浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。
断腸亭料理日記本店
 

断腸亭落語案内 その41桂文楽 つるつる

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引き続き、文楽師「つるつる」。

旦「さあ。かまわずな、俺がここへ、出そう。」
  (財布を一八の前の畳の上に置く。)

  (芸者に向かって)
八「どうです!、ね。
  大将てぇものは、こういう人なんです。
  中座する、幇間の前へ、
  お前は今夜、身祝いがあるから、ズバリっと、ご祝儀を下さる、と。」
  (一八、財布を手に取る。)
旦「お前(めえ)にやったんじゃねえや。
  ただ、なんの気なしに、ここに出してみたんだ。」
八「あ、そーですか。
  これ、下すったんじゃない。なんの気なしに、出しただけ。
  おやおや。
  そーかー、なんだー。」
  (一八、放り出す。)
旦「なんだ、放り出しゃぁがって。
  これでお前のもの買おう。」
八「売りますよ。なんでも。
  羽織、着物、帯、みんなあなたにいただいたもの。
  売るものはなし。」
旦「そんなもの買うんじゃねえ。
  お前(めえ)の頭、半分買おう。」
八「え?」
旦「半分、坊主になんねぇ。二十円やるから。」
八「半分坊主ぅ~~?!
  へ、へ、へ、へ~。
  嫌、てぇわけじゃないんですよ~。
  普段なら、飛びつくんだよ~、あーた。
  今夜だけはいけないよ~。先方、行くんでしょ。
  一八っさん、あなた、頭半分、どうしたの?、って。
  二十円で売ってきた、って、、、。」
旦「色っぽい野郎だね、こいつぁ。
  下がって十両。(円を、両という言い方があった。)
  お前の目の玉に、親指突っ込もうじゃねーか。」
八「眼つぶし~?御免こうむりましょう。」
旦「下がって、五両だ。
  どうだい、一つ、生爪はがそう。」
八「痛いよ、あーた。
  あーたは、痛い芸が好きだねぇ。
  なんか他にないすか?。」
旦「下がって、一両!。
  手前(てめえ)一つ、ポカ~~ンと殴ろう!。」
八「いよっ。
  うけ合いましょう。
  うけ合うよ。
  ポカ、ポカっとくると、二両でしょ。」
旦「そーだ。」
八「ポカ、ポカ、ポカ、っとくると三両。」
旦「そーだ。」
八「こーなると、私も商法ですから、一個でも間違うといけませんから
  あたしは、算盤を持つよ。
  あーたがねー、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカっとくると、
  あたくしは、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、っと
  ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、ポカ、
  パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、パチ、
  ってね、ぶたれ通しで、、死んでいくら。」
旦「死んじゃっちゃ、しょーがない。
  こんな欲張った奴ぁねーな。」

  (一八、芸者の方を向いて)
八「は~?なんすか?、はあ、はあ、はあ。あー、さいですか。ありがとう存じます。
  (旦那へ)
  へへ~。大将、仲間ぁありがたいですな。
  はる子姐さんのご忠告。大将は、力自慢だからぶちどこをうかがえって。
  どこをおぶちになります?。
  仮にでも、一両でぶつんだからな。
旦「だうだい、最初、目と鼻の間、行こうじゃねーか。」
八「それじゃ、一個でまいっちゃうよ~、いけませんよ~。
  五十銭でようがすがね、肩を。」
旦「按摩じゃねーや。ばーか。」
八「踵が二十五銭!」
旦「そんなのいけねえ。」
八「拳固を見ただけで、ただの五銭。」
旦「ふざけんな、こん畜生。!
  このコップで一杯呑め!。一両やるから。」
八「ほーほー、一杯呑みの一円、へ?息を付かずに一杯呑みの一円いただき?
  あ、はは~。
  やるねー、あーた。
  へ?、現金取引でしょうな~?。
  いけませんよ、この前も、こんな大きな祝儀袋、いただいた。
  ありがたいと思って、家ぃ帰って開けてみると、絵葉書が出たよ、
  あーた。ありゃーいけないよ。
  よろしゅーございます。なにごとも営業でございますから。

  はる子ねーさん、お聞きの通り。
  今日(こんち)はお客ですから。
  (コップに注いでもらいながら)
  そこんとこ、按分(あんもん)なすって、、
  今日は、八分目、、、ってとこで、、、

  あーーーーーーー、とっ、とっ、、、あーーーーー、
  驚いたな、こりゃ、山盛んなっちゃった。

  姐さん、申し上げたでしょ。
  今日は、八分目でって、
  (旦那に)
  大将、苦情いってんじゃないですよ。
  ただ、一杯になったってことを申し上げてるだけの話なんです。
  もう、口からお迎えってやつで、、、。

  (グビグビと呑む仕草)

  フー。
  いただきました。」
旦「偉いなぁ~。
  やるぞ!。」
八「へい!。ありがとう存じます。
  (手を出す仕草)
  右まさに頂戴仕りました。受け取りは差し上げません。

  へい。こんだ、てるちゃん?
  てる奴さん。お酌。

  姐さん、あーた、もうだめ。
  近所にいますよ。お座敷い出たら、お互いに助けたり、
  助けられたり。よーすか!。

  あ~~~~~~~~、
  あーた、押すねー、
  
  (旦那へ)
  いえ、苦情を言ってるじゃないんですよ~。
  
  (芸者てるちゃんへ)
  てるちゃん憶えといで。
  どうして、そいうことすんの?。
  
  頼んでんのに、こいうことすんの。
  女の子てぇのは意地の悪いことすんだから。
  どういうわけのもんなんだか。
  人の困んのを喜んで。
  よこざんすよ。そーいうことをするんならするで。

  (んぐ、んぐ、、、、呑む。)

  ふーーーー。
  
  へ、へ、へ、、、。いただきました。」

 

つづく