浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草観音裏・蕎麦・蕎亭大黒屋

・・・下町のにおい、山手のにおい・その1

5月2日(土)昼


さて、休み、二日目。


今日も天気がよい。


昨日、雪駄を履いて、出かけようとすると、
かかとがすり減っていた。


雪駄は二足ある。
そうそういつも履いているわけではないが、
一年ももたないだろうか。
どちらもすり減っている。
夏場の週末か、着物を着て外出する場合、である。


雪駄の裏は皮で、そのかかとの部分だけ、上からさらに
もう一枚、皮と金属の鋲が打ってある。
この金属の鋲が歩くたびに、
雪駄独特のチャラチャラとしたよい音(ガラの悪い音?)を
立てる。
このかかとの皮と、鋲がすり減るのである。


昼過ぎ、これを修理しようと、浅草ひさご通りの履物や、
まつもと、へ。
(むろん、買った店、で、ある。)


二足とも直したいので、履いているのは下駄。
履物やへいくのに、なんとなく、靴を履いてはいけない
ような気がする、のである。


他にまわりたいところもあり、自転車。
(下駄を履いて、自転車というのは、いささか、
漕ぎにくい、のである。)


まつもとに着くと、二足あるので、30分ほどみてほしい
とのこと。


さて、どうしようか。
ちょうどいい、そばでも食いにいこう。


この前は、ここからも目と鼻の先だが、国際通りを渡った、
おざわ、へ、いったが、今日は、観音裏の大黒屋へいってみようか。


ひさご通りから、大黒屋までは、自転車だとすぐ。
言問通りを渡って、千束通りではなく、一本裏に入り、
北上、で、ある。


時刻は、1時前。
ここも、ご主人と女将さん二人でやられている。
お昼のお客は引けているだろう。





店は、間口は一間程度と思われるが、
植え込みなどあり、なかなか風情がある。


格子を開けて入ると、先客は3組ほど。
これなら、大丈夫であろう。


いや、まあ、そうそう、忙しいこともない身。
時間がかかっても、ぼんやり待てばよかろう。


テーブル席に座り、エビスの中瓶と、焼き海苔を頼む。


ビールがきて、ちびちびと呑み始める。


案の定、焼き海苔は、なかなか、こない。
が、わかっているので、気長に、待つ。


・・・


きた。





おお。


塗りの箱。藪などでも、これはある。
海苔の下に、炭火を入れ、冷めぬよう、湿気ぬように
温めているのである。


海苔をつまみながら、引き続き、ちびちびと、呑む。


そばは、普通のせいろ。




付いているのは、ねぎと、わさび、ではなく、
大根おろし


つゆは、濃いめ。
そばも、うまい。


食べ終わり、勘定をし、
品のよいお婆ちゃんの女将さんに送られて、出る。





今日、なんとなく、ここでそばを食いながら、
考えたことがある。


それは、表題に掲げた、下町のにおい、山手のにおい、
ということ。



なんとなく、おわかりになろうか。



店の雰囲気、で、ある。
山手、下町問わず、東京で生まれ育った方は、
おそらくおわかりになると思う。


この店のにおいは、どちらか?ということ。
こういった、浅草の観音裏、という場所に長年店を構えているが、
山手のにおい、ではないか、と、思ったのである。


山手は、かしこまっている。


下町は、ざっくばらん。


とても簡単にいうと、そういうことになるのかもしれない。
しかし、実際には、それだけでは説明が足りない。


下町のにおい、が、あっても、かしこまっている
ところ、も、むろんある。
逆も然り。


ふーむ。


この問題、書き始めてしまったが、ちゃんと説明しようとすると、
そうとう複雑、で、ある。




明日も、続けよう。








蕎亭大黒屋
住所 東京都台東区浅草4丁目39-2
電話 03-3874-2986