浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



日本橋高島屋特別食堂・うなぎ・五代目 野田岩


1月13日(日)

さて。

引き続いているのだが、国立劇場
歌舞伎見物を終えて、劇場を出てきた。

なにを食べようか。

芝居を観ながらも、ずっと考えていた。

なんとなく、国立の帰りは神田須田町のまつやが
多いような気がするが、ちょっと気分を変えて、、、。

うなぎ。

着物を着ているので、和食、なのだが、
鮨やだと、ちゃんとしたところならば、予約が必要であるし、
そばやでもない、予約なしでもいけるとすると、うなぎ。

私のうなぎやの選択肢は、拙亭ご近所の小島町やしま
だが、日曜休み。

それから南千住、尾花

ここは筆頭なのだが、半蔵門からはいかにも遠い。

それから、明神下神田川

ここは予約も必要、とっておきのところなので、
ふらっとはいけない。
(日曜休みだったか。)

もう1軒。
野田岩
池波レシピでもある、日本橋高島屋特別食堂に入っている。

ご近所は別格として、これが、三本指、なのだが、
こうして、ふらっと行くには日本橋高島屋野田岩は、ちょうどよい。

劇場から出ている新橋行のバスに乗って、新橋駅へ出る。

銀座線に乗り換えて、日本橋まで。

高島屋へは地下から。
特別食堂へ行く前に、高島屋で足袋を買うことにした。

呉服売り場まで上がり、購入。

着物関連のものを買うのに、洋服でくるよりは、
着物できた方が、なんとなく、気分である。

また、店員さんの対応も違う。

私の場合、基本、チャラく見られる。若い頃からそう。
(中身も実際にそう大差はないかもしれぬが。)
普段着など着てくると呉服売り場だったり、老舗では、
最近まで、この若造が偉そうに、的な、態度で、
教えてやろう、風な、口のきき方で対応されることが
少なくなかった。

が、着物を着ていると、明らかに態度が違う。
下へも置かない、というのは大袈裟だが、とても丁寧。
同じところで、同じ買い物をするにしても、
気分が随分と違う。

さて。

特別食堂。

新館の4階。

ここは、もともと接客はちゃんとしてるので、
普段着でも、スーツでも、着物でも大きくは変わらない。
(これは偉いもんである。)

夕飯にはまだ間がある時刻だが、そこそこ席は埋まっている。

瓶ビール、キリンの中瓶をもらう。

今日は、珍しく、芝居を観ながらは呑まなかった。

着物を着て歩き回ったので、ビールがうまい。

メニューを見る。

この特別食堂は野田岩以外には、帝国ホテルの洋食と、
和食の割烹が入っている。

野田岩のページをめくると、
お、新メニュー?。

まぶし、が、あるぞ。

名古屋だと、ひつまぶし、というが、そのまま食べて、その後、
茶漬けにして食べるあれ。

名古屋に転勤をしていたころは
よく食べたもの、で、ある。

前からあったっけ?。
(調べたら、本店にも今あるメニューのよう。)

うなぎの茶漬けは、うな茶、なんといって昔からあるが、
以前に、東京の蒲焼を飯に載せて、お茶をかけて、
やってみたことはあるのだが、これは今一つ。

たれがお茶の方へ溶け出して、蒲焼本体の味が薄まってしまうのである。
(皆さんも、一度やってみるとよろしい。)

名古屋の蒲焼は、お茶の方にたれの味が出て、お茶もたれ味になるが
ちゃんと、蒲焼の甘辛味も残る、というもの。

これは、名古屋のものは、たれにたまり醤油などを使っており、
東京のものよりも濃いのかもしれぬと、思っていた。

よし、頼んでみようではないか。

ビールを呑みながら、待つことしばし。

きた。



名古屋式(?)にわさびやねぎ、海苔など、薬味もついている。
茶漬け、にするのは、出汁(だし)。
(名古屋では出汁の用意もあるが、文字通り、お茶をかけてもよい。)

まずは、そのまま蒲焼としてつまむ。

ここの特徴、で、あろう。
上品なたれ味で、ふっくら柔らか。
まさに、至福。

次に、飯茶碗によそって、飯とともに。

これがむろん、野田岩のスタンダード。文句なく、うまい。

そして、最後、出汁をかけて。

ふむふむ、さすがに野田岩

出汁にたれは溶け出さないで、ちゃんと蒲焼の味を
保ったまま。
出汁の方は出汁の方で、味は付いているので、物足りないことはない。

なにか特別なことをしているのかもしれぬが、
そのままで食べたところは普通の蒲焼と違いは感じなかった。
流石。

うまかった。

ご馳走様でした。

芝居を観て、野田岩のうなぎ。

幸せ、で、ある。


日本橋特別食堂