4545号
引き続き、末広町のひつまぶし[美濃金]。
待っている間に、うなぎ蒲焼の歴史を振り返っていたが、
頼んだ、肝入りのひつまぶしが出来上がったので、
考察は、後に回して、食べよう。
お櫃を開ける。
ひつまぶし、というのは基本、こんな感じ。
これだけ並ぶと、かなり、ゴージャスな感じであろう。
名古屋文化圏の婚礼など特別な時の大盤振る舞い、といった
ようにも見える。見るだけで、大満足。
お櫃に入ったご飯にたれが染み、その上に
短冊に切った、蒲焼。
青紫蘇の葉の天ぷらの上に、肝。
手前に、細かく切った青ねぎ、わさび、茶漬け用のあられ。
右の小皿が昆布の佃煮と奈良漬け。
反時計回りに、肝吸い。これはノーマルな吸い物から
チェンジした別オーダー。
その上の白い土瓶が、茶漬け用の出汁。
次が、うざく。蒲焼の入ったきゅうりの酢の物。
隣が、う巻き。蒲焼入り玉子焼き。
その隣が、きざみ海苔。
そして、空の飯茶碗、しゃ文字と、匙。
お櫃のアップ。
肝は煮たものではなく、やはり焼いたもののよう。
ひつまぶしでも、やっぱり、山椒を振る。
お!、この山椒。
かなりの香り。
青山椒のよう。
フレッシュで強い。
一膳めは、そのまま飯茶碗へよそう。
蒲焼の味付けは濃い、のだが、やはり、
東京の蒲焼よりも甘い。
そして、先にも書いたが、このパリパリの食感。
これが東京の蒲焼にない、うまさ。
身上。
どちらが上でどちらが下、ということではない。
東京うな丼だと、飯とともに蒲焼は、ほぐれる。
これもまた、身上。
うまいことは、もちろんのこと。
肝も蒲焼と一緒に飯とともに食べることになる。
これも、ちょっとアクセントになっておもしろい。
二膳目は海苔、ねぎをまぶす。
三膳目は、出汁をかけて、海苔、ねぎ、わさび、あられ。
うな茶。もちろん、お茶ではないのだが。
これが、ひつまぶしの最大の愉しみでは、なかろうか。
出汁に負けない蒲焼の味付け。
東京の蒲焼でこれをやってみてほしい。
蒲焼の味が薄くなってしまうのである。
名古屋圏の蒲焼でなければ、これができない、
のである。
私は、こちらの蒲焼の味付けはたまりしょうゆでは
ないかと思っているのだが。
と、いうことで、最後もうな茶。
うまかった、うまかった。かなりの腹一杯。
さて、考察の続き。
東京、関東のうなぎ蒲焼と名古屋を含めた蒸さない、
焼くだけの西日本のものの境目は、浜松と豊橋の間。
江戸のうなぎ蒲焼のことは、だいたいわかったのだが、
問題はこの西日本の蒸さないうなぎ蒲焼の歴史、で、ある。
色々調べたのだが、やはり意外に解明されているとは
いえないようなのである。
わかったのは、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」には
多数出てくるということ。
東海道を旅しているので、いくつかの宿場で
名物になっているのが紹介されている。
三島、柏原(吉原と原の間)、新居(荒井)、、など。
「東海道中膝栗毛」は享和2年(1802年)から文化11年
(1814年)にかけて出版されている。昨日見たように江戸で
開いた蒲焼が生まれたという、天明、寛政より少し後。
この差、数年から10年ちょっとだが、どうであろうか、
気持ち後とみるか、誤差とみるか。
ただ、この頃、江戸以西、東海、尾張などでも既に
うなぎ蒲焼は食べられていたのはどうも史実のよう。
さて、うなぎの蒲焼は、江戸起源で西に広まったのか。
江戸のうなぎ蒲焼は濃口しょうゆと浅からぬ縁が
あるというのだが、西のもの、特に名古屋圏のものは、
うな茶で書いたが、おそらく濃口しょうゆよりは、
たまりしょうゆがキーになっていると思われる。
名古屋を含む西日本では江戸期には濃口しょうゆは
ほぼ作られていなかろう。
また、西と東の違いは、西は腹開き、東は背開き
というのは知られているが、実はさばく包丁の形も
違っていると聞く。もちろん、蒸さない。
これだけ違うと、どうなのであろうか。
見た目は似ているが、もはや起源が同じとは
到底思えないのでは、なかろうか。
例えば、江戸で生まれたが、どこかはわからぬが、
名古屋以西の料理人が、開いて甘辛に焼いた蒲焼を
再現しようと独自に工夫をして、生まれた?。
いや、そもそも、江戸が始めかどうかすら、確たる
エビデンスはないではないか。
逆の可能性すらある。
名古屋以西で、生まれ、たまりじょうゆで焼いていた
ものを再現するために、江戸では濃口しょうゆを
使ったのかもしれぬ。
残念ながら、わからない、のである。
隠れた研究があるのかもしれぬが。
ともあれ、宿題。
勘定は一人で、7960円也。
以上、ご馳走様でした。
千代田区外神田6丁目14-3 VORT末広町II1階
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