浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



五反田・路麺・二月堂

2月22日(月)夜、24日(水)昼
さて。

またまた五反田。

[二月堂]という蕎麦や。
表題を路麺と一先ずしたのだが、中間的な店であろう。

東京の蕎麦やの分類として、藪や砂場などの直系に近いところ「1.老舗系」。

老舗の暖簾分けも含めて、どこにでもある「2.町の蕎麦や」。

「3.趣味そば」。これは定義をしろといわれればちょっと難しいが
老舗ではなく店主が修行をして多くは、脱サラなど、
石臼で○○産の蕎麦粉を、今日は挽いてます、的な。
価格も老舗程度に高く、多くは態度がでかい。そば以外は素人料理。
(稀にいい店もあって、そこまでわるぐちをいわなくともよいが、、。
信者のように好きな人もいて、有名店、カリスマ店もたくさんあるが、
基本、私は嫌いなのだからしかたあるまい。)

それから「4.路麺」。
路麺はチェーンではない個人経営の立ち喰いそば。

ここ[二月堂]というのは個人経営で、路麺と趣味そばの間、
なのであろうが、趣味そばというにはきれいでもなく気取ってもおらず、
かなり路麺寄り。これに、もう一つ、ガッツリ系、という軸が加わる。
夜は、蕎麦も出すが居酒屋になる。

東京でも他の街にはあまり類例がないのではなかろうか。
五反田という街に適応したそばや、と、いえるかもしれぬ。

場所は例のホテル街通り。

駅からくると左側、間口一間ほどの小さな店。
カウンターとテーブルが二つ半。
朝はやっていないが、昼から夜まで。
(通しではなく16時〜17時は休んでいるよう。)

毎日この店の前を通って通勤をしているので、
もうなん度も入っている。
夜も昼も、中途半端な時刻にも。

最初に入ったのは、昼飯を食べそびれた午後の中途半端な時刻。
温かい鶏南蛮。
ここは一応手打ちを謳っているが、まあ、可もなく不可もなくと感じた。
しかし、驚いたのは脇で食べている人のもり系の、一盛の大きさ。
例えば、浅草の並木藪のもりの、軽く10倍はあるのではなかろうか。
普通、町の蕎麦やでももりそば一枚では昼飯にはならないが、
ここは、十分に男の飯の一食分になる。

店の看板には「もり、かけ 380円」と出ている。
安い。
このもり、かけの値段であれば、路麺となんら遜色はない。
いや、“手打ち”生そば茹で立て、であることを考慮に入れれば、
断然上になろう。

五反田に私のオフィスが移ったのが11月なのでやはり冷たいもり系ではなく
温かいものばかりを食べていたのだが、ここへきて、ちょっともり系も
頼んでみたのである。

22日(月)夜。



鴨せいろ、890円也。
このそばの盛が、大盛りではなく、ノーマルなもりの量である。

鴨なので、この店にしては、かなり高価格、
いや、最も高いそばである。

ここのそばは、細め。

温かいかけよりも、もりの方が合っているかもしれぬ。
のど越しがよい。

鴨肉は、最初はこれは鶏か?と思ってしまった。

それこそ老舗系などでは、別にレアに焼いて入れていたり、
つくねを入れたり、出汁用に細かく切った脂身を煮出したり、
している。
ここのものはこの出汁用の脂身は入っているが、
鴨肉もそれらと一緒に煮ているのではなかろうか。
まあ、それでも鴨は鴨。

つゆは東京風に濃いが、下町ほど塩味は強くなく、甘め。

この量であるが、なんなく食べられてしまう。
(これのさらに大盛りを食べている人もいるのは驚き。)

24日(水)昼



これはピリ辛タンタンせいろ(690円也)。

すり胡麻とラー油が入ったいわゆる担々麺のつゆの、
つけそば。
日本そばでも、カレー南蛮や、カレーせいろがあるのだから、
こんなものがあっても確かに不思議はない。
(ここには、かけのカツカレー南蛮、なんというのもある。)

味は、どうしてどうして、なかなかいける。

ラーメンスープではなく、ここの甘めのそばつゆに
ラー油やらすり胡麻、豚挽肉を入れているのであろうが、
バランスもよく、そばにも馴染んで、うまい。

昼時は、このもりそばに小さめのかつ丼などの
ご飯もののセットも各種ある。
ただでさえそばが多い上に、揚げ物の玉子とじで
かなりのガッツリ系。

客層は近所の、女性も含めた勤め人、30代くらいから年配まで。
また、工事現場の交通整理をしていそうな、ちょっとくたびれた感じの
年配の男性、、、。(なにかこのへんも五反田っぽいのか。)
昼時は常時満席。

さて。このそばや、どうとらえたらよいのであろうか。

考えてみれば、こんなそばや今までなぜなかったのか、
というくらいではある。(他にもあろうか?)

本来、東京のそばやというのは、江戸期江戸人達に広まった
スタイルではあるが、一食のまとまった食事ではなく、
これで一杯やる、あるいは軽いおやつであったわけである。
それで、盛も少ない。もっと食べたい人は、なん枚も
お替りする、というスタイルであった。
藪蕎麦などの老舗は今でも一口で終わるくらいの量である。

今ある立ち喰そばは戦後に現れたと考えられるが、
価格を押さえねばならないということもあってであろう、
やはり、そばの量はそう変わらず、野菜のかき揚げなどをのせて
補ってきたといえよう。

一方で、そばブームというのであろうか、趣味そばなど
様々なうんちく込みでマニアのような人も多く現れ、おしなべて
そばがきらいな人というのも、今、いなかろう。

であれば、通常の昼飯にもりそばだけでも腹一杯になる量を、
ノーマルなもりにしたものを出せば、まずくなければお客はくる。

これを380円で出すのは、むろん簡単ではなかろう。
五反田の賃料の安さ?薄利多売、回転を上げて
成立させているということか。

ちょっとおもしろいそばやである。




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