浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



赤酢の酢飯で鉄火丼

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3月1日(日)第二食

日曜日。

赤酢の酢飯で、、シリーズ。

にぎりの鮨も、ある程度、自分の好きな種は一巡した。

〆鯖、白魚、煮いか、ヅケまぐろ、いくら、鰺、鰯、鯛、煮穴子
サーモン、、、、。
貝類がないが、なん度か書いているが、好物ではないから。
もちろん、食べられないことはないし、小柱、平貝あたりは
好きな部類ではあるが。

さらに赤酢の酢飯で、巻きずし・細巻、稲荷もやった。

赤酢というのは、酢飯として、透明な酢よりも確実にうまい。
これはずっと作ってきてわかったことであるし、
だからいろいろな種でやってみたくなったのではある。

ここで少し復習をしよう。
赤酢というのは、酒粕を原料にして作られた食用酢。
以前は、透明な酢よりも廃品利用で安いものであった。
そして、江戸時代後期、江戸でにぎりずしが生まれたわけだが、
この頃、この安い赤酢から酢飯を作っていた。
今でも、江戸前を看板にしている鮨やでは、この赤酢の
酢飯を使っているところは少なくない。

純粋な透明な酢よりも、おそらくアミノ酸などの旨味成分が
多いのであろう、酢飯としてうまく、また、特に、江戸前
仕事と呼ばれるような、煮たり、〆たりした種によく合う。
こんなところが、わかってきたことである。

ちなみに、今使っているのは、これ。

岐阜の内堀醸造というところの美濃三年酢というもの。
赤酢は今はレアな製品なのだが、それでも全国でいくつか
作られてはいる。
ここのものは、中でもかなり安い。
だが、比べてみても品質、味はなんら問題なく、使っている。

と、いうことで、いささかひねり出した感じ、
ではあるが、今日は、鉄火丼

ご存知、酢飯の上にまぐろをのせた丼。
東京でいうところの“ちらしずし”をまぐろだけにしたもの。

やはり赤酢の酢飯に合うのではという仮説である。

私自身、鉄火丼は好物である。
いろいろな種をのせた、ちらしよりもよい。

最近は海鮮丼が大流行りである。
海鮮丼は、酢飯を使わないという違いがあるというが、
やはり、私は酢飯を使う、ちらしの方に一票を入れたい。

ともあれ、鉄火丼
まぐろではあるが、赤身を使うのが、値段の問題もあって
一般的であろう。
だが、これは中トロにしたい。

これは、古今亭志ん生師、で、ある。
娘の美濃部美津子氏が書かれた「志ん生の食卓」
https://amzn.to/3adPxJG

にあったと記憶している。志ん生師は、好物の煮穴子
中トロを半々のせた丼がお好みであったと。

これは実際にやってみているのだが、

片や甘辛、片やわさびじょうゆで、混ざると、いけない。
どちらも江戸っ子好みで意図はよくわかるが、
やはり別々に食べたい。

ともあれ、鉄火丼をするのなら、断然、中トロである。

吉池で、まぐろ中トロ、、だけでは値が張るので
中トロ数切れ入り2パック(各400円)と、
赤身切り落とし1パックを購入。嵩増し、で、ある。

もう一つ、細切り海苔。
海苔は、酢飯の上に敷く。

最近、和食やなどでは、ただちぎっただけのもみ海苔
ではなく、細く切った海苔の方が見栄えがよいからか、多く見る。
もみ海苔はある。必要であれば、切ればよいか。

OK。

いつものように、電気炊飯器、酢飯モードで炊く。

もみ海苔の準備。
缶入りのものだが、レンジで20秒ほど加熱しパリッとさせる。
細く切ろうと考えたが、大差ないであろう、
そのまま使うことにする。

切れたら、7~8分蒸らし。

鮨酢もいつも通り、一合に40cc程度、透明な穀物酢と赤酢半々。

まわし掛け、

混ぜ込む。

ムラのあるところにはちょっと、インチキをして、
赤酢をたらして、混ぜる。
だが、それでも完全にムラなく混ぜ込むのは至難。

7~8分、落ち着かせる。

OK。

丼に、酢飯を盛り、もみ海苔、まぐろを並べる。

出来上がり。

どうであろうか、なかなかよい色の中トロではないか。
まぐろは、アイルランド産としてあった。

しょうゆにわさびを溶き、かけ回す。
わさびは金印の生おろし、チューブのもの。

ビールを開けて、食べる。

むろん、うまい。
これがまずかろうはずがない。

やはり、赤酢は合う。

仕事をしていない生の魚、特に白身などは、赤酢よりも
透明な酢の方が合う、というのが、今までの私の知見であるが、
まぐろはこの限りではない。つまり、生でも赤酢に合う。
いや赤酢の方がうまい、といってよい。
なぜであろうか。

ともかくも、うまい中トロ鉄火丼が、赤酢の酢飯でもっとうまくなる。