浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草観音裏・蕎麦・蕎亭大黒屋

11月15日(土)第二食


毎度のことだが、蕎麦を食いにいこうと、思い立つ。
さらに、今日は気晴らしに、着物でも着ていこう。


場所は、浅草。
そこで思い付いたのが、大黒屋。


大黒屋というのは、観音様の裏。
言問通りの北側、千束通りから少し東に入ったところ。


モツ焼の喜美松


鮨やの一新などが、近所で、ある。


浅草のそばや、というと、ガイドブックなどには
載る、有名なところ、で、あろう。


趣味そばの元祖、ともいえる、一茶庵系。


九段・一茶庵


むろん、知ってはいたのであるが、
なかなかいく機会がなかった。


大きな理由があったわけではないのだが、
なんとなく、敷居が高そうだ、と思ったのかもしれない。


趣味そば、という言葉は、私が作ったものではないが、
雰囲気はなんとなく、おわかりになろう。


(趣味そばについては、上の、九段一茶庵のページに
詳しく書いているので、このあたりをご参照されたい。
ものすごく簡単にいうと、最近東京に増殖している、
藪や、砂場など老舗系でもなく、街の普通のそばやでもない、
小洒落たインテリアで“こだわってます”という感じの
そばや、で、ある。)


長くなるので、詳しく述べぬが、居心地のわるい
趣味そばが実に多い。


しかし、いい店もある、ということは
段々にわかってきた。
猿楽町の松翁はその筆頭、で、あろう。
また、九段の一茶庵もわるくはなかろう。
あるいは、西浅草おざわ。


ともあれ、趣味そばアレルギーのようなものがあって、
大黒屋には、いかなかった、ということもあったかもしれない。


さて。


大黒屋、昼は二時まで、ということで
一時過ぎに元浅草の家を出る。


濃い緑の御召の着物に羽織、白足袋、雪駄
むろん徒歩、で、ある。


少し寒くなってきたが、天気もよく、
このくらいの恰好でちょうどよい。


真っ直ぐに東へいって、新堀通りを超え、
国際通りまで出る。


ここから、真っ直ぐに国際通りを北上し、
ROXのあたりで、国際通りを渡り、
ウインズの前を抜ける。
随分な人である。


ひさご通りも抜けて、言問通りも渡り、千束通りへ。
一つ目の信号を右に入り、さらに左。


しばらくいって、右に曲がった左側。
すぐに見つかった。
一時半。


入ると、店は、小上がりとテーブル二つほど。
奥に長い。
先客も三組ほどいる。


奥に入り、着物姿の女将さんらしき、年配の女性に
まだ、大丈夫ですか?と、聞く。


と、逆に、お時間は大丈夫ですか?
と聞き返された。


見ると、まだ、食べていない、お客もありそうである。
だいぶ、お昼、混みあったのであろう。


はい、大丈夫です、と答え、テーブル席の方に、座る。


ご主人と、女将さんとお二人でやっている様子。
なかなか、これでは、たいへん、で、ある。


品書きは、白い扇に書かれているのを渡された。


ビールと、、、
メレンゲような、と、形容詞がつけられている
月見とろろ、を、もらうことにする。
そばは、ノーマルなせいろ。


ビールと月見は、先にきた。





つゆをかけ、混ぜ合わせる。


と、なるほど、ふわふわ。
こんなとろろは、初めて、で、ある。
芋が違うのか、おろし方が違うのか、
わからぬが、これは驚き、で、ある。


せいろ。





普通のせいろ、で、あるが、
辛味大根のおろし、が、添えられている。
(これは、一茶庵系で、よくあったような気もする。)
ざるの、竹が幅広なのが珍しい。


もり、も、多目。
つゆは、辛め、で、あろう。


のど越しのよい、そば、で、ある。


一気に、食う。


うまかった、うまかった。


やはり、こういうところは、混んでいるのを
避けてこなければ、いけなかろう。


人のよさそうな、女将さん。
お待たせして、申し訳ありませんと、お客皆に、
詫びている。


私も、勘定をして、出る。


夜も、10時までやっている、と、書いてあった。
不便なところなので、夜の方が、狙い目、なのか。
わからぬが、一度、きてみようか。


さて、これから。


ちょっと、観音様を回ってみる。


見番のある柳通り、へ出て、言問通りを渡る。
観音様の裏の広場。



おお、例の、勘三郎平成中村座の小屋ができている。
小屋、といっても、立派な建物である。
人も大勢出ている。


裏から、三社様へ回ると、七五三の家族連れ。
なるほど、そういう季節で、あるか。


表に回り、観音様にお参りをし、今度は西参道。
ちょっとしたイベントなのか、江戸土産のような、
出店がなん軒も出ていて、大にぎわい、で、ある。


手拭い、浮世絵、提灯、おもちゃ、小物、などなど、
多くが、浅草界隈に縁のあるところのよう。
一通り見て、もう一度、ウインズ側へ抜け、国際通りを渡り、
帰宅。


正月以外で、着物を着て、雪駄なんぞを履いて、歩くと、
最初は自分でも、仮装をしているようで
落ち着かぬが、歩いているうちに、別段
違和感もなくなる。


まあ、浅草だから、ということかもしれぬ。
たまには、よい、で、あろう。





蕎亭大黒屋
住所 東京都台東区浅草4丁目39-2
電話 03-3874-2986