浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野・そば・翁庵

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3822号

3月24日(水)第一食

天気もよく、暖かい。
桜も咲いている。

だがまあ、上野の山だったり、隅田公園だったり、
人の集まるところにはいけなかろう。

そばやで一杯。

13時、まあ、こんな時刻。

どこがよろしかろう。
やはり、どこでもよい、というわけにもいくまい。

ご近所のサラリーマンがお昼にくるようなところは
やめた方がよいだろう。
場違いである。

上野[翁庵]。
あそこであれば、いろんな人がくるので
まあ許してもらえるか。

もうコートはなし。
自転車で出掛ける。

上野警察前の信号。
歩道のフェンスの前にとめる。

もうそろそろお昼のお客は引けているか。

店に入ってすぐ右側の帳場で、
お酒一合とねぎせいろ。
冷(ひや)でいいですか?。と、聞かれた。
あ、はい。
ここで聞くんだ。

もう、冷でよい陽気であろう。

一番奥のテーブルがあいている。
あそこがよいだろう。

TVと出入口の方向を向いて掛ける。
TVは高校野球だが、遠くて音は聞こえない。

食券を出す。
お姐さんが、おそばも一緒でいいですか?。
はい。

ねぎせいろであれば、十分酒が呑める。

すぐにきた。

きんぴらごぼう
ここのお通しは、こんなのが多い。
この気安さがよい。

一杯、二杯、呑む。

ねぎせいろもきた。

そばつゆに漬かった小さなかき揚げ。
かき揚げの中は、ねぎといか。

これがここ看板のねぎせいろ。
このタイプのそばは、東京でもここと、
室町[砂場]以外では見たことがない。

天ぬき、鴨ぬきというのがあって、酒を呑む
のであるが、それがこれだけでできてしまう。
つゆは下町らしくやはり濃いめ。

つゆに漬かったかき揚げ一本呑んで
そばを手繰る。

ここのそば、写真でお分かりになろう。
緑色。

元来、新そばの頃の色だと思うのだが、
ここは季節を問わずこの色。

色を付けている、かもしれない。
緑色にするのは、藪系の特徴であった、
というのも聞いたことがある。
確かに、藪本家格の神田の[やぶそば]

は今も比較的この傾向が強いように見える。

ここ、上野[翁庵]は、名前通り神楽坂[翁庵]
分かれ、と、いう。
今の神楽坂[翁庵]のそばの色はノーマル。
まあ、分かれたのは明治32年と遥か昔ではあるが。

ともあれ。

上野[翁庵]、今私はもっとも居心地がよい
そばやである。

歴史から言えば、老舗といってなんら問題がなかろうか、
肩ひじ張ったそんな敷居の高さはまったくない。
そばも然り。
自然体。
ちょうどよい。

 

台東区東上野3-39-8
03-3831-2660

 

 

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