5月21日(月)昼
富山出張、で、ある。
富山というのは、東京から行く場合、電車だと、
上越新幹線、越後湯沢からほくほく線まわり、
あるいは、東海道新幹線、米原からあるいは、京都まで出て、
サンダーバード、というのもあって、接続によって、
一長一短であろうか。
このところ、富山に限らず、福井、金沢など、
このあたりへの出張が多いので、どのルートも
使ったことはある。
だがまあ、富山だけにいくのであれば、
羽田から飛行機、というのが、一般的であろう。
むろん、仕事でいくので観光、というものは
一切していない。
名物も色々あるが、名店、老舗の類、にも
行ってはいない、至ってさびしい出張ではある。
今回の出張は、月曜富山で、夕方サンダーバードで大阪へ移動し、
翌、火曜日は、大阪という予定。
羽田、富山はANAで便数も少ない。
9:30発で、富山空港10:30。
飛行機で60分。
日本の背骨、中部山地の上空を飛んでくので、
意外に、富山というのは、近い。
さて。
富山というと、皆さんはどんなものを
思い浮かべるだろうか。
食い物では富山湾の魚介類。
マグロもあがるし、寒鰤、ほたるいか、かに。
それから最近は東京にも入ってきているが、
白海老。
あるいは、高岡のますのすし。私も好物だが、
全国ブランドで、あろう。
自然では、立山黒部アルペンルートの立山。
意外に皆さん、忘れているかも知れぬが、薬。
今は、配置薬、というが、富山の置き薬。
行商のように、バイクでおじさんがきて、
ひきだし式の箱を置いていく。そこに
風邪薬やら、鎮痛剤やら、下痢止めやら、常備薬が
入っていて、使った分だけお金を払う、という
ビジネスモデル。
子供の頃、私の家でも置いてあり、
おじさんがくれる、ケロリンの紙風船などが
たのしみであったのを覚えている。
この置き薬に関して、ちょいとおしろい
歴史があるので、書いてみたい。
日本で、歴史的に薬の産業が起こったと頃、
というと、製造は奈良県、滋賀県あたり、そして富山県。
問屋などは、大阪。
奈良県、滋賀県などは、忍者(伊賀、甲賀でお馴染みの)。
彼らが栽培をしていた薬草が、元。
富山県の方がおもしろい。
江戸期の富山藩、と、いうのは、隣の加賀百万石前田家の支藩で、
宗家に準じて家格、対面は保たねばならず、大名行列にしても
なんにしても、費用がかかり、その上、支藩になる際に、
宗家から多大な家臣団を押し付けられたこともあったという。
しかし、これに対し、江戸の頃の富山平野は水害の多発などで
あまり豊かではなかった、と、いう。
そこで、藩では、立山の修験者が栽培していた薬草、
生薬に目を付けたのである。
一方、江戸期、日本海側の主な港は蝦夷などから昆布など海産物を運ぶ
北前船でにぎわい、富山港はその一つであった。
余談だが、日本で昆布の消費量の多い県はどこか、ご存知であろうか。
富山はその北前船の寄港地だから、という説明。
沖縄が、意外かも知れぬ。
昆布は実は、江戸期、我国の数少ない輸出品の一つであった。
輸送ルートは、蝦夷から北前船で大坂などを経由し、薩摩、
琉球経由で中国へ送られていたのである。
そういうつながりが富山と沖縄にはある。
ともあれ。
富山の薬の話。
富山では藩をあげて薬を生産し、その北前船に乗って
日本中の町や村、津々浦々、歩いて、今いう訪問販売を
始めたのである。
これが富山の薬売りの始め。
が、これにはもう一つ、表に出ない仕事があった
という話を聞いたことがある。
津々浦々に歩き回るのであるから、薬以外に、
情報も売り歩いた、というのである。
この情報というのは、当時最も価値があった、
米などの相場情報。
例えば、大坂の取引所の相場情報を地方へ早く伝える、
というのは、商売になった、のである。
全国を歩き回るのであるから、
各地の様々な情報を手に入れることができた。
それこそ、隠密でもやろうと思えば、できた
のかもしれぬ。
富山の薬売り、おそるべし、で、ある。
閑話休題。
昼飯。
富山湾の魚を食べようと、鮨やにでも入ろうか、と考えてきた。
しかし駅まできてみると、改札を出たところにある
物産館のようなところに『白海老天丼』を
看板にしたところがあったので、入ってみた。
白海老天丼が、750円。
その上に、白海老天丼・お刺身付き、1150円、
というのがあった。
せっかくなので、こっちにしてみようか、
と、食券を買って入ってみた。
と、出てきたのが、これ。
刺身は手前、皮をむいた、白海老の刺身。
実は、刺身付き、というのは刺身定食のような、
一般的な(例えば地魚の)刺身かと思ったのであったが、
刺身も白海老だった。
刺身には、おろししょうがが、上にのっている。
しょうゆをちょいとかけて、食べると、
これが、ばかうま。
白海老、というのは、熱を通すと
他の海老、例えば、芝海老や、川海老などと
そう大差ないものになる。
従って、天丼は、むろんうまいが、
びっくりするほどのものではない。
貼紙によれば、ここの店は、手むきです、
というのを売りにしているよう。
それがこの量で、300円ということか。
確かに、この小さな海老を手でむくのは、
そうとうな手間、ではあろう。
ともあれ、白海老は生でこそ、なのであろう。
うまかった。
さあ、仕事だ。