浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



すし栄・浅草松屋

dancyotei2012-08-08



8月5日(日)午後



さて。



日曜日。



相変わらず、暑い。



午後、鮨をつまみに行こうと、思い立つ。


軽く、浅草松屋に入っている、すし栄。


ここは銀座が本店で、江戸末まで創業がさかのぼれる、
超老舗、と、いってよかろう。
銀座の松坂屋にも入っており、こちらは、池波先生も
ご夫人と買い物ついでにちょいと寄る店でもあり、
デパートの地下に入っている店にしては、ちゃんとしているし、
値段もリーズナブル。


回転寿司へいくよりは、そうとうによい。


そして、もう一つ、目当ては小肌の新子。
もうそろそろ、メダカよりは大きくなっており
新子として、味がわかるくらいにはなっているだろう。
そして、去年、銀座高島屋のこの店で、小肌の新子は
あったので、今年もここで食べられるだろう。


そんなことが、今日の動機、で、ある。


3時すぎ、自転車で出る。


短パンにアロハ、雪駄履きという、例によって、
ガラのわるい格好。


暑い炎天下だが、浅草も人は出ている。


花川戸の松屋の脇の路地を入り、松屋の自転車置き場に
自転車を置く。


松屋、というのか、東武の浅草駅というのか、
この建物は、今年のスカイツリーの開業に合わせて
駅開業当時の大時計がある姿に復元、きれいに化粧直しがされている。


このビルは東京で二番目にできた鉄道乗り入れの
ターミナルビル。
できたのは、戦前の1931年(昭和6年)。
(一番目はどこかというと、白木屋の入った池上線五反田駅だそうで、
こちらはこの3年前の1928年。)


今までは外回りがアルミの壁で覆われており、
また、あらためて見上げることもなく、
まったくわからなかったが、今回、改修がなり、
アールデコのモダンな外観が現れている。


志ん生であったか、開業当時、駅がビルの中にできた、
というのをそうとうな驚きを持って語っていたように
思われる。
また、ビートたけし氏なども子供の頃の話として
語っていた記憶があるが、墨田区北部、足立区などの東武沿線、
下町の人々は、この近代的なターミナルビルに遊びにいくのが
たのしみであった、という。
そんな記憶のある東武浅草駅のビル、で、ある。


ともあれ。


松屋に入り、地下に降りる。
すし栄は店売りと、カウンターだけの小さなスペース。


カウンターにはお客はなし。


一人座って、ビール。



いつも頼む、1700円のセットの内容は?


〜〜〜〜〜〜〜〜〜



新子(しんこ)、秋鮭(さけ)、鰹(かつお)、鱧(はも)湯ぶり、


鯵(あじ)、鱸(すずき)、穴子(あなご)、すみいか、まぐろ、


中とろ(全10貫)。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜



おお!、やはり、小肌の新子がある。
迷わず、これ。





新子のアップ。



三枚づけ。


丸々三匹をにぎったもの。
むろん、これから食べ始める。


うまい。


メダカ程度よりは、大きくなっており、
立派に新子と呼べるもの、で、あろう。
(ただ、もう気持ち、大きくてもよいかもしれない。)


だが、このくらいの大きさで初めて、味がわかろうというもの。
希少価値はよいのだが、職人もいっていたが、メダカ程度の
大きさでは、酢の味しかしない。
(鮨職人もピンセットでさばくらしいが、たいへんな作業だ、
と、いっていた。)


小肌の新子を騒ぐのは、香りがよいこと、
と、私は思っている。


小肌は、今頃生まれて、3〜4年は生きる。
一番大きいのは、コノシロ。


その手前がナカズミ、その前が小肌。


にぎりにして、一匹でにぎれる大きさまでが小肌。
半分に切ったものをにぎるくらいの大きさがナカズミ。
その上が、コノシロ。そんな感じのようである。


東京の鮨やでは、コノシロになると、もうにぎらない。


大きくなればなるほど、身が厚く堅くなる。


にぎりで食べるのであれば、新子>小肌>ナカズミ。


身が柔らかい順、と、いってもよかろうし、
小さい方がより繊細な味と香りで、うまい。


またこの皮の、銀色に点々のある模様。


東京の鮨職人はこの皮目に、切り込みを入れたり、
あるいは、身をひねってにぎったりするが、この姿が
実に美しい。


これぞ江戸前の鮨。


小肌のにぎりが、にぎりの鮨で最も様子のいいものだと
思っている。
(コノシロになってしまうと、点々も大きくなり、
とても様子がよい、とはいえなかろう。)


調子に乗って、もう一つ。(ついでに、平貝も。)





今度は四枚付け。


幸せ、で、ある。




うまかった、ご馳走様でした。



今日のセットに入っていた、いか、もスミイカなのだが、
もうじき、そのスミイカの子供、新いか、が、現れる。


聞いてみると、もう出ているらしいが、まだ高いとのこと。


この下旬くらいか。


これもまた、とろけるように柔らかく、うまい。
今からたのしみ、で、ある。





すし栄






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と、いうことで、少し早いですが、明日より、
断腸亭は夏休みをいただき、断腸亭料理日記は、
休刊となります。(再開は、19日頃の予定。)


皆様もよい夏休みを!