浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



三筋・天ぷら・みやこし

4155号

8月19日(金)第一食

さて、今日は天ぷら。

天ぷらといえば三筋町の[みやこし]。

[みやこし]以外には考えられない。

むろん、ご近所ということもあるが、
もうなん年も、この系統の天ぷらやとしては
ここ以外には行っていない。

“この系統”と書いたのは、やはりご近所で
よく食べている蔵前[いせや

の系統ではない系統の東京の天ぷらやとしては、
ということである。

お分かりになろうか、この違い。

時代、歴史的に違っているという言い方も
できると思われる。

東京の天ぷらは以前は、皆、[いせや]の系統
であったと考えている。
この系統は比較的、衣が厚め。天つゆは甘辛の濃いめ。
天丼がうまい。

浅草の天ぷらやは、ほぼこの[いせや]系統。

これに対して[みやこし]の系統は衣は比較的に
薄め。カウンターが主で揚げたてを目の前で
出す。塩でどうぞ、というのもこの系統。

今、東京全体で天ぷらやといえば[みやこし]の
系統の方が多いだろう。

歴史的には、明治の終わり頃、この目の前で揚げたてを
すぐに出す形式が現れた。
カウンターだったり、お座敷天ぷらなどとも言われた
ようだが、座敷の中に揚げるスペースがあって
職人と揚げ鍋があり、目の前で揚げたてを出して、
すぐに食べる。
高級な天ぷらやは、次第にこの形式に変わっていった。
浅草などの老舗天ぷらや、以前の形式を残している
ということになろうか。

天ぷらを揚げる技術としては、おそらくこの時点で
大きく変わったのであろう。
それ以前はしっかり火を通す。
それ以後は、中を半生に仕上げる。
むろん、種にもよろうが。

最近、この系統では、さらに進化している技術
もあるようである。池波先生御用達で有名になった
山の上ホテル、銀座の[こんどう」などなど。
30分かけてゆっくり揚げて、ぶ厚いさつまいもを
揚げるといったものがある。
他にも新しい技術はあるのであろうが、
私は行ったこともないので知らないが。

ただ、私自身はあまりこの手の天ぷらに興味がない
のが正直のところ。むろん値段も格段に高いが。
東京の天ぷらは[みやこし]系統の技術が洗練、
熟成され最上のものを追求していくのだろうが、
それで十分。
30分かけて揚げたぶ厚いさつまいもはうまい、ので
あろうが、天ぷらである必要があるのか?。
江戸前の魚をうまく揚げるのが東京の天ぷら。
それでよいと思うのである。

閑話休題

ご飯のついた定食、特、7,700円也。

カウンター上の白い紙がのせられた皿の上。
お馴染み、海老から。

小さい車海老、さいまき海老。

最初は塩。

もう一匹は天つゆ。

そして、頭が二つ。これもお決まり。
これも、むろん塩。パリパリでうまい。

次は、いか。

あおりいか、といって出された。

めずらしい。
ここでは、四季を通して江戸前天ぷらの通例通り、
すみいか、なのだが。

真夏はすみいかは産卵期が終わり、鮨やでいう、
新いか、小さな子供が出回り始める頃。

さすがに数センチのすみいかは天ぷらにはできないか。
そういえば、8月にここに来たことがなかったかも
しれない。

次は、きす。

どれもそうだが、しっかりした衣で揚げられている。
これがプロの仕事。

小鮎。

レモンを絞って、塩で。
ほろ苦くて、うまい。

銀杏。

まだ青い。新ものであろう。

穴子

これも定番中の定番。
海老と穴子のない、江戸前天ぷらは存在しない。

穴子も天つゆで。
表面カリカリ、中ほかほか。
うまい穴子天。

野菜天。

しし唐、蓮根、なす、アスパラ。

最後の小柱かき揚げは天丼。

お新香と刻んだ三つ葉の浮いた蜆の味噌汁。

これで必要十分の江戸前天ぷら、であると。

 


みやこし

台東区三筋2-5-10 宮腰ビル1F
03-3864-7374

 

 

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