浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・弁天山美家古寿司 その2

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引き続き、浅草弁天山[美家古寿司]。

本来店の名前が[美家古寿司]で弁天山は地名。

店の裏側がもう浅草寺でその境内にある小さく
小高い丘、これが弁天山。弁天堂と浅草の時の鐘が
ある。もちろん、江戸の頃から今も。
その昔は時の鐘なので、毎正時に突かれていた。
今も突かれているのだが、さすがに明け六つだけ。

江戸の時刻だと、夜明けで、季節によって今の時刻としては違っていた。
ほぼ知られていないだろう。
騒々しい現代では、早朝でも鐘の音は近くでなければ
聞こえない。この時刻に東武の浅草駅から電車に
乗ることがあったので聞いたことがある。

ともあれ。
[美家古寿司]。

つまみをいくつかもらって、にぎりに。

カウンターではないので、お兄さんに声を掛けて
ばらばら頼む。

四つ。

上左、平目昆布〆。
その下、きす。
その右、勘八。
上、小肌。
すべてニキリが塗られている。

にぎり鮨を頼む順番というのは、まあ、好きなものを
好きな順で頼めばよいと思うのだが、
淡泊なものから頼むのが一応のセオリー、で、あろう。
ただ、同じものをいくつも頼むのは
マナー違反である。
他の客に出せなくなってしまう。

平目昆布〆。
昔の江戸前仕事を続けることを標榜している
この店の看板といってもよいだろう。

昆布〆仕事自体は江戸前に限らず、日本中にある。
特に富山、金沢など北陸では多用する。
歴史的に北陸は昆布食文化が根付いている。
名物の鰤(ぶり)、かじきなども昆布ではさんで
漬け込んだものもあり、うまい。

水分が抜け、うま味が加わる。
淡泊な白身によく施されるわけである。

きすは、酢〆。
これも珍しいかもしれぬ。江戸前仕事。
きすは今も東京湾でよく獲れていると思う。
刺身では食べないが、こうして〆て握るのが
江戸前
強く〆るところもあるが、ここは浅め。
ここでは年中ある。
うまいものである。

そうであった、このきす、背開きではなく
腹開き。やはりこの方が見栄えがよい。

勘八は、お気付きであろうか、厚く切ってある。
どうもこの店では勘八以外もサクのものは、
厚く切る。
昔からだと思うが、なぜであろうか。
今度聞いてみよう。

小肌。
小肌も江戸前鮨を代表する種であろう。
今は大きいので、半身。
強くもなく、浅くもなくちょうどよい〆具合。

次は、

上左、引き続き、光物、鰺。
上右もう少し先に頼んでおくべきであったが、
すみいか。
下左、ヅケまぐろ。
下右、海老。

鰺は酢洗いか、軽く〆ているくらい。
生とはまた違ううまさがある。

すみいかは、つまみで真子と白子を出して
いただいたが、この時期は産卵期で最も
大きく、堅くなっている。
すみいかではなく、年中柔らかいあおりいか、
などに替えるところも多い。
しかし、ここはこれを出す。
聞いたことはないが、むろんのことわかっていて
使っているはず。なにか哲学があろう。
堅いのもすみいかのうまさ、ということか。

づけまぐろは、中トロも置いているが、
やはりノーマルな赤身がうまかろう。
これほど味が変わる、あまみが出る拵えも
なかろう。

海老は内儀(かみ)さんの希望でおぼろを
はさんでもらった。
なぜか、好きなのである。

ここはただのゆで車海老ではなく、甘酢を
くぐらせている。
これが江戸前仕事。
ほんのり、ではあるが、注意をして食べると
感じる。
ぷりぷり。

もうそろそろ、腹も一杯。

玉子焼きと海苔巻。

玉子焼きは、内儀(かみ)さんの希望。
酢飯はなし。(写真を撮り忘れた。)
魚のすり身の入った、江戸前仕事の
伊達巻のような玉子焼き。

海苔巻はかんぴょう巻、さび入り。

ひもきゅう、梅きゅう、いわし巻、平目の縁側巻、、
いろんな海苔巻を食べてきたが、やっぱり
最後は、かんぴょう巻に戻ってくるか。
ただ、わさびだけは入れてもらう。
大量ではない、ちょいと。

これがうまい。

以上、ここまで。

一人、ビールを入れ10,000円ほど。
つまみが多かったか。

ともあれ、高くもなく、安くもない、
リーズナブル、で、あろう。

うまかった。

いつもご馳走様です。

 


弁天山美家古寿司

台東区浅草2-1-16
03-3844-0034

 

 

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