浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



池の端藪

7月14日(月)夜


今日は、会社の同僚と呑みにいく約束を前からしていた。


同僚といっても、普段は別の場所で仕事をしており、
たまたま、ご近所、北上野に住んでいる。
そんな関係で、少し前から、今度、いこうか、ということになっていた。
その彼が、私のオフィスで夕方会議があり、じゃあ、
その後で、ということであった。


6時過ぎ、連れ立って、オフィスを出る。


ご近所なので、どこへいってもよいわけであるが、
ちょいと、考えて、時間も早いし、池の端藪


大江戸線牛込神楽坂で乗って、上野御徒町


焼肉屋だの、なんだのの建ち並ぶ、路地を抜け、
池之端仲通りに出て、左へ曲がり、池の端藪。


6時半には、着いていたであろう。


入ると、小上がりの座敷もあいている。
こちらへ座ろう。


ちょうど、志ん生師をはじめ、往年の噺家
名人達が寄せ書きをした絵の前。


瓶ビールをもらって。


つまみは、と。


二人であれば、さまざまなものをもらえて、よい。
こんな機会に、と、そばなえ、板わさ、柱わさび、、。
最近、気にいっていた、天ぬきは、もう暑いので
やめて、あいやき、を。


そばなえ。





これは、そばの芽の、もやし、のようなものの、
おひたし、で、ある。
シャキシャキとした歯触りがよく、うまい。


板わさと、柱わさび。





板わさは説明の必要もないであろう。
蒲鉾を切ったもの。
柱わさびは、小柱。


あいやき。





ここで、これを食べるのは始めてかも知れぬ。
合鴨をレアに焼いたもの。


はじっこに、肝、で、あろうか。
これも焼いたものだが、添えてある。


こちらは、酢じょうゆに辛子で、食べる。


どれも気の利いた、池波先生風にいえば、
江戸風味の酒の肴、ということになろうか。


こういうものを並べて酒が呑めるのは、
やはり、幸せ、で、ある。


ビールから、冷(ひや、常温のこと)の菊正宗にかえ、
二合ほど。


最後は、もり。





最近、しみじみと、うまい蕎麦は、うまい、と、
思うことが多くなった。


なにか、へんな書き方だが、よくそう感じるのである。


そばの味というものが
段々にわかるようになってきた、ということであろうか。


路麺(立ち喰いそば)も含めて、おそらく一週間に五食以上は
なんらかの形で、そばというものを食べているかもしれない。
(むろんこの日記には書いていないものも含めて。)


夏も冬も、こうした生活を、もうここなん年も続けている。


もちろん、昔から、そばというものは好きであった。
しかし、本当の意味でそばの味をわかっていたかといわれると、
そうではなかったのであろう、とも思うのである。
茹で加減だったり、打ち方、切り方などの違いはむろん
わかるが、今のようにしみじみ、うまい、と、思うことは
あまりなかった、かもしれない。
(まずいと思って食べていた、というのではなく。)


よく、そばグルメを自称する人々は、粉のことをいうが
私には、今でもそんなことはわからない。
じゃあ、なにがうまいのか、と、いわれても
うまく説明ができないのがもどかしい。
つゆもあるだろうし、粉も、打ち方も、茹で方もあるのだろうが、
全体として、としかいいようがない。
全体として、このそばは、うまいなぁ〜、と
感じるようになった、ということなのである。


ともあれ。
うまかった。



結局、二人で閉店の8時までここにおり、
さらに、吉池の脇の立ち呑みや、味の笛、まで回ってしまった。
ご近所の気楽さである。





池の端藪