浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



池波正太郎と下町歩き 9月その8


NHKの『講座』「池波正太郎と下町歩き」の9月も

浅草寺境内を抜け、やっと最終目的地、天ぷらの

中清に近付いてきた。










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江戸の地図



中清は、池波先生、ご幼少のみぎり、お祖父様に連れられて
きてから、浅草で天ぷらといえば、ここ、という。



仲見世から伝法院通りに出て、オレンジ通りをすぎて、
公会堂を左に入り、右側3〜4軒目、さらに右に入る、
ちょいと、趣のある石畳の道がある。
ちょっと表からはわかりにくいが、これが、中清の入り口。


石畳は10m程度であろうか、植え込みがあり、
灯籠なども置かれた、奥正面が玄関。
建物自体は、ちょっと蔵造りのようにも見える二階建て。
ここは創業が明治三年といい、浅草の天ぷらや
の中では、古株の方だろうが、いつの建築なのか。
このへんも、震災、戦災では焼かれているだろうし、
戦後の建築かもしれない。


表の公会堂前の通りからは、小さな看板が出ているだけで、
知らないと、入りにくい雰囲気を醸し出している。


皆さんを引き連れて、どやどやと、石畳を通り、
格子を開ける。


格子の前には、本日貸切、と、書かれていた。
どうやら、我々25人で貸切のようである。


入り、お姐さんに、名乗る。


「こちらへ」というので、案内を受け、
左側の下足から、私は雪駄を脱いで、あがる。


座敷は、あがってすぐ右側の大きな座敷。
この店は、外から見ると古そうな造りだが、
中は、きれいで明るく、真新しい造作。


縦に長く並べられたお膳。
片側は、大きな錦鯉のいる池もある、大きくはないが、
落ち着いた見事な中庭に面している。


ここはこうした座敷以外にも、テーブル席があり、
座敷はコース、テーブルは定食という区分けになっている。
雷神揚げという大きなかき揚げが名物だが、
これは大人数のコースにはつけられず今回は残念ながら、
なし。


今日は7000円のコース。


前菜





おひたしに、左が秋刀魚のつけ焼き、右が鮪の煮たもの。
尾花が秋らしい。



すまし汁




舞茸。


刺身。





天ぷら。





ふたの付いた、塗りの箱で出てくるのが、
老舗らしい味。






さいまき海老、メゴチ、穴子(?、、きすであったか?
けっこう呑んでいて、憶えていない、、、。)。


江戸前の種で、江戸前の厚めの衣。
比較的、軽めに揚げられているか。
むろん、揚げ立てで、うまい。


(これに酢のもの、ご飯、味噌汁、お新香、水菓子。)



今回も、私は随分と汗をかいたので、がんがんビールを
呑んでしまった。



前回、慶楽で、今度は中清で座敷なので、落語でも
聞いていただく、というのを、皆さんの前で、口走って
しまっていた。
それで、食べ終わると、皆さんから、「ヤレ!」、との声。


あ〜、忘れて下さっていれば、、と、期待していたのだが、、。
過去、呑んで話して、滅茶苦茶になったこともあり、
落語を話すのであれば、呑まない、と、決めていたのだが、、。


この期に及んで、演(や)らないというのは、
男らしくもないし、あり得なかろう。
覚悟を決めて、上座へまわり、座布団に座り、一席。


まあ、一席といっても、すぐにできるのは、
二席ほどでそのうちの一席。
以前に、自分の会をこの日記の読者の皆様に告知し、
催したことがあるが、その時にも演っている、黄金の大黒。


25人という人数の前で演るのは久しぶり。


うまい下手はともかく、素人の最低限の注意事項として
師匠の志らく(師)にいわれた、『とにかく大きな声で』を、
頭に置いて、なんとか、最後まで、たどり着いた。


(この、大きな声では、まったくもって、基本である。
素人が一人で、あるいは数人を前に稽古をしたり、
軽く聞いてもらう、ということばかりをしていると、
忘れてしまいがちなことなのである。


プロはむろん、例えば、末広亭程度の都内の普通の寄席の広さであれば、
マイクなしで楽に聞こえる声を出している。


大きな座敷で、一番奥の人まで、声が届くように、話す。
師匠などは、後ろの壁に向けて喋り、奥から聴衆をこちらへ
両腕で引き寄せるぐらいの気持ちで、喋る、といっていたのだが、
そんな感じ。
少しでも高くなった舞台でもあればよいのだが、
今日の場合、なにもなく、座布団に座り、皆さんと同じ目線で、
これをやるのは、、、、。



まあ、言い訳、ゴタクは、やめよう。


一番奥の方の顔を見て、声が届くことを心がけた。
話し終わって、確認をしたら、一応聞こえていたとのことで、
少し安心。
あとで振り返ると、トチリ、言い淀み、上下の間違い、などは、
むろん、たくさん。飛ばしたシーンもあり、、、。
しかしまあ、一応、笑って下さってもいたので、
座興としては、ある程度の役には立ったか。


勘定をし、皆さんで外に出て庭を見せていただき、
また、池波先生がいらしたときには、この部屋で、
という、やはり庭に面した座敷を外から見たり。
(この部屋、よいのである。この部屋指定で、
予約ができないものであろうか。)


この中清という家、天ぷらや、と、いうよりは、
今は、料理屋、料亭といった方がよいのかもしれぬ。
少し前まで、浅草にはこういう中庭のあるような、
今いう、料亭のような造りのところは、よくあったと思われる。
すき焼きの今半(新仲見世)なども、中庭があったか。


中清の女将さんに送られ、皆さんもここで解散。


お疲れ様でした。



ちょっとだけ、明日もつづく、、?。









中清




東京都台東区浅草1?39?13
03(3841)4015(代)