浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草寿町・とんかつ・すぎ田


9月15日(月)夜


さて、連休最後の日。
夜、内儀(かみ)さんが、
すぎ田ポークソテーを食べたい、と、いう。


寿のすぎ田は、私の最もよくいく、とんかつや、で、あろう。
なにしろ、近い。


少し前に、上野とんかつ史考察、というのを書いてみた。


上野というところが、とんかつ発祥の地、
と、いわれていること。
このあたりについて、考えてみたのである。


もともと、とんかつは、ご存知のように、
明治の頃、洋食屋でカツレツ、というメニューであったのだが、
大正末から昭和の始め、洋食屋から独立し、豚のカツレツだけを
看板にした業態が生まれ、全国に広まっていった。
と、いうことのようである。


考察では、東京でも、他の街ではなく、なぜ上野であったのか、
というあたりに、フォーカスをしてみたが、
どちらにしても、上野はもとより、浅草も、現在でも
とんかつやの数は、例えば、銀座や渋谷、などと比べても
多いのではなかろうか。


上野には、老舗といわれている店が、
蓬莱屋、双葉、ぽん多、井泉、の四軒。


先の考察の時には、松坂屋の裏の蓬莱屋へ、いってみたのだが、
これだけ、上野に老舗とんかつやが、密集していながら、
あるいはまた、浅草、観音様の回りにも数多くの
とんかつやが、ありながら、他の店には、私は、
ほとんどいったことがない。


実際に、なんでいかないの?と、友人に聞かれたこともあった。
答えは簡単、すぎ田、で間に合っているから、なのである。


元浅草の拙亭から、国際通りの向こう側まで、
真っ直ぐ東に歩いて、5分とはいわないが、
10分はかからない。


そして、やはり、味は、そうとうなものであると、
いうこと。


とんかつ、というのは、先の上野の老舗や、
すぎ田もそうだが、ちゃんとした、ところは、
決して、今、安いものではない。
2000円、前後、から、それ以上。


鰻やに近い価格帯であろう。


やはり、今日はとんかつを食いにいくぞ、と心構えをして、
いそいそと出かける、そういうところである。
ちょいと、入るという店ではない。


本来は、そういうメニューではなかったはずだし、
また、今でも、依然として、肉やで揚げて売られてもいるし、
普通の家庭の食卓のメニューでもある。
むろん、それらと、すぎ田などのとんかつは、
“別のもの”ではあるが。


ともあれ、とんかつを食いにいく、というのは、
それだけ、特別なことであるし、そうそう頻繁には
いかないものである。
私にとっては、鮨や、よりも頻度は低かろう。
(これは単純に、とんかつよりも、鮨の方が好き、
ということでもあろうが。)


そうなると、そうそう、色々なとんかつやへいく、
という気にも、ならないわけである。


そして、そうとうに、すぎ田はうまい。


〆て、すぎ田で、“間に合っている”と、いうことに
なるのである。


夕方、一応、電話をし、18:30に出かける。
雪駄をつっかけて、ぶらぶら歩いて、で、ある。


店に入ると、満員ではないが、カウンターもそこそこ埋まっている。


ビール、アサヒのプレミアムを、もらい、
注文は、私がロースかつと、内儀(かみ)さんがポークソテー
それから、エビフライ。


ここのエビフライも有名だが、仕入れによって、値段が違う。
頼むと、マスターに、今日はいくらですか?と聞く。
今日は、2200円。



きたきた、ロースかつ。





久しぶりのせいか、やはり、かなり、うまい。
ぶ厚いロースが、柔らかく、うまみにあふれ、
溶きからしをつけて、食べる少しだけ残された脂身が、
また、うまい。


エビフライ。





この海老は、伊勢海老、で、あろう。
まるまると大きく、プリプリ。
衣がカツとは違うような感じもする。
多少、厚め、で、あろうか。
衣もうまい。


内儀さんのポークソテー





(洋酒の香りが強いのだが、
前に、ブランデーと書いたが、ウイスキーかもしれない。)
数年前から、息子さんがカツは揚げていないが、
これは、作っている。


味は、むろん、よい。


ご飯、と、とん汁。





生姜が効いた濃いめの味噌汁がうまいし、
また、ここは飯も堅めで飯粒がつやつやし、うまい。




うまかった、うまかった。
やっぱり、すぎ田は、よい、とんかつや、で、ある。





すぎ田
TEL 03-3844-5529
〒111-0042 東京都台東区寿3丁目8−3