浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



赤酢の酢飯で春子にぎり その2

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さて、引き続き春子(かすご)。

小鯛の酢〆・春子は、歴史的には、広重のにぎり鮨の浮世絵に
既に描かれているので文化文政のにぎり鮨が生まれた頃には
存在していたのであろう。

鯛の旬は春から夏。
特に春の真鯛は桜鯛などともいう。
また春は、子持ちの鯛も多いが、生まれるのもこの時期。
従って、小鯛がよく獲れるのも今、なのであろう。
それで、春子。

春子は江戸前の鮨やであれば、年中置いている
ところが多いと思うが、やはり春から、初夏の今が旬。
小鯛でも脂がある。

ともあれ。
調理に戻ろう。

塩をしている間に、米を洗って、炊く。

2時間後、こんな感じになる。

ペーパータオルにあげる。

ご飯が炊けたら、8分蒸らし。

なん度も出しているので、写真も動画もいいだろう。
今日は文章のみで。

一合分、飯台でいつも通り、赤酢:穀物酢、7:3程度の
割合で、40cc、合わせた酢をまわし入れる。

しゃ文字でよく合わせる。

気温が上がっているので、冷めずらくなってきた。
湿度も高くなっているので、同時に水分が飛びずらい。

混ぜすぎは、厳禁。
中途半端に温度が下がって、混ぜ続けていると、
粘りがすぐに出てきてしまう。
多少、粘ってきたな、と感じたら、すぐにストップ。

薄く広げて、置いておく。
今日は1分長く、8分。

いつも通り団扇であおぐようなことはしないが、
換気扇をまわしておく。

この時間でご飯粒の表面のネバネバを冷やし固めるのである。

この間に、春子をにぎり用に切る。

黒い俎板を買ってみたので、黒バック。

毎度のことだが、このにぎり一つ用に切る、というのは
悩ましい。やはりプロは実にきれいにうまく切っているのが
しみじみ判る。

にぎり方がプロの場合よくいわれるが、それ以上に
この切り方はシロウトには簡単に、真似はおろか、
どう考えているのかすら、私には正直のところまだ
わかっていない。

にぎり一つの大きさ、にぎった後の見栄えももちろん
考えられている。

まず、にぎり一つは、今は鮨やでは、かなり小さくなっている。
私の切り方、にぎる大きさは、比べると随分大きい。
いや、大きくなってしまうと言った方がよい。
半身を今日は、二つ分にしているが、余りは出したくない。
プロは、にぎった一つの大きさを固定しているので
余りを出すのも厭わない、のである。

また、にぎった後、きれいなだけではなく、切れ込みを
入れたり、ひねったり、芸術的に美しく見えるように、
切ってにぎる。やはり、江戸前鮨職人の磨かれた技、で、ある。

わさびを小皿に、もちろんチューブのもの、を、出し用意。

ここから握る。
まず、手を水道で湿らせる。

今、一つ握る毎に、これをしている。
そう、無自覚にこうしていた。
プロは、水(であろうか)を器に取ってあり、これを
付けていたような、、、。今度、こうしてみよう。

飯台から一つ分の酢飯を左手のひらにのせ、形にする。

なん度も握ってきて遅まきながら最近やっとわかってきた。
この左手の段階でにぎりの形はほぼ決まっているのである。
それで、ねたをのせる以前にできるだけきれいな形にしなくては
いけないのである。今は、この段階をかなり気を付けている。

右手の指も使いながら上下を整え、左手のひらの上で、
回転させてもいる。プロはこの段階で回転させていたかどうか、
怪しい、のではあるが、回転させることで飯粒がまとまってくる。
そう、おにぎりを握る感覚である。回転させるということは
手のひらの中で、浮かせているのである。
これで、まとまる。

また、堅くにぎりすぎないのがよし、とされているので
あまり、これも気を付けつつ。

形が決まってきたら、左手の酢飯は握ったままで、右手だけで、
ねたの裏にわさびを右手人差し指で塗る。
そして、左手の酢飯の上にのせ、にぎりながら、右手人差し指と
中指の二本で、押さえる。のではあるが、なぜだかここ、
人差し指一本になってしまう。
裏返して、もう一度押さえる。これで、一つ完成。

参考に前回のいわしにぎりの動画

アラからとった潮汁と一緒に買っためかぶも出す。

アップ。

ビールを開けて、上からしょうゆをたらし、口に入れる。

初めて作った割には、上々ではないだろうか。春子にはなっている。
ただ、どこかわからぬが、ほんの少し柔らかい食感の部分があるのが
気になるのだが、なんであろうか。
ともあれ、赤酢の酢飯に合うことは言うまでもない。
潮汁も、もちろん、うまい。

さばくのに、まだまだ決心がいるが、春子にぎり、また
試みてみよう。

一つだけ、おまけ。

翌日。残った赤酢の酢飯にもみ海苔を敷いたちらし。
やはり、一日置いた方が、よく〆ってうまかった。