浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



鴨のミートソース

dancyotei2007-03-05

3月1日(土)深夜


さて、深夜である。
例によってチューボーですよ!、を見ていると、
今週は、たこのトマトソースパスタであった。


これは見ていてうまそうであった。


生だこというのは、東京では高価であるし、
そうそうよいものは、流通してもいない。
以前、名古屋時代、いいだこ、であるが、かなり新鮮なものを
安く買ったことがあった。このときには、ピラフのような
ものを作ったのであるが、本当に新鮮だと、調理中も、
吸盤が手にくっつくし、火を通して、口に入れても
まだくっついた記憶がある。


この時、名古屋は新鮮な魚が並ばない、などと書いているが
今から考えると、こんなものは東京ではまずお目にかかれない。
東京湾と、伊勢湾では、やはりずいぶんな違いである。


名古屋の場合、仮説であるが、魚介類食よりも、どちらかというと、
肉(それも鶏肉)食志向の消費者の方が多く、魚介類も新鮮なものが
三重などで獲れても、需要が少なく、多く流通しない、
のではなかろうか。
(つまり、供給の問題ではなく、需要の問題で店頭に並ばない。)


東京の場合、食文化としては、江戸前の魚介類食文化。
名古屋の食文化は、豊かな濃尾平野の米、野菜、小麦、豆(味噌)
それに、コーチンをはじめとした鶏肉。


なにがいいたいのかというと、江戸東京は、
ベースはどちらかというと、漁師の食文化。
これに対して、尾張名古屋の場合は、お百姓の食文化、
もしかしたらそんな風に位置付けられるのかもしれない。


まったくの、余談であった。
閑話休題


たこのトマトソース。
なのだが、この夜中に生だこは、売っていなかろうし、、
食べたいがどうしたものか。


そこで思いついたのが、鴨肉。


冷凍庫にまだ、鴨肉が、余っていたのであった。
正月の余りなのか、取材用に大量に買ったものが余っていたのか、
よくわからぬが、まだ1枚、残っていた。


鴨肉で、いわゆるトマトのミートソースを作るのは
どうであろうか。


そもそも、そういう使い方があるのであろうか。
少し調べてみる。


すると、鴨のトマトソースは、なくはないようである。


イタリアンで、トマトのミートソースは、いろいろないい方をする。
ボローニャソース、あるいは、ラグー、などといういい方もある。
レバーなども使われたり、ソーセージをほぐしたようなもの、も
広くいうと、この類に入るのではなかろうか。
どちらかというと、脂が多くこってりした材料、
そんな方向なのかもしれない。


鴨肉は、脂も多い。
鴨のコンフィ(それ自身の脂で低温でゆっくり揚げたもの)
をほぐして、トマトソースにする、というような料理もあるようである。


なるほど。
ではやってみるか。


ミートソースは何度も作っているが、これは!、という
レシピにたどり着いてはいない。
調べても、いろんなつくり方がある。


プロのコツ、のようなものを調べると、


こんなものがあった。


恵比寿のイタリアンのシェフのレシピである。


これを基本にしよう。


足りないセロリを、買いに出る。
夜中に開いているのは、ハナマサヤマザキ
三筋のヤマザキで、購入。


作る。


玉ねぎ、にんじん、セロリを荒くみじん切り。
この順でフライパンに入れ、オリーブオイルで炒める。
30分以上炒めて甘くなるまで、というのがコツのその1、
のようである。


レンジ加熱も併用しながら、甘いにおいがたってくるまで
よく炒める。
レシピにはないが、炒めあがる前に、ローリエ
三枚ほど入れ、軽く炒めておく。
香りがよくなるだろう。


鴨肉は、みじん切りから、叩いておく。


野菜は煮込み用の鍋に移し、
鴨肉をフライパンで炒める。炒めすぎもいけなかろうが、
鴨の脂が、じんわりと出てくるまで、炒める。


コツその2、干ししいたけを戻し、みじん切りしたもの。
これも鴨肉と軽く炒める。


ホールトマト(缶)はみじん切りし、レシピ通り、
裏ごし器で、裏ごそうと思うが、トマトの繊維が堅く、
これは時間がかかりすぎる、、。
ミキサーに掛けてからからにすればよかった、か?
面倒なので、裏ごし器の上で、よくつぶし、
種も繊維もそのまま入れる。
プロではない、繊維がある程度ほぐれていれば、
問題はなかろう。


先に炒めた野菜の入っている鍋に、トマト、炒めた鴨肉、椎茸、
レシピ通りに、ケチャップ、赤ワイン、小麦粉を入れる。


軽く塩胡椒。


あとは煮込む。


小麦粉を入れる、というレシピは、筆者、初めて見た。
とろみ、が、ついてくる。


常にかき混ぜていないと、焦げつきそうである。
レシピには1時間半、とあるが、そんなには待てない。
20〜30分程度であろうか、そこそこ、よい感じになってきたので、
適当に、やめる。


再度味見。
塩胡椒を足す。


スパゲティーを茹で、盛り付け。




(この写真は翌朝、ペンネで食べたもの。)


パルメザンチーズもなにもかけずに、
とりあえず、食べてみる。


なかなか、よい。
鴨肉の香りがトマトとよい相性であるし、
また、脂の具合がやはりミートソースに合っている。


香辛料は胡椒と、筆者が勝手に入れたローリエだけであるので、
全体として、くせがなく、シンプルであるが、
ソース自体の旨みは十分。
よく炒めた野菜と、しいたけも、なるほど、一役買っているようである。


とろみの、小麦粉はプロの技、で、あろうか。
今まで、筆者が作るトマト系のソースでは、
小麦粉ろ入れていないので、粘度は低く、シャバシャバであった。
とろみがあれば、麺にからみやすいし、
うまみも、なにか、まとめている、ようにも思われる。
小麦粉は、知らなかった。
量が多すぎると、あんかけ、のようになってしまうのだろうが、
ほんの少し、であれば、よいのかもしれない。


ちょっと、ミートソース開眼で、あろうか。