浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭パリへいく。 その13

dancyotei2013-05-21

5月1日(水)


さて、いよいよ、diner(ディネ=ディナー)。

レストランの名前は[Passage 53](パッサージュ53)。

7時半すぎ、雨もやんでおり、このために一着だけ持ってきた
紺のブレザーを着て、出掛ける。

ホテルから距離とすれば、1km程度。
だが、ちょっと迷ってしまった。

住所の表記が53 Passage des Panoramas。

内儀さんは雑誌に載っていた地図を持ってきたのだが、
これが不正確。

スマホのグーグルマップで検索してやっと見つけた。

フランスの住所表記も他の欧米同様、通りの名前に
番地を付けるのだが、このPassage des Panoramasが
独特の表記であった。

Passageは、アーケードというのか、上に屋根がある
商店街のこと。
パリには歴史のあるPassageがいくつもあるよう。
(ちなみに、ここも出来たのは19世紀初頭。享和、文化年間)

Passage des Panoramasは、パノラマ通りのパッサージュ
ということのよう。

店名はこの住所表記をそのまま使っていた。



より大きな地図で 断腸亭料理日記パリへ行く(9) を表示

パッサージュの入口。



(通路の狭さ加減が、昔近所に住んでいたが、葛飾
立石仲見世に似ている。誰もわからないだろうなぁ。)

まわりはカフェやレストラン、その他雑貨を扱っている店だったり
色々だが、どこもなかなか雰囲気がある。

余裕をみて出てきたので、8時きっかりに店に入る。

テーブルは5つ(だったろうか)。

我々を入れて、日本人が3組。
フランス人が2組。

ギャルソン(でよいのか。)ホール係は、若い日本人の男性二人と
フランス人一人。

真っ白の壁で、ほとんど装飾はなく、
唯一、大きな花瓶に花が活けられている。



コースはおまかせの一つのみ。

Aperitif(アペリティフ=食前酒)には、ロゼのシャンパンを
勧められるまま、もらった。



銘柄はおそらくちゃんといってくれていたのだと思うが、
素養もなく、まるで覚えていない。以下、ワインなど、同様。
この滞在記、だらだらと書いて、もう20日も前のことで、
メモっておけばよかったのだが、料理も忘却の彼方になりつつある。

Amuse(アミューズ)。



小さなブルーの陶器がお洒落。

中身は、なにかの冷製スープ、あるいはムースだったと思うのだが、、、
かぼちゃであったか、、。

バター。



赤いのは唐辛子入り。

Entree(アントレ)?。



食べますか?と、聞かれて「はいはい、もちろん!」
と、二つ返事でもらった、キャビア

キャビアなど、どのくらい食べていないだろうか。
値段もさることながら、天然ものが希少になって
出回らなくなっている。(小さな瓶詰でカスピ海産天然ものは
数万〜数十万円もするよう。)

養殖ものとのこと。

下に敷いてあるのが、薄いせんべいのようなものと
ムース。

キャビアというのは、味としてはいくらに近いものだが
もう少し、魚くさいかもしれない。これがうまい。

白ワインにかえてもらう。
これもおまかせ。(シャブリであったか。)

魚介の皿、一皿目。



牡蠣であったか。
上の白い破片は白トリュフ。
牡蠣はやはり、ジュレで和えられている。
ジュレはフュメ・ド・ポワソン。魚のスープ。
緑の皮の薄く切ったものは青りんごであったか。

牡蠣に青りんごを合わせるのはフレンチのテクニックとして
既存のもの、なのかもしれない。

野菜の皿。



グリーンアスパラ一本。
March?(マルシェ)にも盛んに売っていた。
旬である。
白く細いのも細く切ったアスパラという。

見せ方が美しい。

グリーンアスパラの上にちょこんとのっているのは
アンチョビ。
(ドレッシングというのかソースの味は、、忘れてしまった。)

魚介の皿、二皿目。



これがここのシェフ佐藤伸一氏のスペシャリテ
必ず出されるものらしい。

佐藤伸一氏は35歳。
TV「情熱大陸」で紹介されたらしいのでご存知の方もあるかもしれない

北海道の出身。
22歳で単身渡仏、09年にこの店を開店。開店後わずか半年で一つ星、
さらに1年後に二つ星を獲得している。

この2年で星二つというのは、かのジョエル・ロブション
アラン・デュカス以来の偉業とのこと。
フランス国内でも大きな話題になっているという。
まだ、35歳、まさにこれからどんな仕事をしていくのか、楽しみな人
であろう。

ともあれ。
これ、なんだかおわかりになろうか。
まず見ただけではわからなかろう。

すべて白っぽい。隠れていて見えないが、下にはいか。

いかは表面に市松(縦横格子)の切れ目を入れ、表面を
軽く色が付く程度、表面を炙(あぶ)っている。
まるで、和食。

上にのっているものが、想像すらしかねる。
これは凍らせて薄く切ったというカリフラワー。
間に同じくカリフラワーのムース。

いかを半生に焼くのは日本人であれば、あたりまえのこと。
ただ、半生で食べられる、うまいいかを常時調達するのはパリでは
至難であろうことは想像できる。

で、焼きいかにカリフラワーを合わせる、というのが新しい。

食べてみるとわかるのだが、炙ったいかとカリフラワーに
同じ香りと味がある。
それで、合わせることができる。

焼きいかとカリフラワーに同じ味があるというのは、まさに驚き。

むろん、うまい。

なるほど。この人はこういうことを考えて
料理を組み立てているのか、で、ある。

Passage53

つづく。