浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



続・五反田・讃岐うどん・おにやんまと五反田考 その1

dancyotei2015-12-02


11月30日(月)夜 12月1日(火)朝、夜



先日書いた、JR五反田駅ガード脇の路麺、讃岐うどん
[おにやんま]。
(蕎麦ではないが、ここも立ち喰いの麺を食わせる、独立系の店として
私は“路麺”と呼ぶことにする。)


あれからどうも、オフィスの行き帰り、通りかかると
寄りたい誘惑に抗し切れない。


まずは、月曜日夜、19時頃。
店頭に3人ほどの列。
ただ、このくらいであれば回転がよいので数分で入れる。


列がある場合のこの店のルールは先に券売機で食券を買って、
店前から向かって右側に並ぶ。
昨日は鶏天+ちくわ天のぶっかけであったが、今日はこれの
温かいもの。


お客が出てスペースがあいたら二つある右左出入口の近い方を
お兄さんに指定されて店に入る。
これがこの店の正しいルールのようである。
今回はたまたまであるが昨日と同じ場所。


温かい鶏天、ちくわ天のせ。





天ぷらは昨日同様に揚げたてで熱い。
つゆは、ぶっかけと同じものを熱くしたもの、かもしれぬ。
味は同じで透明、うまいつゆ。


やっぱり満足度は高い。


さて、ここの魅力はなにか。


まずは、早い、安い、うまい、か。


立ち喰いなので早い。
これは当然のこと。ただものすごい手際のよさである。
調理場はいつも戦場のよう。
今日のように並んでいても2〜3人であれば待ち時間はわずか。


安い?。
これは、鶏天、ちくわ天をのせたもので490円。
単価としては、一般の立ち喰い蕎麦よりは
決して安くはない。


しかし、やはり一番最後の、うまい、の部分が
突出している。490円以上の価値がある。
これが最大の魅力。


手打ちのしっかりした腰のある讃岐うどんの生麺茹で立て。
天ぷらは回転がよいので常にジュウジュウいっている揚げたて。
そして、この天ぷらの衣のうまさ。カリカリ。そしてなんらか
味がついているようなのである。これがうまい。
カウンターには、この衣の天かすが置かれて取り放題である。


そして、つゆ。
私自身、東京人で透明な讃岐うどんのつゆを深く理解している
わけではなく断定的なことはいえないが、
塩味(えんみ)を強めに感じ、腰の強い麺に負けないものである。


食べ終わり、ご馳走様〜、といって、大きな充実感とともに出る。


さて。


今日はちょっと話しがかわるのだが、五反田という街のこと。


五反田の住人になって一か月。まだまだ第一印象の段階であるが
少し書いてみたい。


五反田という街とこの[おにやんま]という讃岐うどんの路麺とも
無関係はないと思われるので、お付き合いをいただればと思う。


この[おにやんま]もおもしろいのだが、
五反田という街もおもしろい。


山手線の駅がある街としてもちょっと他に例がないような
街ではなかろうか。


南北が長い環状に走る山手線の南の端っこ。
大崎と目黒の間の駅が五反田である。


ところで、皆さんは、五反田の街といえば、なにを思い浮かべるで
あろうか。


男性諸兄であれば“風俗”という言葉を挙げる方も
少なくないのではなかろう。
あるいは、駅のすぐそばにある、ホテル街。


最初からなんだが、五反田といえばまずこれ。
街の雰囲気を形成する最も大きな存在ではなかろうか。


ただこれだけであれば、山手線の駅のある他の街でも珍しくはない。
例えば、鶯谷などは、五反田以上のホテル街であるし、
巣鴨なども「北の巣鴨、南の五反田」と並び称される街である。


当然、これだけ五反田に集中しているのには
歴史的な背景があるのだがそれはもう少し後のことにしよう。


そして、ここ一か月すごしてみてもわかるのだが、
食い物やの密集具合。
居酒屋、焼鳥や、カレーや、フレンチ、うどん、そば、
鮨、、、その他なんでも。
また、皆、おおむね安い、あるいは量がある。


さらに、先日書いた[ミート矢澤]のような肉、
ハンバーグの店。これも、他の街に比べて
多いのではなかろうか。これはまだ、印象の域を出ないが、、。


もう一つ。


五反田といえば、よくいわれることの一つかもしれぬが、
先に書いた駅周辺に代表されるちょっといかがわしい街と
正反対のオハイソなところも同時に持っていること。


これはJRの北側。ここは高台の山手になっており
白金や高輪から続く、古くからのお屋敷町、高級住宅地。
岡山藩池田家の下屋敷であったので、池田山の別名もある。
また、桜田通りの谷筋を挟んで東側の山手は江戸の頃は
仙台伊達藩の下屋敷であったが、明治になってから
島津侯爵邸になり、さらにその跡が清泉女子大になっている。
清泉女子大といえば、筋金入りのお嬢様女子大。


江戸の地図も出しておこう。





とまあ、山手は先に述べた、駅周辺から南側の下世話な雰囲気
とは対照的。だが、この筋金入りのお屋敷町という側面もまた
五反田という街の一面ということになる。


つまり、上品と下品が同居した街?。
駅北側の、オハイソがあって下品さを中和している街。
そんな風にもいえるのか。


街を歩いていても、例えば、品はお世辞にもよくない
下町の代表(?)、錦糸町、北千住、あるいは蒲田、
などとくらべると、そこまではガラがわるくはない。
まあ、安心して歩ける街。(?)


だが、これがどっちつかずにも感じられ、
私には、座りのわるい、ちょっと不思議な感じを
持たせられてもいる。







明日もつづく





おにやんま
品川区西五反田1-6-3