浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



柱わさび・柱かき揚げ

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3880号

6月17日(木)第二食~

午後、いつものように吉池に寄る。

特に目当てがあったわけではない。

一渡り見てまわると、小柱に目が留まった。

鮨、あるいは天ぷら用なのであろう、
白い網のトレーにのっていつも売られている。

ちょっと粒が大きなもの。
三重県産、800円ほど。
内地産にしてはデカイ。

小柱というのは、ご存知のように、
青柳、ばか貝の貝柱。

江戸前の種ではある。
鮨、天ぷらにする。
このところ吉池では見ないが、今も千葉県産も
出回っているのではなかろうか。

一番大きく、高級なものは、北海道産。
内地のものと比べて、数倍の大きさ。
種としては内地のものと同じらしいが、
エゾバカガイといって、別に扱われていたことも
あったよう。

東京の鮨や、天ぷらやなどで使われるのは
もっぱらこちら。

味は違わないとは思うのだが、とにかく
北海道のものは大きい。

今日の三重県産のものは、そこまではいかないが
千葉のものの倍はありそう。

刺身をわさびでつまむ、柱わさびに
しよう。

お気付きかもしれぬが、私は鮨でも貝類というのは、
食べられないこともないし、増してきらい
ではないのだが、順番としては下位になってしまう。
鮨やへ行っても頼まないこともある。

それでも、火を通した煮はま、などは別にして、
生で食べるのであれば、小柱、平貝が、
上位になる。
やはり、魚とは違う、貝独特の生ぐささが
この二つは少ないのではなかろうか。

めかぶも買って、帰宅。

柱わさびは、水洗いをして、
生わさびをおろすだけ。

だが、やはり海苔だけはあった方がよいだろう。

小皿へのせて、もみ海苔。

めかぶ、残っていたはすいもも出す。

貝の生ぐささというのは、磯くさい、などと
肯定的にいわれることもある。
小柱には、それがほぼない。
これが、うまさ、で、ある。

さて、翌日。

柱わさびで食べたのは、半分。

残りは、かき揚げ以外にはあるまい。

大根だけは買ってくる。

揚げ鍋を用意し、冷蔵庫に入れてある天ぷら油を
出し、鍋に入れる。
余熱をしておく。

ボールに全卵一個を割ほぐし、氷2個、冷水。

大根もおろし、皿、紙、天つゆ
桃屋のつゆ)を用意。

お!、そうだ。
野菜室にあるアスパラも揚げよう。

半分に切る。

衣は余らせてもしかたない。
かき揚げ一つ分とアスパラ2本分の量。
が、いつも余らせてしまう。

鍋に点火。180℃に設定。

ボールに天ぷら粉を投入。
軽く合わせる。

小柱から。
お椀に小柱を入れ、天ぷら粉をまぶし、
ここにボールの衣を合わせ、お椀から油に投入。

小柱は揚げすぎはいけなかろう。
そこそこよい色まで、揚げる。

続けて、アスパラも揚げる。

皿へ。

ビールを開けて、食べる。

アップ。

天ぷら粉を使っているので、揚げあがりは
まったく問題はない。

この小柱かき揚げ、成功、で、ある。
うまい。

揚げあがりの問題ではなく、小柱の大きさ。
今まで、小さいものしか使ったことがなかった。
小さいとかき揚げにしても、どこにあるのか
わからぬほど。
やはり、このくらいの大きさはないといけなかった。

小柱、うまいものである。
一般的には、そこまでの存在感はない、のかもしれぬが
江戸前の鮨、天ぷらに欠かせない種、で、あろう。

この大きさ、この香り、食感、味。
貝の中でも最も“粋”な種ではないかと思っている。

 

 

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稲荷町洋食ベア本店/ポークジンジャー

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3879号

さて。今日は外と自作の洋食系二本。

6月16日(水)第一食

稲荷町洋食ベア本店

気温はそこそこ高いが、曇り。

書いている通り、このところ第一食の時刻が
遅くなっている。
2時をすぎると、近所は昼の営業を終えているところが
多いのだが、稲荷町の[ベア本店]は3時半まで
やっている。

雨の予報もあるが、幸いまだのよう。
自転車で出る。

店の外の、看板で日替わりを確認。
チーズハンバーグ目玉焼きなどあるが、
C.アジフライとウインナーの串カツ、、
これが一番安くて、650円。
安いがなにか魅力的ではないか。

入ると、意外に人はぽつぽつとではあるが入っている。
やはり、時分時(じぶんどき)を外れても
やっているのは、皆、ありがたいのである。

一応、メニューをもらってみるが、やっぱり、
当初考えた通り、Cを頼む。

きた。

アジフライとウインナーの串カツ。
ウインナーの串カツというのは、初めて
食べるかもしれぬ。
赤いウインナーではない、と思うのだが、
比較的堅い食感のもの。玉ねぎもあり、
なかなかどうして、うまい。
豚肉ではなく、ウインナーの串カツ、
この店らしい、かもしれぬ。

アジフライは開き、ではなく、半身ずつ。
切れてしまったのか、切ったのか、わからぬが。
ともあれ、切れていてももちろん、なんら問題はない。
カラッと揚がっており、うまい。
よい鰺かもしれぬ。

ご馳走様でした。
うまかった。


03-3831-6430
台東区東上野2-2-9


6月16日(水)第二食

ポークジンジャー

豚の生姜焼き、なのだが、
呼び名をポークジンジャーとしたのは、
厚い、とんかつ用の豚ロースを使うので。
スライスよりも食べ応え、で、ある。

豚の生姜焼き、暑くなってくると、食べたくなる。

肉はハナマサで買ってきた。

付け合わせは、ほんとうはキャベツの千切り
なのだが、冷蔵庫の野菜室にアスパラがあるので
一緒に焼くことにする。

しょうがをおろし、酒、しょうゆ。
いつもは入れないが、にんにくも一片、一緒に
おろし、たれを作っておく。
いろいろ入れるレシピもあるが、私は
このくらいさっぱりしている方が、好きである。

二枚。
肉は切れ目など入れない。
以前はレシピ通りやっていたが、必要であろうか。
反り防止、というのだが、たいして反らない
のだが。

軽く塩胡椒し、軽く小麦粉をふる。
小麦粉は、とろみになる。

油を敷いて、フライパンで両面火を通す。
アスパラも同時に入れて、焼く。
焼く際には、フライパンを斜めにし脂身部分から
脂をよく出す。
これは必須であろう。
脂身はできるだけ脂を出した方がうまい。

アスパラは焼けたら、先に取り出す。

たれをざっと投入。
そのまま肉に絡めながら軽く煮詰めて、出来上がり。

皿へ。

ビールを開けて、切る。

肉にのっている、緑色のものは、にんにくの芽の
部分。残ってしまった。
圧倒的にしょうがの量が多いので、あまりにんにくは
感じられない。
入れるなら、もっと大胆に入れないとあまり意味は
なかったか。

ともあれ、うまいものができた。

簡単であるが、ポークジンジャー、
今日は、95点。

 

 

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高知産はすいも

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3878号

6月14日(月)~

さて、昨日。
雷門[松喜]でステーキ肉を買って、隣のスーパーオオゼキ
じゅんさい、谷中を買ったのだが、同時にはすいも、
というものを買った。

ここ、おもしろい野菜を置いている。
先日は、東京ではあまり見かけない、例の
青い山椒の実、実山椒も見かけた。

ともあれ、はすいも。
見た目には、生の芋茎(ずいき)、里芋の茎。
いわゆる芋がら。

芋がらは、乾燥したものもあるが、生も食べる。
乾燥すると縮んでいるが、煮ものなどが馴染深い。
生の芋茎は太く、長い。

生の芋茎というのは、私自身はあまり馴染はなかった。
大人になってから割烹料理店で初めて食べたと思う。
薄味で出汁を含ませてあり、乙なものであった。
いかにも、京風というような。

だが、はすいも。

こんなもの。
高知産である。

調べるとこれは、いわゆる芋茎とは若干種類が
違うようで芋を食べるのではなく、この茎を
食べるために育てられる、高知の伝統野菜とのこと。

調理法は皮をむいて、湯がき、煮含める、
でよいよう。

皮をむく。
どのくらいむけばよいのか、わからぬが、
とりあえず、むく。
青い部分がまだ多少残るが、こんなものでよいか。

鍋に湯をわかし、ゆでる。

火が通ればよいか。
あまりゆですぎも、いけなかろう。

冷水で冷やし、あげる。

出汁を取る。水は1L程度。

例のすえひろ通りの、安藤鰹節店のもの。
このくらいの色が出ればよいか。

全部は多いので、1/3程度。
味付けは、しょうゆ、酒、みりん、砂糖。
私としては、薄めにしてみる。

煮立てて、ゆでたはすいもを入れる。

このはすいもは、どうもやはり知っている里芋の茎、
芋茎とは違っている。
なにかというと、細かい空洞がある、のである。
ちょっと、スカスカした感じ?。

つまり、煮汁に沈まない、のである。

皿を落としぶたにし、沈める。

軽く煮て、冷ます。

一つ、ここで食べてみる。

あー、なるほど。
これ、やはり、普通のものではない。
一般の芋茎は、生からゆでたものは、ちょっと
ゼラチン質というのか、プニュっとした感じ?。

このはすいもは、まったく違う食感。
シャキシャキ、いや、ザクザク?。
中の管が意外にしっかりしており、こういう食感を
出しているよう。

ほう、こういうものか。

冷蔵庫へ入れて、翌日。

今日は、浅草ロックスの西友で鰹を一サク買ってきた。

冷蔵庫から、はすいもを出してみる。

だいぶ染みている感じ。

また、つまんでみる。

ん!。
味は染みてはいるが、食感は昨日の
ザクザクのまま。
まあ、こういうもの、なのであろう。

鰹は血合いを完全に取って、刺身に切る。

鰹は今日は、和辛子。
鮮度が申し分ない、とまではいかないが、
まあ、よし。

高知産、はすいも。
普通の芋茎を想像していただけに、ちょっと
肩透かし、というのか、なんとなく釈然としない。
まあ、はすいもには罪はないのだが。

そもそも、芋茎というものには、ほぼ味はない。
食感だけの野菜であろう。
それで、出汁を十分に含ませる。

そこに、ザクザクの食感が加わったもの。
酢の物にもするよう。この食感には合っているのかも。
こういうもの、なのであろうが、ちょっと不思議
体験である。

 

 

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雷門松喜黒毛和牛ロースステーキ

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3877号

6月13日(日)第二食

さて、日曜日。
今日は。
いや、今日も、というべきか、
内儀(かみ)さんの希望でステーキ。
肉が食いたいという。

で、あれば、ここのところの課題、で、ある。

うまい、ステーキ。
もちろん、輸入牛のステーキもうまい。
特に、私は米アンガス牛が気に入っている。

だが、国産?和牛?のちゃんとしたステーキが
食べたい。
もちろん、外に行けばそういう店はたくさんある。
だが、こんな時期でもあり、家で食べたい。

だが、意外にコレというものが、ないのである。
上野松坂屋の肉売り場には、国産?和牛のステーキ用肉は
あるにはあるが、なぜか皆、面積は大きいのだが薄い。
なぜであろうか。
頼んでも、切れないという。
不都合なのであろう。

牛肉ステーキは、中を半生、レアにしたい。
もちろん、薄ければ、すぐに火が通ってしまう。
ある程度の厚みがほしいではないか。

そこで、気が付いたのが、雷門の牛肉専門店[松喜]。
もちろん、以前から知っていてすき焼き肉は
ここと決めている。
専門店なので、ステーキ肉ももちろん扱っている。

と、いうことで、値段の安い方から順に試してきた。
まずは“国産”牛

これは、うまかったには、うまかったが、
和牛ではないのである。
やっぱり、今までそこまで厳密に意識していなかった。
和牛、黒毛和牛と、冠なしの国産牛とは、まったく別物。
むしろ、うまい輸入牛に近い。

そこで、次は、黒毛和牛のもも

これは、かなりよかった。
サシもちゃんと入っており、柔らかく絶妙。

実のところ、黒毛和牛でも、TVなどでもいわれる
ランク。A5、A4なんというあれか。
牛、個体によって、違っているのであろう。
黒毛和牛のももでも、かなりの差がある。
流石に[松喜]の看板で、黒毛和牛と名乗っている肉、
ももでも、そうとうなものであった。

さて、今度はその上、で、ある。
行ってみようか。

[松喜]にきてみる。

黒毛和牛、松坂としてある、表示はロースステーキ用。
見た目には、サーロインという感じの肉。
一枚、3500円也。
ただ、やっぱり[松喜]でも大きいが切り方が薄い。

肉の部位の呼び名は、難しい。
ロースというのは、広い名称で、その中に肩ロース、
いわゆるサーロイン、リブロースなどあるよう。
まあ、シロウトには理解不能だが。

ともあれ、おじさんに頼んでみる。
厚く切ってもらえないか。
倍ぐらい。2cm程度。

これを自分で半分に切って焼けばよい。

ショーケースに切って出ている肉は、松坂で
これしかない。
同等のもので松坂ではないが、切ってくれるという。
お願いして、切ってもらって、購入。
税込み7590円也。
[松喜]でいつも扱っている「田代牛」というよう。
オリジナルブランドで但馬牛のよう。

付け合わせは?。
隣のスーパーオオゼキ
じゅんさい!。ぽん酢しょうゆで酢の物。
うまそうである。
それから、やっぱりいつもの谷中。

帰宅。
これ。

開けると。

流石に、すごい霜降り。

そして、みずみずしく、柔らか。

切って、塩胡椒。

脂身からあぶらを出してフライパンへ。

なんだか、脂身からのあぶらだけでは、少ない。
フレンチ式の焼き方では多いあぶらで掛けながら焼く。
これが最近覚えたコツ、で、あった。
黒毛和牛だが、オリーブオイルを足す。
やっぱり、あぶらをスプーンで掛けながら、焼く。
中火から強火。

ひっくり返す。

ちょっと、足らなかったか。
強めの火を維持し、両面こんがり。

よい色まで焼いて焼き上がり。

じゅんさいと谷中も出す。

ついにたどり着いた、黒毛和牛ロースステーキ。

ビールを開けて、切る。

いい感じに焼けたのではなかろうか。
霜降りもいい感じ。

やっぱり、このくらいの厚みでなければ、こうは
焼けない。

これを極上というのであろう。
内儀さんも、よい脂、という。
流石に、松坂同等の黒毛和牛。

わさびをおろそうかと思ったが、塩胡椒で必要十分。

が、、これだけの脂だと、半分に切っても
かなりヘビー。年のせい?。
、、、やっぱり、適サシ、がよい、か?。

 


雷門・松喜

台東区雷門2-17-8
03-3841-4129

 

 

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そば上野翁庵/うなぎ小島町やしま

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さて、今日は二本。

3876号

6月10日(木)第一食

そば上野翁庵

天気がよく、もはや暑い。

ただやっぱり、外へ出ると湿度はそこまで高くはない、
のであろう。自転車で走ると気持ちはよい。

今日も、昼時をすぎてしまい、3時近く。
こんな時には、通しでやっている、上野のそばや
[翁庵]

ここも、このところお馴染み。

浅草通りへ出てもよいのだが、元浅草から
裏通りを通って、向かう。
下谷神社裏を通り、永寿病院の北から、
上野警察前の交差点に出てくる。

そして[翁庵]。
暖簾を分けて入ると、右側に帳場。
まだ、女将さんが陣取っておられる。
時刻を外れると、食券制ではなくなるのだが、
勘定を払い、ねぎせいろの食券を受け取る。

やっぱり、一番奥、調理場に背を向けた椅子に
掛ける。

ねぎせいろ。

緑がかったせいろのそばと、
そばつゆに小さなかき揚げとねぎ。

この組み合わせはここだけのもの。

そばつゆにかき揚げを浮かべたものは、かなり珍しいが
室町[砂場]

に天ざるという名前である。
他には私は知らない。

まったく不思議である。
上野[翁庵]は明治の頃だが、神楽坂[翁庵]の
分かれ、という。
神楽坂[翁庵]には、今はない。
以前あったのかもしれないが。
なんらか室町[砂場]から伝わったのか。

ともあれ。
どう食べてももいいのだろうが、
私は先に、少しかき揚げを食べ、そばをつける
場所を作り、そばをつけ、手繰る。

別段、びっくりするほどのものではないが、
うまいそばである。


6月11日(金)第二食

うなぎ小島町やしま

今日は、内儀(かみ)さんの希望。
うなぎが食いたいと。

連休に、駒形[前川]のやはり、持ち帰りを

食べている。

ご近所、お馴染みの小島町交差点脇の
[やしま]

ここのところ、持ち帰りを頼んでいる。

内儀さんが頼みに行き、夕方、約束の時刻に
ピックアップしてきた。

簡易のクーラーボックスになっている
バッグに入れてくれる。

白焼きと、うな重

白焼きには、なんと、皮をむいてすぐにおろせるように
した生のわさびをつけて下さっている。

内儀さんがおろして、用意する。

もちろん、まだ温かい。
いつも以上に、うまいような気がする。

やはり、生のわさびはよい。
また、これ、家に常備してあるものよりも
確実によいもの。
香り、辛み、ねばり、、やはりプロの使うもの、か。

それにしても、うなぎの白焼きというのは、
うまいものである。
毎度書いているが、うなぎの白焼きというのは、
例えば、東京以外でも食べられるが、やはり、
東京のちゃんとしたうなぎやのものにはかなわない。

東京人が長年愛してきた、乙で粋な味。
これに尽きる。

お重。

店とおそらく同じ、お新香付き。

こちらも[やしま]自慢のものといってよい。
べたべたしない、キリっと、辛口。
浅草らしい、江戸前の味。

やっぱり、これ、久しぶりだからかもしれぬ。
そうそう、この味。
夢中で掻っ込みたくなる。

今まで、うなぎは店で食べるもの、であった。
どちらがよいかと言われれば、やっぱり、
ほんとうは店で食べたい、と思う。

だが、待て。
考えてみれば、伝統的には、うなぎの出前というのは、
もちろん存在していた。
かの麻布[野田岩]は、六代目菊五郎宅に
出前をしていたよう。
落語では店で食べる描写がほとんどだが、
お客がきたり、それなりの家は取ることも
よくあることであった。
自分の子供の頃の記憶でも、出前で最上級の食い物
であった。
してみると、こんな家で食べるうなぎも
あり、か。
むしろ、贅沢、なのかもしれぬ。

ご馳走様でした。
おいしかった。


03-3851-2108
台東区小島2-18-19

 

 

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浅草寿ペリカンカフェ その2

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3875号

引き続き、浅草寿町の[ペリカンカフェ]と
[パンのペリカン]のこと。

ペリカンカフェ]でぶ厚いハムカツの
トーストサンドをコーヒーとともに食べたわけだが
なかなかよかった。

うまかったのも然りなのだが、お店の人々が
かなりちゃんとしていた、ということに、少なからず
関心をした。

そこで[ペリカン]を扱った映画と、書籍があることを
知って、さっそく観て、読んでみた、のである。

映画は2017年公開の「ペリカンパンのはなし」

「74歳のペリカンはパンを売る」

2017年 二見書房 渡辺陸、森まゆみ平松洋子、鈴木るみこ、甲斐みのり著。
渡辺陸氏は、四代目現店主。森まゆみ氏はご存知「谷根千」を
主宰されていた作家。

そもそも[パンのペリカン]について最初に書かねば
いけなかろう。

書籍は、流石、森まゆみ先生が関わられており、かなり
これもちゃんとしている。この店を取り巻く戦前からの
東京の社会背景から描かれている。

四代目当代店主渡辺陸氏は1987年生まれで今年34歳。
お若い。

創業は1941年(昭和17年)、田原町交差点そばの
現在と同じ場所。当時渡辺パン。創業者は陸氏の曽祖父。
太平洋戦争開戦の年である。
空襲で浅草も焼野原になるが、1949年(昭和24年)「三河屋パン」
として営業再開。

現在[ペリカン]は食パンとロールパンなど2~3種類の
ごく少数の製造販売をしているが、これは1952年(昭和27年)頃
には始まっている。
そして、浅草をはじめ東京の喫茶店、ホテルなどへの卸し
中心の店となる。

1957年(昭和32年)店名を[ペリカン]と変更。
この年、二代目多夫(かずお)氏、大学を卒業し結婚。
ペリカンは多夫氏のニックネームであったそう。

作家吉川英治氏宅にも配達をしていたという。
今となっては閉店してしまったところばかりだが、
かなりの数の有名店に卸していた。
今もあるところでは、人形町の喫茶去[快生軒]。
私も入ったことがあるが、トーストが有名。
向田邦子先生が通われていた。
浅草、ひさご通りの行列店フルーツパーラー[ゴトー]の
フルーツサンドなど。
また、ご近所、とんかつ[すぎ田]のパン粉も
ペリカン]のものだった。

実質的に、今の[ペリカン]を確立したのは
この二代目の多夫氏といってよさそう。
販売先を開拓する営業は二代目が担っていたよう。
そして、この方のキャラクター。
人あたりがとてもよかった人。
町のパン屋だが他の店と争いたくないと、卸に
特化した営業方針を確立し、続けた。

そして、時代はバブル、喫茶店の減少。
必然的に、業務用の卸は減少。
店頭販売、家庭への宅配もしていたが[ペリカン]の
商売としてはかなり苦しかった頃。
危機といってよいだろう。

2008年(平成20年)多夫氏死去。猛氏が三代目に。
現四代目陸氏[ペリカン]入社。

復活のきっかけは、山本益博氏が週刊文春に書いた
こと、という。これがこのあたりのよう。
そして「アド街」などにも取り上げられ、知る人ぞ知る
から、名実ともに有名店となり、行列ができ、
店頭売りだけで十分に商売が成り立つように。

2014年(平成26年)陸氏、四代目を継ぐ。
2017年(平成29年)[ペリカンカフェ]開店。

ペリカン]のパンの特徴はモチモチ。
これは多夫氏が確立したもののようで、パンにモチモチ
という言葉を使ったのは初めてではないか、と。
水分が多く、重い。
昨日も書いたが、パンを表現する言葉を持たない
私など、言われれば、そうか、と思うが。

そこで[ペリカン]とはどんな店か、このことと、そこから
考えたことを書いてみる。

映画を観ても、本を読んでも[ペリカン]を表現するのに、
共通してなん度も出てくるのは「正直」「真面目」という言葉。
「正直」「真面目」にパンを作り、売る。
この店、これに尽きるのではなかろうか。
これは、二代目多夫氏に負うところが多そう。
そういう方だったのであろう。
カフェで感じた“ちゃんとしている感じ”も
これではなかろうか。
現主人である陸氏も、お客様がどう感じているか、
どう見えているかが大事、と言っている。「客商売」という
ことである。あたり前のこと、であるが。

しかし、品質がよくて、うまく、かつ正直であれば、
商売はうまくいく、というほど、甘くはない。

卸に特化した商売は、喫茶店が減って危機に瀕したが、
マスコミに取り上げられ店売りだけ食えるまで復活した。
この時、閉店していても不思議ではなかったろう。
食い物商売は食いっぱぐれがないともいったが、
一方で、水商売、という言葉もある。
時代、人気、そんなもので浮き沈みをする。
これは、陸氏も語っているが、運がよかったのも
事実であろう。その後の下町、浅草ブームも影響してよう。

ただ、こんなことを思うのである。
浅草には老舗は、江戸創業からそれこそ、ごまんとある。
それぞれ、それぞれの分野でそれぞれの時代、努力して
店を守ってきている。残っているというだけで、
もの凄いことであることが[ペリカン]の例をみても
よくわかる。

だが[ペリカン]の「正直」「真面目」「お客を見る」
というのは、浅草でも、特筆すべき点ではなかろうか。
それが従業員、店員、一人ひとりまで、ある程度
行き渡っているように見える。

そしてこれは浅草の老舗に限ったことではないことに
気が付く。

「お客を見ていない」有名店のいかに多いことか。

そんなところの多くは、決まって居心地がわるい。
名が知られていてうまいと評判、うちはこうです、
といった高飛車な態度。それでも、老舗であれば看板で、
あるいはグルメブームで商売は成り立つ。
私などどんなにうまくとも、一度そんな思いをすると、
二度と行きたくはない。それは「客商売」ではなかろう。

今、コロナの時代皆苦しいことは十分にわかる。
ただ、元々浮き沈みの多い“水商売”であったことも事実。
一旗揚げたい、儲けたい、もよいのだが、
人気を出すために「正直」「真面目」ではないことを
考えてはいまいか。「お客を見ているか」。

まあ、そんなことを考えたのである。

さて。これは[ペリカンカフェ]の昨日。

ポテサラ、ツナ、玉子のロールパンにコーヒー。
一つ、300円ほどなので、コーヒーも入れて1500円と
ちょっと高いことになってしまった。
具の味は、私の好みとしてはちょっと薄かった。

 

 

ペリカンカフェ
https://pelicancafe.jp/

台東区寿4-7-4
03-6231-7636


パンのペリカン

03-3841-4686

浅草寿ペリカンカフェ その1

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3874号

6月9日(水)第一食

サンドイッチを食べようと考えた。

たいていは、コンビニのサンドイッチを
買いに行く。

最近はコンビニのサンドイッチはかなりうまい
のではなかろうか。
なんら問題はない。

一方、サンドイッチはブームである。
古くもあるが、新しくもある。
バエるフルーツサンドも然り。
また、歴史があったり、新しく様々特徴を
もって流行っている専門店も少なくない。

また、もちろん、パン自体も長らくブームが
続いているといってよいのだろう。

先に書いたように、私はコンビニのサンドイッチで
十分うまいと思っているし、パンも特にこだわりは
ない。
不思議に思われるかもしれぬが、
料理とは別なのである。
ついでにいうと、米、ご飯も同様。
もちろん、好き嫌いはあるが、ご飯もパンも
深く掘り下げたいとは思わない。
自分でも理由はよくわからないのだが。

兎にも角にも、そんな感じなのである。

それで、表題[ペリカンカフェ]。

その前に[パンのペリカン]であろう。
ペリカンカフェ]はパンの老舗[ペリカン]の
経営するカフェ。

どちらも浅草寿町、国際通り沿い。
私の住む、元浅草のお隣。
まさにご近所といってよい。

浅草の[パンのペリカン]。
東京でまあ、知らない人は少ないだろう。
老舗であり、有名店である。
私ももちろん、昔から知っている。
だが、そんなことなので、買いに行こう
という気にはまったくならず、縁がなかった。
また、そこが近年開業したカフェも同様。
列になっているのを見ると、なおさら。

もっというと、お洒落なカフェ、なんというのにも
少なからず抵抗がある。いろんな意味で、がっかりさせられ
たくない、と、いう思いが先にくる。
天敵、というのは言いすぎだが、できるだけ近寄らない
ことにしているのが偽らざるところ。

しかし、今日、こんな時期でもあり、コンビニに
サンドイッチを買いに出るのであれば、近いし、
ちょっと試しに行ってみてもよかもしれぬ、と考えた。

営業時間は、朝9時から夕方5時まで。
さすがにパンやさん経営、朝が早い。
3時ごろ。
ちょうどいいだろう。

きてみると、空席もあり、すぐに座れた。
だが、やはり満席に近い。
人気の様子。

メニューを見る。
“カフェっぽい”ものもあるが、見つけた、
ハムカツサンド、750円也。
これ、食べてみよう。
それから、ホットコーヒー470円。
まあ、高くもなく、安くもないか。

きた。

アップ。

パンは耳つきでトーストしてある。
キャベツとソースのかかった厚いハムカツ。

食べると、これは見た通り、うまい。

食べ応えも十分。

パンは炭で焼いている?。
炭焼きトースト、というメニューもあるようで
もしかするとそうかもしれぬ。

びっくりするほどではないが、パンもうまい。
これが、名にし負うペリカンの食パン、であるか。
普通にうまい、という表現が適切であろうか。

が、ここで、ハムカツサンドを食べて
コーヒーを飲んで、感じたのは、この店、
なんだか、ちゃんとしているということ。

まあ、接客ということにはなろうか。

こんな時期なので、検温、アルコール消毒など
お客に求めるが、まあ、言い方なのだが、高飛車な、
ともすれば、かなり感じのわるい想いを抱かせる店もある。
お客への心配りというのであろうか、そういうものが
十分に感じられたのである。

また、私のいる間に、白髪のマダムがなにか届け物にきた。
もしかすると[ペリカン]の女将さんであった
のではなかろうか、皆、口々にお疲れ様です、と、
声を掛けていた。これもなにか、ちゃんとしている感じ。

ほう、なるほど。
ペリカンカフェ]こういうところであったか。

ハムカツサンド、というのもまた、いいではないか。

店の外の看板には、ハムカツサンドはやはり
人気メニューと書かれていた。

人気老舗パンやが開いた、お洒落なカフェ、
だけではない。
そんな感じか。

店にも貼られていたが「ペリカンパンのはなし」という
本が出されている。

また、それより前に「74歳のペリカンはパンを売る」

という映画も作られていた。

どちらも知らなかったのだが、この二つ、映画はアマゾンプライム
すぐに観られ、本は取り寄せ、読んでみた。

 

つづく

 

 

ペリカンカフェ
https://pelicancafe.jp/

台東区寿4-7-4
03-6231-7636


パンのペリカン

03-3841-4686

 

 

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