9月20日(土)第二食
さて、土曜日。
二日酔いというほどではないが、
昨日はちと、呑み過ぎた。
呑み過ぎた翌日は、辛いスープものがよい。
汗をかいて、アルコールを抜く。
担々麺などもいいが、麺がない。
緑豆春雨ではどうか。
7月に、トムヤムスープに入れてみたりしている。
これもいいが、随分前に作った、火鍋風の辛いスープの春雨。
これを参考に作った、いい加減な辛い緑豆春雨のスープ。
いい加減だが、なかなか、うまいものができた。
入っている白いのは、富山で買ってきた、蒲鉾。
それから冷蔵庫にあったキャベツ。
その蒲鉾、こんなもの。
やわらか、という名前がついていたが、丸くて、でかい。
富山の名産なのであろうか。
左側にあるのは、一緒に買った、ほたるいかの押し寿司。
富山といえば、ますの押し寿司が有名だが、これではつまらぬと、
空港で買ってみたもの。
家に帰ってきて、すぐ食べたのだが、
味は?
まあ、ますの寿司にすればよかった、というところであった。
さて、午後。
このところ、蕎麦やにいっていなかった、ような気がする。
夏のせい、かもしれぬ。
久しぶりに、並木藪へいこうか、と、思い立つ。
昼下がり、このくらいの時間なら、もう列にはなってはいまい。
下駄を履いて、出る。
天気もよい。
大分涼しくなったが、日向(ひなた)を歩いていると、
やっぱり、暑い。
新堀通りを渡り、寿町を突っ切って、国際通りも渡り、
消防署の通りを左折し、北上。
浅草通りを渡り、路地を右折し、並木の通りに出て、左。
並木藪、到着。
涼しくなってきたせいか、表の戸が開け放たれている。
三時。
よかった、並んでいる人はいない。
いらっしゃいませ〜、の声とともに、
お姐さんが、あいていた小上がりのいちばん奥、土間側の
お膳をすすめてくれた。
下駄を脱いで、上がり、店入り口側に向かって、
胡坐をかく。
スポーツ新聞を出してくれる。
ここの一人でいった客へのいつものサービスである。
お酒を冷やで。
(常温ですか?などと聞かないのも、よい。)
それから、つまみは、まだ暑いようだが、
今日も、天ぬき、に、しよう。
すぐに、塗のお盆にのって、運ばれる。
陶器の猪口ではなく、小ぶりなグラス。
そば味噌。
割り箸が、紙の箸袋などに入っていないのも
“ここ”らしくて、よい。
白い一合の徳利。
白木の一合枡が袴。
この一合枡には並木藪の店名が焼印で押されている。
いつもの、菊正宗の樽酒。
うまいなー、と、しみじみ思う。
加減をしながら呑んでいると、天ぬきが、きた。
かき揚げ天ぷらそばの、そばなし。
なにか、やはり、ここに胡坐をかいて、冷や酒を呑みながら、
天ぬきをすする、というのは、うれしく、幸せな時間である。
海老もうまいし、つゆも、うまい。
全部残らず、飲み干してしまった。
さすがに、薄汗が出てくる。
そばは、ざるを頼む。
わさびをちょいとつまんで、そばを一箸取り、先の方だけ
そばつゆに漬け、一気に手繰り込む。
なにもいうことがない。
うまい。
座ったまま、勘定をして、再び下駄を突っかけ、
ありがとうございま〜す、の、声に送られて、出る。
並木藪、いや、本当に、充実した幸せな時間がすごせる、
私にとっては、今、そういう場所、で、ある。