11月10日(火)夜
だいぶ寒くなってきた。
それもあるのだが、昨日、むろん新型、ではなく、
季節性の方の、インフルエンザの予防接種を受け、
ちょっと、だるいし、寒気がする。
早く帰って、温かいもの食べよう。
18時すぎオフィスを出る。
鍋か。
鶏皮で出汁を取った、大根の鍋。
あるいは、同じく、大根だが、浅蜊むき身の鍋。
どちらも、池波レシピ。
そして、どちらも簡単で、うまい。
どちらにしようか。
鶏の方は、鍋ではないが、少し前に内儀(かみ)さんが
近いものを作っいたので、食べている。
浅蜊にするか。
牛込神楽坂駅隣のスーパーに寄る。
ここには、そこそこの確率で、むき身がある。
きてみると、やっぱりあった。
2パック。
1パック、300円を超えているので、
そこそこ高価なものにはなる。
大根は余らせても仕方がないので、半分。
帰宅。
やっぱり、燗酒を呑みたいのだが、
鍋と燗酒、これはほんとうは、長火鉢。
昨年、長火鉢は、ネットオークションで
入手し、私の隣にある、のだが、実際に、
火を入れたのは、さほど多くはない。
なんでかといえば、長火鉢というのは、
使ってみると、けっこう面倒くさい、でのある。
長火鉢と普通の陶器の火鉢と最も大きく違うところは、
銅壺がある、ということ。
そして、これは利点でもあった。
むろん、木でできていたり、抽斗(ひきだし)があるという
違いはあるのだが、長火鉢は、その銅壺という、
銅製の水を貯められる、アタッチメントのようなものを
灰がある部分に据えて使うのである。
この銅壺の一部分、五徳になっているところに炭をいけ、
鍋をかけ、その周囲の水を貯めた銅壺を温め、湯にし、
別の穴から、その湯に徳利を突っ込んで、燗をつける。
よって、鍋や鉄瓶が一つしかかけられない、通常の三本足の
五徳を使う陶器の火鉢では、お燗つけと、鍋は同時にできないが、
長火鉢では、同時にできる。夢のようだ、と、
思っていたのであった。
(上のリンクのページで写真を見ていただければ、
一目瞭然、で、ある。)
しかし、この銅壺というのは、実際に使ってみると、
いくつかの問題に気が付かされた、のである。
一つは、水が温まるまでは時間がかかる。
二つ目は、入手したものは、水が漏れてくる。
さらに、陶器のものよりも暖かくない、という
問題があったのである。
(これなんぞ、火鉢としては、かなり致命的のように
思われるかもしれぬ。実際、陶器の火鉢というのは、
大き目なものだと表面積が大きくなり、
少ない炭でも陶器の部分が温まってくると、思いがず、
よい暖房になる、のである。)
よくよく使い込んで、漏らない方法だのも
編み出せばいいのだが、そこまで到達しないうちに、
面倒くさくなってしまった、のであった。
そこで、卓袱台に座って、私の右手には長火鉢はあるが、
抽斗はこまごました物を整理するものとして重宝しつつ、
その上の猫板と呼ばれる、平らなところは、読みかけの本を
積んでおくところになっている。
そして、実際に使っているのは、左手に置いてある、
陶器の火鉢。と、まあ、こんな状態。
結局、長火鉢というのは、毎日家にいて、
毎日火鉢を使う生活をしなければ、なかなか、
使いきれないというのが私の結論であった。
そこで、今日は、鍋の方はカセットコンロ。
お燗の方は、陶器の火鉢で鉄瓶。
まずは、火鉢用に炭をガスコンロで熾す。
炭を熾している間に、大根の皮をむき、
千六本に刻む。
熾きた炭を火鉢にセット。
鉄瓶に水を入れ、これも熱くし、
火鉢へ。
むき身は、洗って、千六本に刻んだ大根とともに、
皿に盛る。
鍋を用意。
今日は、土鍋。
ここに、水としょうゆ、酒。
先に大根を少し入れ、煮立たせる。
取り皿、箸、れんげ。
一升瓶(菊正宗)、一合徳利、猪口、
箸休めにお新香。
それから、薬味。
浅蜊むき身と大根の鍋には、山椒。
これを忘れてはいけない。
カセットコンロも用意。
まとめて、全部、卓袱台に並べる。
これだけまとめると、あとは立たなくとも、
すべてがまかなえる。
徳利に酒を注ぎ、鉄瓶に突っ込み、燗をつける。
カセットコンロのガスをつける。
むき身はすぐに食べられる。
いや、むしろ、煮すぎないのがよい。
入れてすぐ、山椒をふって、食べる。
燗のついた徳利も出して、一杯。
大根を入れては煮て、透明になってきたら、
むき身も入れて、合わせて、食う。
むき身の出汁のでた、つゆも飲む。
湯気が立ち、段々に部屋も身体も、暖まってくる。
池波レシピの鍋は、ごてごて、具は入れない。
メインの材料一品に、野菜も一品。
その方が、その素材の味に集中できる。
うまさを満喫できる、と、いうもの。
丹前をひっかけて、火鉢、鉄瓶、シンプルな鍋、
そして、燗酒。
なにものにも代えがたい、
私の冬の愉しみ、で、ある。