浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



四谷・しんみち・支那そば・こうや

5月18日(火)夜


出先の麹町で、少し早いが、仕事終了。


麹町でも、新宿通り沿い。


なにを食べようか。
一先ず、四ツ谷駅方面へ歩く。


昼間はだいぶ暑かったが、
この時間には、さわやかになっており、
ぶらぶら歩くにはちょうどいい。


この界隈なら、番町、と、いうのもあるが、
やはり、四ツ谷方面が選択肢も多いだろうし、
私には、馴染み深い。


そうだ。
しんみち、の、中華、こうや、に、久しぶりにいこうか。


若い頃は、オフィスからも近いので、
だいぶこの店にはお世話になった。


私が知っている頃、学生から社会人になった頃、そう、
20数年前には、この店はもう既に老舗、有名店、人気店として
この場所にあった。


いつ頃からあるかというと、なんでも最初は屋台であったらしいが、
1964年、ということで、ほぼ私と同い年、今年で46年。


味が変わった、などと、いろんなことをいう人はいるが、
それでも今もって、うまい、個性のあるラーメンや、
あるいは、中華や、であると、いってよかろう。
つまみもうまく、呑めるし、ラーメン、特にわんたん麺が
格別、で、ある。


また、ここから分かれた、飯田橋高はし
こちらは麺だけだが、やはり、うまい。


駅を越えて、外濠通りも渡り、しんみち、に入る。


この、しんみち、も古いが、少しずつ、変わっている。
居酒屋のお兄ちゃんの呼び込みもにぎやか。


路地を越えて向う側へ。
以前は、この角に、有名鮨や、纏があったが、
ここに三井アーバンホテルができた関係なのか、
新宿通り側に移っているよう。


真っ直ぐいって、右側。
店のドアも開いており、そのまま入る。


まだ少し早い。
カウンターがあいており、座る。


瓶ビールをもらって、
看板のつまみ、しょうゆで煮た玉子、醤蛋と、
同じく、手羽を一つずつもらう。


ビールとともに、お通しがくる。
肉団子の入った小さなスープ。


ここで呑むのは、随分と久しぶりだが、
昔からお通しは、これであった。
スープには、薬味にみじん切りの香菜(チャンツァイ)が
のっている。


そうそう。
これ。


今は、香菜、パクチーコリアンダーは、
東京でも、あたり前、の、ものになっているが、もしかすると、
20数年前、初めて私が食べたのは、ここだったかもしれぬ。
(あるいは、今はなくなっているようだが、
同じ頃、渋谷の台南担仔麺であったかもしれぬ。)


今でも私は、さほど得意ではないが、
独特の青くささに、驚くとともに、辟易したものである。


醤蛋と、手羽





いわゆる、煮玉子、と、手羽
煮玉子も、ラーメンやでは、まさに、今や、あたり前のもの、
で、あるが、つまみとして、こうして出すところは、
やはり、昔はなかったように思う。


そういう意味では、この店は、先駆け的な存在であった
といってもよいのだろう。


ビールを呑み終わり、わんたん麺を頼む。





腹に染みわたる、熱い塩味のスープ。
これがうまい。


それに、プリプリのわんたんが、どっさりのって、
麺と合わせて、そうとうに食べ応えがある。


うまかった。
満腹、満腹。


勘定をして出る。


出る頃には、もう満席に近くなっていた。
今でも人気であることは、変わっていないのだろう。


東京のラーメンや事情は年々変わり、
入れ替わり立ち替わり、新しい、工夫をされたラーメンやと、
ラーメンが生まれている。


それはそれで、おもしろいし、たのしい。
どんどん新しいうまいラーメンが生まれてくるのは
大歓迎、で、ある。


この店も、ある意味、東京のラーメン、いやラーメンだけではない、
中華やの、ある一時代を作り、その後の東京のラーメンやに、
様々に影響を与えたところといえるような気がする。


別段、こうやは、変わる必要はなかろう。
今もって、うまいものは、うまい。


新しい試みをしている今のラーメンやと同列に
論じるべきところではなかろう。


四ツ谷しんみちの名物として、いつまでも
この安心できる味で、ここにあってほしいもの、で、ある。





新宿区三栄町8
03-3351-1756