浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



上野藪蕎麦

9月に入ったが、フィリピン・ボラカイ島のダイビングを
書いていた間のいくつか。



8月18日(火)夜



夏休みが終わり、通常の生活が始まった。


まだ暑い日が続いている。


しかし、一頃(ひところ)の35度を越える猛暑ではない。


昨日今日、通勤の地下鉄も心持すいており、なんとなく世の中もまだ
夏休みがまだ続いているような感じではある。


蕎麦、である。


海外に行って帰ってきて真っ先に食べたくなるのは、
日本食、なかでも鮨。
鮨は、日曜日に出前を取って食べた。


それで、今日は、蕎麦。


気持ち涼しくなったので、鴨せいろ、などはどうだろうか。


池の端の[藪蕎麦]が夜の営業をやめたので、
帰り道に寄るとすると上野の[藪蕎麦]である。


先月、サラダ蕎麦を食べにきた。


店に入ると、軽く空席もある、お客からすれば
ちょうどよい混み具合。


あまりガラガラもさみしいではないか。


案内された二人掛けのテーブルに掛ける。


ここも土日は行列になる。
それも海外からの観光客とおぼしき人々も少なくない。
くるならば、ウイークデーの夜がよい。


座って、うん、そうだ!。
みぞれ酒。


ここには菊正宗をゆるいシャーベット状にしたものがある。
これにしてみようか。


つまみは、ノーマルに板わさ。
そして、鴨せいろも一気に頼んでしまう。


板わさとみぞれ酒がきた。





みぞれ酒は片口のような器に入れられ、塗りの一合升。
小皿にそば味噌と、塩。


いつも夏はビールばかりになってしまう。
みぞれ酒というのは、あまり見かけないが
真夏にはよいものである。


板わさで呑んでいると、鴨せいろもきた。


テーブルが一杯。


運んできたお内儀さんも、あっ、と口に出ていたようなので、
ここで気が付いたようである。


これは呑んでいるお客にそばを出すタイミングのことである。


東京の蕎麦やでは、酒の肴と蕎麦を同時に頼んでも
呑む速度を見ながらタイミングをずらして出すか、
お客にいつ出すか聞くものであったと思われる。


むろん、老舗の上野藪のこと、わかっていると思うのだが、
忘れていた、あるいは気が付かなかったのであろう。


私自身は、聞かれなかったが、同時でよかった。
呑みながらでも鴨せいろはOKであるから。


それで承知で同時に頼んでいた。


この家は、前からこんな感じだと思うが、
このあたりの東京の老舗蕎麦や
らしい気働き(きばたらき)がいま一つ、
なのである。


まあ、ここはそう思っていればよい。


ちょっと片付けて、のせた。





ここの鴨せいろのつゆは、鴨肉と脂身で
よく入っているつくねは入っていない。


だが、むろん、うまい鴨せいろである。


つくねを入れるというのは、自分で作ってみたわかったが
鴨肉を叩いて丸めて煮ればつくねになるのだが、
この煮る過程で、だしも出る。
つくねには具になるだけでなく、こういう二つの効果が
あるのではないかと思っている。


しかし、鴨せいろというのは、いつ頃からあるのだろうか。


江戸の蕎麦というのは、うなぎや鮨よりも古いと
思われる。


だがやはり、江戸後期以降ではなかろうか。


同じ鳥でも、鶏、かしわというのもあるが、
やっぱり、鴨である。
鴨がうまい。


ご馳走様でした。



おいしかったです。









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