浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



銀座INZ・スパゲティー・ジャポネ

dancyotei2018-07-26


7月24日(火)昼


有楽町で昼飯。


近頃有楽町に昼、というのはあまりないのだが
どこがよかろうか。


交通会館地下の、ちゃんぽんはどうであろうか。


が、きてみると、ない。
なん回かきているが、店名も覚えていない。
場所に自信もないが、ぐるぐるまわってみても、それらしい店はない。
はて、なくなってしまったか。


調べると[桃園]という名前で昨年11月に閉店していたよう。
ご存知の方もあるかもしれぬ。ご店主高齢で、とのこと。残念。
閉店を告知する貼り紙では、昭和25年、この交通会館の前身
(というのか)有楽町駅前の「すし屋横丁」からの店であったのがわかった。


この界隈、かなりディープな歴史を持っている。
「〜占領軍は有楽町の第一生命をGHQ(総司令部)とし、周辺の焼け
残ったビルを接収しました。オフ・リミット(日本人立ち入り禁止)
のクラブ、キャバレーが軒を連ね、 闇物資横行や闇酒もガード下の
飲み屋でひそかに飲み交わされていました。その結果、東京中でも
開発が遅れた地域となりました。 また、占領軍相手の娼婦の存在や
すし屋横丁も、当時を象徴する土地柄〜」
「イトシア有楽町歴史絵巻」よりより


まさに有楽町の戦後史の一コマである。
先日の新橋駅前ビルも然りだが、こういう味のある店は
もう数えるほどしか残っていない。今のうちに気になったら
行ってみておいた方がよいかもしれぬ。


ともあれ、
どうするか。


カレー?。
朝、自宅で作り置きのジャワカレーを食べたところ。
この暑さで、洋食という気分でもないし。


え?!。
もしかして[ジャポネ]?


交通会館直近で、これ!という店は[ジャポネ]しかない。


しばらく足を向けていなかったが、
ちょっと見るだけでも、見てみようか。


交通会館から通りを渡って、インズ。
入って、通路を折れて、、まさかこちらはなくなっていない
よな。


かなり久しぶり、なのである。


おお、あった、あった。


以前の通りの行列。
12時5分前、列は、カウンター奥の端から始まり、カウンタの長さ
さらに折れて、5人ほど。
この列だとどのくらいかかるのか。
まあ、他にアイデアもない。時間も幸い少しある。


列に着く。



行き付けらしき、サラリーマンが大半だが、有名店なので
物珍しさできた若い人もいる。


しっかし、昔のまま。


この日記のバックナンバーをみてみると、よくきていたのは
2009年あたりで、9年も前である。


メニューも全く変わっていない。
列も店の雰囲気も変わっていない。


オープンは1985年、昭和55年(食べログ)とのこと。


首都高(正確にはこの部分は首都高とは別の組織の東京高速道路
という会社。)ができたのが昭和30年代。
その高架下であるインズも同時期に有楽フードセンターという
名前で開業しているようである。


私自身、インズのテナントがどういう歴史を取ったのか
郊外に育ったため銀座などには縁もなく、まったくわからない。
ある程度このあたりを意識するようになったのは社会人に
なってからのこと。
昭和55年というと私は17歳で高校生。
それでもまだ、銀座には縁はない。


座るのに15分から20分程度かかったか。
注文はむろん決めてある。
超定番のナポリタン、レギュラー。


ここは座っても、作る順番で多少時間がかかることもある。


出てきたのは、列についてから、30分程度。


これが[ジャポネ]のナポリタン。レギュラー。



この上に、大盛、横綱、さらに親方と、もうわけが分からない
くらいの量のあるものまである。


この写真では縮尺がわかりずらかろうが、このレギュラーでも
通常の1.5倍はあるであろう。


正しい太麺のスパゲティーナポリタン。
タバスコはやめたが、パルメザンチーズと呼ぶのは
遠慮した方がよさそうな粉チーズをかけて、食べる。


具はハムではなく、なぜか、海老。
そして青味はなぜか、ここはナポリタンに限らず
すべて小松菜。
酸味は強すぎないが、こってりとしたケチャップ。
このこってりは、マーガリンであったと昔聞いた覚えが
ある。


不思議と、うまいんだな、これが。


ナポリタンレギュラーで500円。盛が多くて安いのが
ここの魅力ではあるが、やはりうまい、ということ。
これがこれだけ人を集める秘密であろう。


太いスパゲティーは今はハナマサでも売られているので
買ってきてゆで置きをすればよいが、この味は、
自分ではできそうで、できない。


まさにジャポネマジック。


うまい、うまい。


変わらない味と雰囲気にとても安心。


ここは戦後すぐではないが、やはりまだ昭和の香り、
といってよいのであろう。


大手町にやはり、昭和のスパゲティーの店で
リトル小岩井]というのがあって、こちらも有名ではある。


少し前からコピーをしたようなところもできているが
やっぱり歴史を積み重ねたところには不思議と勝てない。


有楽町[ジャポネ]、東京昭和遺産としてこのまま
ずっと続いてほしい店である。








03-3567-4749
中央区銀座西2-2先 銀座インズ3 1F