浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草寿町・とんかつ・すぎ田

dancyotei2015-10-06



10月4(日)夜

さて。

日曜夜は、内儀(かみ)さんの希望で、寿町の[すぎ田]。

[すぎ田]はとんかつや、なのだが、なぜだかうちの内儀さんは
ロースソテーを食べに行く。

やっぱり、浅草の食べ物やは、日曜の夜もやっているのが
地元の人間には、ありがたい。

18時に予約。

下駄をつっかけ、10分前に家を出る。

真っ直ぐ東に向かい、新堀通りを渡り、国際通りも渡って、右。

春日通りの交差点手前。

以前は、かなり強い光で店を照らすライトがあったのだが、
多少明るさが落ちて、常識的な感じになっている。

この家は名物であった、先代の親爺さんが数年前に亡くなり
代替わりをしている。少しずついろいろなところが、
変わっていくのであろう。

ガラスのドアを開けて入る。

入ってすぐのところに大きな花が飾ってある。
これは変わっていない。

名前をいってカウンターに座る。

ビール。

これも以前は、アサヒのプレミアムなんというレアなもの
しかなかったような気もするが、3社の銘柄が揃っているよう。

キリンといったら、ラガーではなく一番搾りがきた。




ここはラガーでしょ!。
(まあいいか。)

注文は決まっている。

ロースのソテーと、ロースのとんかつ。
それから海老フライ。

もうなん年もここへくるとこの組み合わせ。

ん?。

今日気が付いたのだが、店の品書きにはソテーではなく
ソーテ、と書かれていた。
昔からそうだったのか。まあ、そうであろう。

ソテーは英語にもなっているようだが、saute(eにアクサンテギュ、
カンマのような点が上に付く)で、発音はソーテであった。
正しい。

ともあれ。

日曜の夜。
満席ではないが、お客は切れずに入ってくる。

様子を見ていると、近所のお馴染みではなく
わざわざきていると思われる若めのお客さん。

そう。

この家は、15年版ミシュランの割安に食べられるセレクション、
ピブグルマン
に選ばれている。

ロースのソーテ。




目の前で料理をしているので見えているのだが、
たっぷりのバターを入れ、ウイスキーで豪快にフランベ。

あまみもあり、抜群にうまい。

続いて、海老フライ。




まさに大海老フライ。

たっぷりのタルタルソースがうれしい。

大きいが、プリップリで身の味も濃厚。

この夏に行ったフィリピンのボラカイであれは、
伊勢海老であったか、を食べた。

海老、蝦蛄などもあるが、ものによって、身に弾力がなく
茹でただけで身が崩れてしまうくらいのものもある。
(これは鮮度なのか。)
ボラカイで出てきたものは、気持ちこの方向で、多少柔らかであった。
だがむろん、うまい。十分に食べられるものではあるが。

こういうところが、日本の魚介素材の品質の高さを物語っている。
この[すぎ田]くらいの店であれば、まず絶対にそんなものは出ることは
考えられない。ボラカイのホテルだって五つ星の超一流といってよいのだろう。
しかし、それでもこういうところまで、おそらく気が付いていない
のではなかろうか。

ともあれ。

ロースかつ。



これ、先代の親爺さんよりも、ひょっとすると
うまくなったのではないか。

いや、少なくとも全盛期の親爺さんのものを思い出す。

薄めに気持ちよく切れており、
ぶ厚い肉の中心部はほんのりピンク。

堪えられないうまさ。
どこへ出しても恥ずかしからぬとんかつ。

二代目として、十二分に力を発揮している。

ご飯と豚汁をもらう。



味の濃い豚汁がなにより。

ご馳走様でした。

うまかった。

ピブグルマンとはいえ、ミシュランに載ったのは
やはり励みであろうし、新しいお客も増えているのであろう。

もしかすると、この二代目、まだ40才であろう。
ここからさらに成長するのではなかろうか。
いや、してほしい。
それがどんな方向なのか。
わからぬが、なにかそんな期待を抱いて、帰路につく。


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