浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



その1 落語を聞くには


このところ、ちょっとした落語ブームであるという。

形はどうあれ、少しでも落語に興味を持って
くれる方が増えるのは、うれしい限りである。

この文章は、そんな少しでも興味を持たれた方へ、
断腸亭料理日記の「料理」からは、はずれるが、
「断腸亭落語案内」(?)、として書いてみたい。

落語の基礎知識

落語をまったく知らない方は、いないかと、思われるが、
一応、説明をしてみよう。


着物を着て、主に男性が、座布団に座って、
扇子や日本手拭(てぬぐい)を持って
右を向いたり左を向いたりして、おもしろい話をする、
と、いった、もの、である。


落語には、まず、大きく分けて、地域的に二系統、
質的にも、二種類のものがある。


地域的には、江戸(東京)で演じられてきた江戸落語
大坂を中心に関西で演じられてきた、上方(かみがた)落語の
二系統である。


これらは、古典落語、と呼ばれ、江戸時代(文化文政期)から始まり
現代に至るまで、きまった噺(はなし)を、師匠から弟子へ、
語り伝えられてきたものである。


そういう意味で、歌舞伎や、文楽などと同じ様な、伝統芸能である。


筆者も、素人ながら落語を演じるわけであるが、
まったく、落語を知らない、若い方などに
「自分で作ったんですか?」、などと、聞かれることがあるが、
いわゆる、古典落語は、昔からきまった噺(古典)をおぼえて喋る、
だけ、である。


一方、こうした、江戸や上方の、古典落語に対して、いわゆる、
新作落語」と、いうジャンルがある。
これは、演者自身や、作家などが書いたものを話すものである。
落語家によって、古典しかやらない人、新作しかやらない人、
両方やる人、が、ある。


筆者は、東京の人間であるため、演じるのも、聞くのも、
当然、江戸落語、ほぼ、オンリーである。
また、古典派、でも、ある。


このあたりが、基礎知識であろうか。


(お断りしておかなくては、ならないが、筆者の興味が
基本的に、江戸落語であるため、この「断腸亭落語案内」は
東京の落語事情、および古典落語のことを中心に書き進める。)

生の落語を聞くには


では、次に、今、落語を聞くには、どうすればよいか、に
ついて、書いてみよう。


まずは、ライブ、生(なま)で落語を聞くには、である。

寄席のこと


東京には、寄席(よせ)と、言われる、落語を中心にした
演芸場が、古くからあり、現在、主なもので、四つある。
(これを決まった席、という意味で、定席、という。)


上野・鈴本演芸場
http://www.rakugo.or.jp/


浅草演芸ホール
http://www.asakusaengei.com/


新宿末広亭
http://www.suehirotei.com/


池袋演芸場
http://www.rakugo-kyokai.or.jp/Map.aspx?ID=4


(これに、古くはないが、もう一ヶ所、国立演芸場、というのもある。
http://www.ntj.jac.go.jp/engei/ )


ほぼ、365日毎日、年中無休、昼12時頃から夜9時頃まで
入れ替えなしで、見ることができる。(入場料は¥3000弱。)


入れ替えはないが、番組は、昼席と、夜席に別れている。
それぞれ、落語家を中心に17〜8人の芸人が出演する。
一人、大方、10分程度である。


最初に喋るのを、前座。
最後に喋る落語家を、トリ、と、いう。


寄席では、トリのことを、主任、などとも、言っている。
その席(回)の責任者、と、いう意味である。
また、もっとも長く喋る。(長い噺をする。)


寄席の番組は、月を三つに分け、上席、中席、下席、といい、
出演者は、丸々、代わっていく。


寄席では、トリ、が誰なのか、ということが、大きな問題である。


トリより前で喋る噺家は、先ほど、10分程度と書いたが、
このくらいの長さでは、一つの噺をきちんと、話すことは難しい。
大抵は、途中切って、「おあとがよろしいようで、」などと
いって、舞台を降りる。
また、落語を喋らないで、適当な、漫談を喋って、済ます、
と、いうような、場合も少なくない。


そういう意味で、きちんとした、落語が聞けるのは、その日の
トリ、の人のもの、だけ、なのである。


東京で生で落語を最も手軽に聞こう、と思えば、寄席は
格好の場所である。


しかし、はっきりいうと、残念ながら、今、それほど、
おもしろくない。いや、おもしろくない人の方が、多い。


結局、演芸である。


その落語家がおもしろいかどうか、上手いかどうか、
これにつきてしまうのである。


今の東京の落語界の状況、
(ここでは詳細は、やめておく。あとで、述べることになろう。)
が、ここに現れているのである。


と、どうするか。
今、東京で、おもしろい落語を聞きたい、と思えば、
どうすればよいのか、を、次に、書いてみたい。


(寄席は、これ以外にも、実は、いくつか、ある。
お江戸上野広小路亭お江戸日本橋亭などの、グループである。
http://www1.odn.ne.jp/~engeijou/index.html
寄席に出ない、(出られない)談志一門、円楽一門などが出る
ちょっと、コアなところでもある。)

独演会・ホール落語


多分、多くの人が、ご存知ないと思われるが、
東京では、寄席以外でも、大小含めて、
数多くの落語会が、行われている。


大きいものは、ホール落語、独演会、と、いわれている。


今、多くは、若手、といわれる、比較的元気があって、
おもしろい落語家達である。


「ぴあ」で調べるとすると、演劇>お笑い・演芸 のジャンルに入る。


今年であれば、こぶ平改め正蔵、の襲名関連の落語会が多い。
演者では、もはや若手ではないが、春風亭小朝春風亭昇太立川志の輔
立川志らく柳家喬太郎柳家花禄、林家たい平、、、、、その他、いろいろ。


この人の話が聞きたい、という目当てがあれば、
演者で捜して、チケットを買って、行ってみる、と、いうのもよいであろう。
これはこれで、人気のある人の口演は、瞬く間に売り切れる。


しかし、こうしたホール落語、独演会も、10年ほど前には、
もう少し、盛んであったように思う。
談志家元が、国立演芸場の、ひとり会をやめ、小さん師、志ん朝師が他界、、
などなどを背景に、現在、筆者などには、あまり食指をそそられないのも、
本当のところである。


一方、もっと、コアなところになると、ぴあ、にも載らない落語会、
と、いうのも、実は多くある。
そば屋の二階、町内の集会所、などなどで開かれる、小さな落語会である。
こうしたところへ行ってみるのも、おもしろかったりするのである。
東京かわら版という、これまた、コアな月刊情報誌(?)がある。
http://www.tokyo-kawaraban.net/
ここには、こうした、小さな落語会まで、ほとんどのものが載っている。
(各、寄席で、買うことができる。)

ここまでくると、もう既に、マニアである。