浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



うなぎ・小島町・やしま

4371号

7月6日(木)夜

さて、そろそろ土用の丑の日

正確にいうと、夏土用の丑の日

ご存知の方もあると思うが、土用というのは
春夏秋冬、四季にある。
四立というらしいが、立春立夏立秋立冬
直前18日間を土用という。

江戸の頃は、暦上の験(げん)担ぎとして、
この日はなにを食べてはいけない、なにをしてはいけない、
なにをした方がよい、などなどまあ、いろいろなことが
いわれ、想像以上に気にする人も多かったわけである。

験担ぎはともかく、土用というのは、季節の変わり目で、
体調に気を付けたい時期、と、理解できよう。
あながち、ばかにはできなかろう。

この夏土用の間の丑の日ということになる。
18日間あるので12日でまわる、十二支なので
年によっては二日あることもある。

今年の夏土用の丑の日は7月30日一日とのこと。
ちなみに、今年の立秋は8月8日。

ともあれ。
やはり、丑の日の前には食べておきたい。

で、ご近所、お馴染み、小島町[やしま]。

ここ、元浅草に引っ越してきてからのお付き合いなので、
もう20年を越えるか。

数日前に内儀(かみ)さんがTELで予約をしておいた。

17時半。

歩いて、2~3分。

小島町交番の隣。

店前には、今日は予約でおしまいの旨、表示。
時期も時期だし、人気でもあろう。

名乗り、ご挨拶をし、座敷へ上がる。

畳の上の椅子のあるお膳席。
手前、向こう側。

掛けて、瓶ビール。

注文は、白焼き一人前と、うな重二つ。

どちらも小さい方の、上。
ここは二段階。
うなぎやというのは、値段の違いは大きさの違い。
どこも決まっている。
それで、で、あろうか。
有名店でも、べら棒に高い店というのは、
ないのである。

きた。

いつも変わらず、お通しには、味噌豆がくる。
ゆでた大豆。
味噌を作る豆なので、味噌豆、なのであろう。
食べ始めたらとまらなくなる、という、短い江戸落語
になっている。
定番のお惣菜。
こんな簡単なものなので、
なにも江戸東京のだけのものではないのであろう。

辛子じょうゆに、青海苔
素朴といってよいものであろうが、うまい。

味噌豆は、もはや、というべきか、この店でしか
見ない。
是非、続けてほしいと思うのである。

白焼きがきた。

わさび、オリーブオイル、塩。

お新香も。

お皿が温かい。
先日の、日本橋高島屋の[野田岩]は下にお湯を張った
二重底の塗りの器で出されていたが、やはり、温かいまま
供するというのが、白焼きの肝なのであろう。
白焼きというのは、難しい。
生ぐささに通づるのであろう。

なかなか厚みのあるうなぎ。
私は、わさびじょうゆ。

よい脂。

これを江戸前の粋な味、と、いうのであろう。

うまいもんである。

食べ終わる頃、お重もきた。

ふたを開けると、ふたの裏は瓢箪の図案に
店の名入り。

肝吸い。

山椒を振る。

毎度書いているが、このお重がきて、ふたを開け、
山椒をふる、という、うな重を食べる前の、一連の動作は
まったくなにものにも代えがたい、愉しみで、
幸せな時間。

箸を入れる。

堅めにシャッキリと炊かれた飯。
これも、江戸前うな重には欠かせない。

あまみを抑えた、江戸前の蒲焼。
そして、ふっくら。
いつも以上に今日は、ふっくらに感じる。

これが食えるだけでも、幸せ、と、いうもの
で、あろう。

いつも通り、うまかった、うまかった。

勘定をし、ご主人にご挨拶。

ご馳走様でした。

 


03-3851-2108
台東区小島2-18-19

 

 

 

 

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