浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・すき焼き・今半別館 その1

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10月14日(日)夜

さて、日曜の夜。

しばらく前から行こうと思っていた[今半別館]。

浅草では言わずと知れた、すき焼きやの老舗。

今半というのは浅草に三軒ある。
もともとの発祥である、新仲見世にある[今半本店]。
それから国際通りを渡ったところにある[浅草今半]。
そして、今日の[今半別館]。

今半自体は、これ以外に[人形町今半]さらに[代々木今半]
と全部で五系統もある。

弁当などでデパートなどによく入っていたり、商業ビルなどの
高級すき焼き店のテナントとして入っているのが[浅草今半]か
人形町今半]。

複雑な由来はwikiをご参照。

今半系列以外にも浅草にはすき焼きやは少なくない。
だが[今半別館]というのは戦後の建築であるが数寄屋造りの建物が
素晴らしい。これが気に入って外ですき焼きを食べる場合は、ここに
決めている。

実は9月末に行こうとして、TELを入れていたりもしたのだが、
週末の台風にぶち当たり、夜は閉店といったことがあった。

今回は土曜にTELを入れて、翌日の今日になった。

[今半別館]にはテーブル席のちょっとお手軽なメニューも
あるのだが数寄屋造りの素晴らしい部屋でとなると予約が必須
である。

18時に予約。

タクシーで内儀(かみ)さんと向かう。
[今半別館]は浅草寺ちょい手前の仲見世の東側裏。

雷門で降りて、仲見世を歩く。

浅草界隈に住んでいる方は同じだと思うが、
観光客の歩く仲見世を通ることは、あまりなかろう。
私なども滅多にない。
どうしても通らねばならない場合もどちらかの裏の
通りを抜ける。

久しぶりにどんなものか歩いてみたくなったのである。
18時前だが、仲見世は閉店が早くもうシャッターが下りている
ところもある。
仲見世は基本の単位は間口二間か。これを2小間取っている
のが大方である。
昨年から今年にかけて店舗の家賃の値上げのニュースが出ていたりした。
なんと今まで、月1万5千円であったそうな。
なぜこれだけ格安であったか。
これには明治初めまでさかのぼらねばならない。
余談ではあるが、少し書いておこう。

江戸の大きな、特に幕府に関係の深かった寺院を中心
明治新政府が国有化をした。(公園化)
上野の寛永寺、芝増上寺。どちらも将軍家の菩提寺
そして浅草の浅草寺浅草寺寛永寺ができる前は
幕府の祈願所であり、その後も家光の頃、五重塔や本堂を
寄進するなど関係は深かった。

そんなことで浅草寺は周辺も含めて、浅草公園という
名前で東京市のものになったわけである。
その後、国有化は解除されるが、仲見世だけは土地の
所有は浅草寺に戻されたが、建物は東京都のものとして
残っていたようなのである。いわば仲見世は都営の商店街で
あったわけである。

それが昨年、都から浅草寺に建物も所有者が移るということになり
浅草寺が家賃の値上げを突き付けたのである。
金額は25万。1万5千円から格段の値上げだが、界隈の
店舗の賃料からすればそれでも安いのではなかろうか。
今年1月からの値上げということを浅草寺はいっていたようだが、
むろん揉めて、今年5月に8年かけて段階的に上げていくということで
折り合いがついたようである。
そんなこともあってか、仲見世はおそらく昔のままではないか
という妙な品揃えの店もあったりはする。

私自身は仲見世で買い物をすることはまずないのだが、
一軒だけよく覗く店がある。
浅草寺側から二軒目[助六]という店。

ここは、高価だが小さな小さな江戸趣味の人形を売っている。
これがなかなか粋でよいのである。
すべてこの店のオリジナルであるという。

今日も覗いてみる。 ウイークエンドの昼間は観光客が鈴なりになって、とても
店の中に入れないがこの時刻であればお客はなし。
ゆっくりウインドーショッピング。
蕎麦やだったり、天ぷらやだったり、江戸らしい店舗の
ミニチュアがあって一つくらい手元に置いておきたいと
以前から思っているのだが10万を越えるもので
そうそう買う決心は立たない。

見るだけで出て、仲見世の北の端に出る。
前は仁王門。
右側は元の五重塔の跡。裏にまわり、3~4軒先が
[今半別館]。

こんな密集した場所だからか間口は狭い。
向かって左側がテーブル席の入口。
座敷用の玄関は右側。
石畳と両側に風情のある植え込み。

三和土(たたき)の玄関に入る。
しばし待って、出てきたお姐さんに名乗り、上がる。

正面の硝子戸越しに見える中庭。
左側が板場。
右に曲がり階段を三、四段あがって、1階、
一番手前の部屋に案内される。
過去二回きているがこの時はたまたまであろうが ともに二階一番手前の部屋であった。

障子を開けて入る。
畳の座敷に椅子席。

別段私は直に畳に座ることは問題ないが、椅子席の方が
やはり落ち着けるように思う。

お姐さんが「『初音の間』といいます」。

説明もある。
「初音の鼓」にちなんでいるそうな。

つづく

今半別館

台東区浅草2-2-5
03-3841-2690