末広町・モチヅキカレー - 断腸亭料理日記

４４５４号

11月22日（水）第一食

さて。
ここ、ご存知であろうか。

今日は、ちょいと多慶屋で買い物があり、
御徒町方向に出た。

食べるところは、特にあてがなかったのだが
自転車で秋葉原方向にぶらぶらまわっていて、
ちょっと、入ってみようかと思い立った。

末広町交差点の北西のブロック。
かの［花ぶさ］も近い。

週に１～２度はぶらぶらしている界隈。
それで、ここにカレーやがあるのは気が付いていた。
いつも特に入ろうという気にはならなかったのだが、
今日はふと、そんな気になった。
なぜかというと、店前に出ていた看板に神田カレー
グランプリ、という名前が書かれていたのに
気付いたから。

さて、この界隈の昔、［花ぶさ］の回に少し書いているが
もう少し書いてみたい。

ここの旧町名は神田五軒町という。

明治の地図

練成公園と千代田区のアート施設になっていたのが
区立練成中学校。さらに、ここは明治の頃は小学校で
あったよう。

江戸の地図

将軍の上野寛永寺墓参に向かう御成街道沿い。
千代田区は流石、五軒町の由来を詳しく書かれている。

五軒町の由来は「上総久留里藩黒田家上屋敷、下野黒羽藩大関家
上屋敷、安房勝山藩酒井家上屋敷、播磨林田藩建部（たてべ）家
上屋敷、信濃上田藩松平家下屋敷と、五つの大名屋敷が
並んでいました。」とのこと。なるほど。

切絵図を見ると、正確にはもう一家立花という家があるが、
この家は旗本で大名家という意味なのであろう。

各藩家をざっくり概観しておこう。
上総久留里藩黒田家（三万石）は、あの黒田長政の筑前福岡藩の
黒田家とは全く無関係で、譜代。家康の小姓を務めた黒田直綱という
人物が祖といってよいよう。幕末まで続いている。

下野黒羽藩大関家（一万八千石）は、ちょっとおもしろい。
那須大田原の一角の古い領主で秀吉の小田原攻めに参陣、
その後、関ヶ原時には家康に味方し、小山に赴いている。
外様だが、ここも幕末まで家は続いていた。

安房勝山藩酒井家（一万二千石）は、若狭小浜藩酒井家の分家。
もちろん譜代で、幕末まで続いている。

播磨林田藩建部家（一万石）は、池田家の一族で外様。林田
というのは今は姫路市。建部家は外様ながら歴代藩主は
各奉行など幕府要職を務め、やはり幕末まで続いている。

信濃松平家だけが狭く下屋敷。信濃上田藩松平家（五万三千石）は
真田氏の次の次の上田領主。この松平家は将軍家一族で藤井
松平というよう。家康とも近親。幕末まで続く。

この切絵図は幕末のものだが、御成街道沿いという立地は、
小粒だがそれぞれ存在感のある家であったからか。

考えたらあたり前だが、江戸というのは、日本全国の領主
の家々がありこれが横の広がりになっている。そして、
それぞれの家には藩祖から幕末までの歴史、縦の広がりが
ある。正直、日本史の表舞台、教科書にはあまり出て
くる家々でもなく、私もほぼ知らなかったが、こうして、
この旧神田五軒町という町にフォーカスを当てるだけで
現れてくるものがあるのは興味深い。

閑話休題。
［モチヅキカレー］で、あった。

時刻は15時前、入ると、券売機。
中は明るく、広い。先客は1人客3人ほど。

一番ノーマルそうなチキンカレーを。
700円也。安い。
チケットはカウンターの決められたところに
置いてくれ、と、書いてある。

お兄さん一人のワンオペ？。セルフサービス。
セルフサービスはよいのだが、几帳面な方？
話をしたくない？。
ああしてくれるな、こうしてくれ、系の貼り紙が多数。
1回目なので、もう一つ、ルールが把握しきれぬ。
ともかくも、1人で手が回らないのであろう。

席に座って待つと、ほどなく呼ばれる。