浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草今半別館 その1

dancyotei2014-09-22


9月15日(月)夜

さて。

三連休の三日目。

今日は、少し前からの懸案、
[浅草今半別館]。

今半といえばむろんすき焼きの店。

少し前に[今半]の弁当のこと
を書いたが、この時に[今半]を調べて初めて分かったことが
いろいろとあったのであった。

浅草にある[今半]には実は三系統あって、
仲見世にある本当の本家本元の[本店]。
それから国際通りにある、浅草[今半]。
弁当はここのもの。

そしてもう一系統[浅草今半別館]というのもある。
ここは浅草寺の境内もほど近い、伝法院通りと仲見世
交わるあたりにある。

そしてなにより行ってみたいと思ったのは、
その建物。

戦前は今半御殿と名前だったというが、
戦後そのままを再建した、数寄屋造りという
今は貴重な純和風建築で国の有形登録文化財である、ということ。

私達が毎年欠かさず年賀状書きに暮れに出かける、
箱根塔ノ沢温泉の[福住楼]も同じく登録有形文化財ですばらしいので
あるが、そんな遠いところへ行かなくとも、こんな近所に
そういうところがあるのは、不覚ながら知らなかった。

暑い季節にすき焼きもなかろうと、涼しくなるのを
待っていた、のである。

実は行ってみてわかったのだが、かなりの人気のようだったのだが、
ラッキーにも当日の午後TELをするとあいていた。

テーブル席もあるようだが、むろん座敷。

18:30。

内儀(かみ)さんと出て、雷門までタクシー。

仲見世を歩いて、伝法院通りの四つ角まで。

ここから右に折れすぐに左。
つまり、観音様に向かって右側の裏路地へ入り、すぐに右側。

場所柄、玄関に入る入口はそう広くはない。
数mで、立派な、ちょっと旅館のような玄関。
玄関右側に大きな石灯籠。

このあたりもむろん以前からなん度も歩いているところだが
こんなところに[今半]があるというのは、まったく意識していなかった。

左側がテーブル席の入口。
入口も分かれている。

硝子戸を開けて玄関に入り、時分時(じぶんどき)とあって忙しいのか
多少待って、お姐さんが出てきた。

名乗って、靴を脱ぎ上がる。

お二階です、とのことで、お姐さんに先導されて、
狭い階段を上がる。

戦後の建築というが、正確には、昭和25年。
手入れがよくされており、ピカピカ。

二階に上がってすぐの部屋。

桟がまた凝った造りの障子を開けて、入る。

座敷ではあるが、椅子席。
塗りのお膳に長い足を付けてある。

うぉ。

これはこれは、なるほど、すごい。

廊下側の障子と欄間。

天井を見上げると、


いわゆる格天井(ごうてんじょう)というやつ。
内側に一段高く上げて井桁に組んで中にこうして彫刻や
絵などを配する。
神社仏閣、武家屋敷、その他格式の高い建築に使われる。

先の[福住楼]も数寄屋造りだが、我々の泊まる普通の客室の
天井は凝ってはいるが、こうではない。
今思い出すのは、同じく箱根の富士屋ホテルのメインダイニングの
天井がそうであった。

格子(こうし)の中は植物のようだが、それぞれ別の彫り物。
凝っている。
あせているのか、もともとこうなのか。
うっすらと色がついている。

襖と欄間。

違い棚。
(写真を撮り忘れたがこの左側は床の間で、掛け軸。)

この部屋だけでも、ここにきた甲斐があるという
ものではなかろうか。

今、これだけのものを作れる大工職人を探すだけでも
たいへんであろうし、実際にどれだけいるのか。
また、下世話な話し、一体いくらぐらいかかるのか。

さてさて。

気を取り直し、注文。

ビール(キリン)を貰って、すき焼きのコースは
一番安い「こまがた」という7,500円のもの。

お通し。


ちょっとわかりずらいが、おくら、山芋などが
重ねられ、上に花がつお。
冷たいもので、つるつるとした食感がよい。

お気付きであろうか。
ビールのコップが各々二つある。

これは、最初に持ってきたものが、頼んだキリンではなく、
サッポロであったのだが、それを、いいです、といって、
呑んでしまったのだが、わざわざキリンをもう一度、
持ってきてくれたのであった。


つづく。

 


浅草今半別館

台東区浅草2-2-5
03-3841-2690