浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



牛丼(の具)

dancyotei2015-07-27


7月25日(土)昼



土曜日。



突然であるが、皆さんは牛丼はお好きであろうか。



ご存知の[吉野家]だの[すき家]だの、チェーンのもの、
で、ある。


私は、きらいではない。
いや、むしろ好きといってもよいかもしれぬ。


30代の頃であろうか一週間に1回程度の頻度で
食べていたこともあったと思うし、今でも、
ごくたまににではあるが、時間がない昼飯などに
食べることはある。


うまいもの、で、ある。


そしてまた、時として無性に“あの味”が食べたくなることがある。


昨夜、無性に食べたくなり、帰り道にハナマサに寄って
牛のバラスライスを買ってきていた。


牛丼を出すチェーンは先の二つ以外にもまだいくつか
あるが、味は違っていようか。


微妙に違うような気もする。


また、時代によっても違ってきたのではあるまいか。
自分自身の舌が変わった可能性もむろんあるが、
一番の老舗の[吉野家]で考えても、私が20代の頃と
今とでは違うような気はする。


しかし、あの牛丼のうまさはなんであろうか。


具は牛肉と玉ねぎのみ。


いさぎよい、ともいえよう。


すき焼きの具であれば白滝だの、豆腐などが入ってもよさそうだが
それもなく、また野菜も玉ねぎでなくて、長ねぎでもよさそうである。


むろん、いろいろな材料を入れればそれだけコスト高には
なろうし、好き嫌いもあるかもしれない。


今は女性も食べるし、高齢者もよく見かけるが、
当初の主要なターゲットは10代〜30代くらいまでの男性、
ではなかったろうか。
このあたりであれば、やっぱり、肉、であろう。
余計な具材は不要。なにはなくとも肉だけが入っているのが、
私なども初めて食べた時には魅力に感じた覚えがある。


野菜も、長ねぎは玉ねぎよりも煮崩れるのが早いと思われ、
作り置きには向かなそうである。
また、他の野菜を入れるのも同じくコスト高になろう。


もう一つ、牛肉の種類。


吉野家]は確かアメリカ産一本で、狂牛病の頃に
アメリカからの輸入が止まった時には販売をやめたり、
豚丼を出していたこともあったか。


ハナマサではいつも脂のある豚の三枚肉のような
バラのスライス、主にアメリカ産、を売っている。
おそらく、この肉が牛丼チェーンで使っている肉に
近いのであろう。
これを買ってきたわけである。


さて、最大の問題はつゆの味付け。


しょうゆベースで濃いめの味付けだが、
見た目にはしょうゆの色は濃くついてはいない。


濃口しょうゆ、酒、砂糖。
これに各チェーンさまざまな秘伝、工夫があるのであろう。


だがまあ、やってみるしかなかろう。


牛バラ肉は薄いスライスなのですぐに火が通りそう。
玉ねぎから時間差をつけた方がよさそうである。


玉ねぎを厚めに切って、鍋に入れる。


しょうゆを先に入れると色が付きすぎるので
後にし、水、日本酒、赤ワイン。


赤ワインはちょっと思いついたのである。
大昔に[吉野家]のものには、赤ワインが入っている、
と、いうのを聞いたことがあったからである。


これでしんなりするまで煮る。


玉ねぎの煮え具合ももう一つのポイントの
ように思う。


味が染みずぎず、クタクタにはならないくらい。


それで、肉を煮る時間も計算して、
しんなりしてきたら、砂糖、濃口しょうゆ。
たまりしょうゆも少し入れてみる。


味見。


色が付きすぎるのも牛丼のイメージではないので
多少控えめにし、砂糖はしっかり入れてみる。





牛肉も投入。





肉に火が通り、味が馴染めばよいだろう。
火の通しすぎはやはり、いけなかろう。


皿に盛り付ける。


今日は、酒の肴なので丼ではなく、具だけ。


吉野家]でいえば牛皿といっていたか。





本来であれば紅しょうがなのであろうが、私は
紅しょうがはちょいと苦手。
いつもの京都の柴漬けも出す。


ビールを抜いて食べる。


肉も玉ねぎも煮え具合は狙ったところにきている。


つゆの味はどうであろうか。


ちょっと色が濃いようには思うのだが、
やはり甘みを多少強めにしたのはよかった。


80点くらいであろうか。


まあ、上々。


あとで調べると[吉野家]は隠し味程度なのであろう、
しょうがを入れているという。


今度試してみようか。