浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



秋刀魚と鯖 その1

dancyotei2011-10-16

さて。



様々あったが、今日からは“平常”営業で。



10月9日(日)



モルディブから東京に帰ってきたら、
やっぱり、“まともな”魚、が,食べたい。
(昨日は、太助から出前を取ったが。)


昼すぎ、床屋ついでに、御徒町へ。


吉池。



秋本番ということであろうか。
魚が豊富。


鯖が産地違いで3種ある。
むろん、どれも〆鯖可。


ちょっと珍しいが、一番安い新潟産。
これにしよう。


それから、秋刀魚。


1本100円。


この秋は、9月にも既に塩焼きやらで
食べているが、6本。


世界どこでもそうだが、生で食べられる
魚がこれだけで回っている国は、どこにもなかろう。


それも安い青魚で生で食べられるものは
世界中どこを探しても、皆無、であろう。
モルディブの日本料理やにも、光物はなかった。
(むろん、ダイビングで潜れば、鯵の類は、
沢山見かける。)


鮪や白身はさておき、私などは
刺身や鮨は、光物抜きには考えられない。


日本という国は、漁師さんから始まる、
魚のサプライチェーンすべてが、安い青魚であっても
多く、刺身で食べられる扱い方をしている。


日本に住んでいると、まったくあたり前になっているが、
世界的には、そうとうに珍しい、おそらく皆無、
で、あろう。
モルディブでは生のインドマグロは揚がっても、
獲った漁師も漁船も市場の設備も、もともと生で食べる
習慣がないので、生で食べるための魚の扱い方や、
冷蔵その他のインフラがない、のであろう。)


考えてみると、日本だって、昔からそうだったかと
いえば、そんなことはない。


冷蔵設備がない頃は、限られた魚だけを生で食べ、
あとは、酢〆や、しょうゆ漬けなどで食べていた。
(だが、それでもできるだけ生に近い形で、食べようと
工夫をしていた。)


時代が下って、戦後、私が子供の頃でも、まだ、
鯖などは、家庭で〆られる鮮度のものは、なかなか
魚やには並んでいなかったと思う。


が、近年、北海道で獲れた秋刀魚でさえ、
刺身で食べられる鮮度のものが、1本100円で
買える。


日本人には、刺身で食べられる魚は
できるだけ刺身で食べたい、という、食嗜好がある。


それを反映して、こういう世界的にはレアな
魚のサプライチェーンが出来上がっている。


まあ、不思議な国といってよかろう。


考えたのだが、こんなこともいえまいか。


世界でこれだけ日本食や鮨が人気になっているのだから
この、すべての魚を生で食べられるように扱う
日本の『魚サプライチェーン』のノウハウも、輸出することは
できないであろうか。
どなたか考えてみてはもらえないか。
きっと成功するビジネスになると思うのだが。


そうすれば、モルディブでもニューヨーク(?)でも
うまい生鮪や、光物のにぎり鮨が食べられるようになる。


モルディブで食べたカリフォルニアロールなんぞは、
はっきりいえば、鮨ではない。
本当の東京のにぎり鮨食文化は、まだまだ世界に
広まっていない。


もともと魚生食(さかななましょく)文化がなかった
世界であるが、これだけ日本食がブームになれば、
外濠は埋まったと見てよかろう。


この光物のうまさは、必ず、世界に通用するはず。


前座のカリフォルニアロールは終わった。
『魚サプライチェーンノウハウ』を輸出しよう。
真打登場の時間である。



閑話休題



帰宅し、まずは、鯖。





三枚におろす。



脂ののりは、さほどでもなさそうだが、
鮮度はよさそう。






両面塩をし、網の上に置いておく。


秋刀魚は、今日は、刺身で食べよう。





ギトギトと光った、旬の秋刀魚。
この色を見るだけで、うれしくなるではないか。


こっちも1本、三枚。


しょうがもおろす。






鮨やなどでは、最近は炙るのが流行っているが、
なぜ、生でにぎらないのか。
生で十分うまいではないか。


秋刀魚は塩焼きがうまいのは、誰でもわかっているが、
生もそうとうである。
他の光物、鯵や鯖、などとはまた違い、
秋刀魚の生には、別のうまさがある。






長くなるので、つづきはまた、明日。