6月1日(日)夜
6月になった。
ここ数日、真夏のような日が続いている。
どうしたことであろうか。
まあ、たまさかに、初夏でもこのくらいの暑い日が続くことは
あろうか。
今年は鰹が不漁とか。
初夏らしい食物というと、今は年中あるが、茗荷。
それから、そろそろ枝豆やそら豆、そら豆も今は年中あるか、
が出てきて、、、そんなところであろうか。
お。
そうだ、忘れていた。
瓜(うり)である。
瓜もみを作ろうか。
池波先生の好みでもあったのか、鬼平やらの
作品にも瓜はよく出てきていた。
この池波作品の中に登場する食い物を作って
ここに書き始めたのは、10年ほど前である。
瓜というものは、私などは子供の頃からあまり縁がない
ものであった。このため、この池波レシピを再現し始めて
初めて意識して食べたるようになったし、そもそも
生のものは見たことすらなかったかもしれない。
その頃、10年前には、スーパーでももう少し置いているもの
であったような気がするのだが、最近はほとんど見かけなくなっている。
瓜は以前は胡瓜(きゅうり)よりも一般には馴染みは
深かったといってよいのだろう。
食べ方とすれば、奈良漬などが今でも一般的なのであろう。
奈良漬とは粕漬けのことだが、一般に奈良漬といって
出てくるものは、ほとんど瓜の粕漬けである。昨日配信の
「とんかつ」にも奈良漬を出している。これも瓜である。
瓜は、池波作品にもよく登場する瓜もみ、雷干し、からはじまって、
粕漬け、鉄砲漬けなどが思い浮かぶが、やはり、漬物に近いものにすることが
多かったといってよいのであろう。
20年くらい前であろうか、夏に軽井沢に遊びに行った際、
地元のスーパーをのぞいたら、瓜が山と積まれて売られており、
脇に、酒粕も置かれていた。瓜の粕漬けというのは
信州などでも、別段農家ではない普通の家庭でも
漬けるものであったのであろう。
生産量、消費量ともに、今はどうなのであろうか。
全国的にも減っているのであろうか。
試みに、農水省の統計を調べてみると、
「しろうり」は、平成14年は全国で6,182tほどだったものが、
平成22年には4,763tの出荷量に減っている。
内訳は、圧倒的に加工用が多く、生食用は960t→852tと、やはり
減っている。(今はもっと減っているのであろう。)
肉厚な瓜は胡瓜よりも漬物にむき、逆に、完全な生では
食べられない。最低でも塩もみ。
そういうことで日本人が野菜を生で食べなかった頃
(我々の子供の頃にもそうであったが)
には胡瓜よりも瓜であったと思われる。
野菜を生で食べるようになり、漬物を家庭で漬けなくなり、
瓜の居場所がなくなった、と、いってよいのであろう。
京野菜だったり加賀野菜だったり地場の伝統野菜は最近また人気が
出てきているが、瓜などは全国にあったのであろうが、
(ちなみに、先ほどの統計では、都道府県別ではなぜか1位が徳島県、
2位が千葉県でこの2県だけが飛び抜けている。
東京の店頭で微かに見かけるのはほとんど千葉のものである。)
このままでは、滅んでしまうのは時間の問題なのかもしれない。
夕方、買い出しに出る。
やはり、スーパーを二軒まわり、三軒目、鳥越のココスナカムラで
『白瓜』を調達。瓜もみには大葉を混ぜるとうまいので大葉も。
もう一品、ぬたを作ろうと思い、今日はわけぎと、三枚におろした鯵
があったので、これにする。
帰宅し、作る。
白瓜は洗って、まず、縦に半分に割る。
次に、スプーンで真ん中のわたを取り、水で洗い流す。
薄く、1〜2mmの厚さに切る。
塩をまぶし、両手でよくもみ込む。
これでしばらく置く。
水が出てきてしんなりしてきたら、よいだろう。
水で洗う。
塩加減がちょうどよくなるまで、水を替えて洗う。
OK。
ぬたは、薬缶に熱湯を沸かし、わけぎを4〜5cmに切って、
熱湯をかけて、氷水で急冷、ざるにあげる。
酢味噌は今日は八丁味噌2、に西京味噌1、信州味噌1。
酢を少々。
鯵はたたきのように細く切り、酢洗い。
ざるにあげたわけぎの水分をペーパータオルでつぶさぬように
よく拭き取り、鯵とともに、盛り付け。
瓜もみは、細かく切った大葉を混ぜ込み、盛り付け。
瓜もみ。
池波先生の鬼平では確か、筆頭与力佐嶋の大好物であった。
瓜もみというのは、本当に塩でもんだだけでは、
素朴というか、シンプルで、もう一味、今日は大葉を入れたが
削り節でもよかろう、なにか加えるのがよいかもしれない。
ただ、今日も大葉を入れて、さらに梅肉でも、とも思ったのだが、
そうなると、佐嶋与力好物の、と冠を付ける瓜もみには、
やりすぎであろうと思い、やめたのであった。
鯵のぬた。
ぬたも池波作品によく出てくるが、これもやはり庶民の
酒の肴、で、あろう。
私も好物、で、ある。
鬼平では大滝の五郎蔵へ、おまさが田螺(たにし)の
ぬたを出す、なんというのが印象的であった。
田螺などあまり売っているものでもないが、
ごくまれに、御徒町の吉池で見かけることがある。
ちょっと泥くさそうだが、どういうものであろうか。