6月11日(月)夜
さて、今日はなにを食べよう。
会社帰り、スーパーに寄る。
昨日作った、鶏皮があるので、これと、
谷中が食べたい。
安いごぼうがあった。
簡単に、金平(きんぴら)にでもしようか。
帰宅。
ごぼうは、まず、金だわしできれいに洗う。
ここから、千切りにするのだが、一度、斜めに薄く切り、
これをさらに細く切り、水に放しておく。
ごぼう一本分全部を金平にするのでは多い。
あとは煮ようか。
昨日、鶏皮のポン酢を作ったが半分をしょうゆで甘辛く煮ておいた。
ここにごぼうを入れて、煮てしまおう。
ごぼうというのは、とにかく油に合う野菜で、ある。
鶏皮を煮たものは大量の油が出ている。
よい相性であろう。
煮る方は、5〜6cmに切っておく。
金平。
フライパンに胡麻油を敷き、炒める。
しんなりしてきたら、酒、しょうゆ、砂糖。
好みであろうが、筆者は、あまり甘くはしない。
仕上げに七味をかけ、完成。
煮付け。
鶏皮を甘辛く煮てあったものから、少しだけ、
このままも食べようと、別に取っておく。
残った鍋に、大きく切ったごぼうを入れ、
水、酒、を足し、アルミ箔の落し蓋をし、煮る。
やはり、新ごぼう、であるからか、比較的早く煮えた。
鶏皮は、生のままのものも少し残っていたので
鶏皮ポン酢も、食べよう。
茹で、洗い、細く切り、ポン酢しょうゆをかける。
谷中しょうがはきれいに洗って、味噌を添える。
どれも簡単。
盛り付ける。
谷中しょうが、金平ごぼう、ごぼうと鶏皮の煮付け、
鶏皮の甘辛煮、鶏皮ポン酢。
都合、五品できた。
金平ごぼう。
これはまあ、金平ごぼう。
誰が作っても、金平ごぼうであろう。
どうでもよいが、キンピラを、漢字で金平と書いているが
これは、いわれがある。
まず、坂田金時、という名前をご存知だろうか。
「まさかりかついで金太郎」
「ま〜さかりか〜ついで、き〜んたろう〜・・・」
誰でも知ってる、金太郎さんである。
誰でも知っている、と、書いてしまったが、
今の若い人は、ひょっとすると、知らない人もいるかもしれない。
筆者も、おさらいのために、書き出してみよう。
基本的には、伝説、で、ある。
箱根の隣。東名高速などがそばを通っているが、
足柄山、という山があり、ここで、育った金太郎。
熊と相撲をとるほど、強かった。
ある時、ここを通りかかった、源頼光に出会い、家来になり
坂田金時、と、いう名前になり、頼光の四天王と呼ばれた。
源頼光は、ミナモトノヨリミツ、であるが、ライコウ、と
一般には呼ばれることが多かった。
時代としては、平安時代、藤原氏全盛の頃。
頼光は藤原道長に仕えた武士。これは史実。
そして、その坂田金時の子供が、金平(公平とも)。
キンピラごぼうの祖、で、ある。
金平は、豪傑であったが、捕らえられ、
油茹での刑にされた、ということになっている。
この話は、もとは浄瑠璃であったらしいが
初代市川団十郎の頃、歌舞伎化され、
いわゆる荒事(あらごと)の代表で、人気を得て
「金平もの」ともいわれているという。
ここからは諸説あるようだが、その金平の役者の髪型が
刻んだごぼうの形に似ているから、と、いうのが一つ。
もう一つが、油茹で処刑されたから、
油で炒めた料理に金平、と、名付けられた、という。
まあ、どちらにしても、江戸の頃付いた名前で、
歌舞伎に由来することは間違いなさそうで、ある。
キンピラゴボウは、江戸料理、と、いってよいのかもしれない。
さて、もう一つ。
鶏皮と煮たもの。
今日は、ちょっと、びっくりしてしまった。
同じごぼうであるが、金平では感じられなかったのだが、
この煮たものは、柔らかく、味としては、薄めになったのだが、
ごぼうそのものが、驚くほど、うまかった。
薄味でも、あまいのである。
新ごぼう、だから、なのであろうか、いわゆるごぼうの
エグミ、のようなものはまったくなく、ちょっと、茹でたとうもろこし
の、ようなこうばしいに香りとあまみがするのである。
驚きである。こんなごぼうは、はじめて食べた。
安くなっていたもので、どこのものだかわからないのが
残念なのである。なかなか、なものではなかろうか。
話は、一応ここまで、なのであるが、後日談。
翌日、このごぼうが、あまりにうまかったので
同じスーパーにもう一度いって探してみた。
ごぼうも、産地違いなどで、数種類置いており、
どれだかわからない。
試みに、宮崎産新ごぼう、と書いてあるものを買って、
たたきごぼうを作ってみた。
たたきごぼうというのは、茹でたごぼうを叩き、
煎り胡麻を軽く摺(す)り、しょうゆ、砂糖、気持ち酢を利かせて
和える。
結果は、昨日のものではなく、まあ、普通のごぼう、であった。
あれだけうまいごぼう、いったいどこのものであったのだろうか、、。
参考文献:八百善料理通・江戸のおそうざい・暮らしの設計、中央公論社、1979年