浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



江戸人にとっての明治とは?私の課題として、、

dancyotei2009-12-06

NHK大河ドラマ天地人、が、終わって、
来年1月「龍馬伝」が始まるまで、司馬遼太郎原作の「坂の上の雲」の
第一部が放送されている。ご覧になった方もおられるであろう。


原作は、ご存知の司馬遼太郎
舞台は明治。主人公は、伊予松山出身の秋山好古秋山真之正岡子規
阿部寛演じる、好古は陸軍軍人、真之は本木雅弘で、海軍軍人、
正岡子規は、ご存知の俳人香川照之。子規と真之は、幼馴染み。


明治になり、伊予松山藩から、松山市廃藩置県では松山県)
にかわり、三人は、青雲の志を描いて、上京し、それぞれの道で、
立身に励む。あるいは、その後、秋山兄弟が大きく関わる、
日露戦争などが描かれている、、とても、とても簡単にいうと、
そんな感じなのであろうか。


白状をすると「坂の上の雲」は私は読んでいない。
(いや、この作品以外でも、司馬先生の作品は、数えるほどしか
読んでいない、と、いうのもいっておかなければならない。)


読んでいないので、この作品やドラマについて、
なにかいうのは、まったくもって、正しい姿ではないのは
承知している。しかしその上で、なんとなく、考えたことを
書いてみたいのである。


このドラマの番組宣伝などを視ていると
江戸時代が終わり、明治という時代になり
藩という枠組みの中に暮らしてきた武士が、
藩がなくなり、日本という国の国民として
世界に対峙することができるようになり、
そして、大きく羽ばたくことができるようになった、、。
前向きで、自由な時代。
そんなことが語られている。


(こういうようなことが、司馬先生の主意なのか、
NHKの番組制作者の考えなのか、作品を読んでいないので、
これも、よくわからないが。)


明治という時代をこのような時代として
捉えるのはある面では、間違っていないのであろう。


四国、伊予松山の武士の家で生まれた三人が、
明治、文明開化の東京へ出て、羽ばたく。


彼らからみればそれは、新しい自由な時代、
とみるの正しい。


だけれども、と、私などからすると、それだけではないだろう、
思ってしまうのである。


旧幕時代から代々江戸に住んでいた、幕臣、陪臣も含めた、
江戸生まれの武士、あるいは、職人商人を含めた江戸生まれの
町人の、江戸人、そして、その血を引き継ぐ、東京人は、
どうだったのであろうか。


こういう視点では、一般には、やっぱり、あまり語られていない、
のではなかろうか。


地方、特に西日本から東京へ出てきて、羽ばたいていた
人々とは違うものがあったのではなかろうか。


で、結局、タイトルに記した「江戸人にとっての明治とは?」
というのが、考えたこと、なのである。


こういう視点の研究の類はある、のかもしれぬ。


池波先生にはこの視点の作品がある。



「その男」(文春文庫)



「幕末遊撃隊」(集英社文庫)



また、このあたりについては、一度書いてもいる。
(いや、なん度も書いているだろう。)


「その男」、は、フィクション部分が多いようだが、
直参の剣士、杉虎之助という人物が主人公で、明治を
どう生きたのかを、描いている。


「幕末遊撃隊」は幕臣であり剣家でもある伊庭八郎の
幕末を描いている。


その他一般には、、池波先生も書かれているが、
新選組関連、あるいは、勝海舟、あたりが、
歴史時代小説では、書かれている題材であろうか。
(しかし、勝海舟も、明治に入ってからどう生きたのかは
あまり描かれていない。)


歴史小説でも時代小説でもこういう視点の
ものも、もっとあってもいいように思うのだが、
やはり、世に出ている人が少ないから、日も当たらない、
そういうこと、なのであろう。


ともあれ、これ、私のテーマである。


「江戸人にとっての明治とは?」。


もう少し、正確に書くと、上から下まで、
江戸生まれの江戸人にとっての明治、であろう。


現在、私は、こうである、という結論を持っていない。
考えてみれば、これ、そうとうに、ヘン、な、話である。


江戸幕府が倒されたとはいえ、江戸生まれの人々
その子孫たち、江戸東京を故郷とする人々は、引き続き、
数多くおり、その人々が、明治をどのように生きていたのか。


明治の東京という場所や、人々も語られ、描かれているが、
旧幕時代からの、連続性を踏まえて捉えられることは
少ない。(切れてしまったとは、思えないではないか。)


江戸を含めた、東京を故郷と思う私がこれに
結論を持っていなくて、どうするのか、で、あろう。
(また、それは取りも直さず、現代の東京とはなんであるか、を
明らかにするためにも、必要なことであるはずである。)


勝海舟は多少調べてみた。


その1

その2


(その後、氷川清話も目は通した。)


もう一人、明治になり、侍従も勤めた幕臣山岡鉄舟、も
明らかにして置かなければならない人物だと、思っている。


文芸関係では、断腸亭永井荷風先生。
父は、尾張藩士で陪臣といってよいのであろうが、
東京生まれ。


夏目漱石も江戸牛込の町名主の家に生まれている。
(この二人は、まったく違うかもしれぬが、先の
“江戸からの視点”、江戸東京生まれの人物として、
どんなふうに明治を生きたのかは、ある程度、
説明できるかもしれない。また、他にもいるような気もするが、
これも課題である。)


あるいは、伝統芸能関係。
落語の三遊亭圓朝
芝居関係では黙阿弥、、、。


または、商人、商家。
明治の頃の、江戸から続く大商家、例えば三井は、
どんなふうであったのか。


あるいは、元幕臣で、事業を始めた人々も
いなくはない。(中で、現代まで続いている企業もある。)



ともあれ、調べることは、山ほどありそうである。