浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



松屋浅草・銀座すし栄

dancyotei2014-07-13

松屋浅草・銀座すし栄

7月9日(水)夜



例によって、19時半、スペーシアで浅草着。



なにを食べようか、考えてきたのだが、
今日、思い付いたのは、鮨。


松屋の地下の、銀座[すし栄]。


土日以外にはあまり来ないのだが、
今日は寄ってみる気になった。


おそらく土日用の店と、決めてしまっていた
のである。


地下へ降りて閉店間際の安売りの声が飛び交う
惣菜売り場を抜けて[すし栄]へ。


売り場も中のカウンターもにぎわっている。


一人、と、いって、カウンターの一番手前に座る。


瓶ビールをもらって、いつもの「旬彩にぎり」
1890円也を頼む。





箸袋としょうゆの小皿に描かれたキャラクター。



名前がついていたのかどうなのか、わからないが、
この店のオリジナルキャラクターである。


漫画家の横山隆一氏作。


横山隆一氏といえば「フクちゃん」。


戦前の朝日新聞に連載されていた、四コマ漫画である。


昭和11年から昭和19年の3月、終戦の前の年、で、ある。


また「フクちゃん」といえば早稲田大学
マスコットキャラクターでもある。


私自身は早大出身でもなく、読んでいた世代でもないので
ほとんど馴染がないのが本当のところではある。


そういわれれば、このすし栄のキャラクターは
フクちゃんに似ていなくもない。


米粒がモチーフなのかとも思ったが、この店の三代目の
ご主人の顔だという。
赤いのは、舌ではなく、マグロだそうな。
つまりまぐろのにぎりを口に放り込んでいるところ。


「フクちゃん」と同時期だとすれば、戦前のものか。


登録商標と書かれている。


現代の鮨やとしては、もう場違いのような
感じもするが、そこがこの店らしくて、
私は好ましく思う。


いつも、座ると出てくる小皿と箸袋を見て、
和んでいる。


さて。


旬彩にぎりの一人前。


品書きを書き出すと


「鱸(すずき)、車海老、鱧(はも)炙り、鰹(かつを)、


鯵(あじ)、鰯(いわし)、墨烏賊(すみいか)、鮪(まぐろ)赤身漬け、


鮪とろ身、干瓢(かんぴょう)巻」


とのこと。


待っていると、板さんが、車海老が終わっちゃって
甘えびで、とのこと。
営業時刻ももう終わりだからであろう。


きた。





左下から、穴子のように見えるが、これが鱧の炙り、
であろう。


こんがり焦げ目が付き、甘いたれも塗られ、
うまい。


隣が鰯、甘えび、鰹。


鰹もみずみずしく、うまい。


上、左から中とろ、鱸、づけまぐろ、鯵、すみいか。
かんぴょう巻。


岩海苔の味噌汁もきた。
これも、うまい。


追加でいくつか。


小肌と、鯖。





小肌もこの季節は大きい。



鯖は生ではなかろうか。
関鯖、か、わからぬが、みずみずしい。)


たこと赤貝。





ご馳走様でした。



お勘定をして、出る。




さて。



[すし栄]の創業は江戸、嘉永元年という。
ちなみに、ペリー来航が嘉永の六年、で、ある。


その後、幕末、明治大正、昭和の戦前、戦後、そして平成。
この店がどんな歴史を歩んできたのであろうか。


先のキャラクターの三代目は、東京の鮨やで、
それまで火を通したものしかなかった
いかを、初めて生でにぎった、ともいう。


今、銀座の本店も、池波先生が豊子夫人と
よく訪れた、銀座松坂屋の地下の店もない。


嘉永元年からだと今年で165年になる。


手頃な値段で、気軽に寄れる。


にぎりの技は、歴史に裏打ちされている。



東京でも希少な鮨やであると、思っている。





すし栄