこがよいのだが?、え?、ない。

かつおはある。蒸し鮑(あわび)はどうですか、とのこと。
あー、鮑の季節。
夏は鮑。江戸前鮨では、蒸し鮑となる。
だが、蒸し鮑なら、にぎりがよいかな。
穴子はどうかというので、かつおと、
もらってみることにする。

と、食べてほしいと、
おまけで、蒸し鮑を出してくれた。

鮑の塩蒸し、蒸し鮑。
上にのっているのは、肝。

かなり柔らかで、滋味深い味。
肝もうまい。

塩蒸しといっているが、実際には、長時間塩ゆでし、
ゆで汁も再度、鮑に含ませたもの。

鮑の肝というのは、珍味とされている。
今頃になると魚やに売っていることがある。
一度買ってみて、甘辛く煮てみたことがあるのだが
苦くてとても食べるものにはならなかった。
裏漉して、いかの墨を加えてより黒くしているとのこと。

穴子

右に添えられているのは、ゆず胡椒とのこと。

穴子は炙ってある。
香ばしい。

ん!?。
甘い。

最初はゆず胡椒が甘いのかと思ったが
まさか。

穴子が砂糖を入れて煮る、沢煮なのであまい。

そう。
ここではあまり、穴子は食べてこなかった。

鰹。

たたき。

辛子と、しょうがじょうゆ二種類。

アップ。

わら焼き、で、あろうか。
香ばしい。

そして、みずみずしいフレッシュな身。

やっぱり、プロの目利きと、プロの技。

魚やに売っている、鰹とは雲泥の差であろう。
やはり、鰹はプロに任せなければいけない。

鰹というと「梅雨小袖昔八丈(つゆこそでむかし
はちじょう)」という歌舞伎芝居を思い出す。
通称「髪結新三(かみゆいしんざ)」。
もともとは江戸の講談種で落語になり、それを芝居に
したのが河竹黙阿弥。初演は明治初め。芝居も人気で
今もよく上演されるし、落語も圓生師の音が残っている。
芝居としても、落語としても私は好きである。
この芝居のキーになる日が旧の5月の節句
つまり5月5日。前日は雨だがこの日は梅雨の晴れ間。
新三は鰹を一本買う。
旧の5月5日は今年はいつかと調べてみると、
6月22日のよう。そう、この木曜であった。

当時の江戸で食べられている鰹は駿河静岡県)で
獲れたものであったのであろう。
この鰹がどこで獲れたものかわからぬが、
やはり、ちょうど今食べるべき魚である。

 

つづく

 

弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

 

 

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