浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



落語の稽古

dancyotei2013-09-09


9月7日(土)午後



さて。



土曜日。



先週も書いたが、来週の連休のうちの土曜日曜の二回、
久しぶりに落語をすることになり、今日は午後から稽古。


落語をするのはどこかというと、母校(高校)の文化祭。


私は、都立の富士高校を卒業しているのだが、
その同窓会組織で、一つの出し物というのか、カフェのようなものを
出しており、そこで演ってほしいとのことであった。


まあ、私とすれば、お座敷があればどこでも出掛けていく。


以前、自分で企画して会のようなものをしていたことも
あったのだが、このところ、そこまでの余裕がなくてできていない。
なんとなく億劫になってしまっているのである。


人に頼まれて、無理やりにでも演れば、それを契機に弾みをつけられる
のではないか、そんな気もしている。


で、なにを演るのか。


なに分トウシロウのこと。
演れといわれて、すぐにできるのは、二席ほどしかない。
一つはメジャーなネタではないが『黄金の大黒』。
もう一つは『天災』。


『黄金の大黒』の方が短くて、人前で多く演っているので
台詞もすぐに出てくる。それで、こちら。


演る場所は教室半分ほどのところで、お客さんの数も
まあ、推して知るべしであろう。
しかし、まったく私のことを知らない方も
いると思われる。
本編の噺の稽古に加えて、少し詳しく自己紹介のようなことも
喋ってみる。


今日も稽古は歩きながら、で、ある。


下駄履きに短パンTシャツ。
近所の元浅草界隈をぐるぐるまわって歩く。


本人は集中しているのでいたって平気なのだが、
こんないい加減な格好で、ぶつぶついいながら歩いているのは
明らかにヘンな人である。


数回稽古し、帰宅する。


歩きながらの稽古、と、いうのは、なかなか愉しいものである。


新しい噺を憶える場合も歩きながらというのが私の場合は常である。


昔はカセットテープに入れたものを聞きながら。
今は音楽プレーヤーに入れて、聞いては止めて、言ってみる
を繰り返して憶えるのだが、これを歩きながらする。
噺の長さにもよるが台詞を入れるだけで半年くらいはかかってしまう。


一度憶えると、いわゆる暗誦をなん度もなん度も繰り返す。
なにも考えなくともスラスラと口から出てくるまでやる。
これも歩きながら。


ここから先が、やっと演出というのか、どう演じたら
おもしろいのかを工夫をしていく。
(まあ、これには限りがないのだが。)


そして、人前で演じる直前にまたさらう。
これが、今日やっている稽古になるが、これも歩いて。


やはり、座ってやると私の場合は飽きて、煮詰まってしまうのである。


また、歩くリズムと喋るリズムがちょうど合って
具合がよい、というものある。


憶えている途中の場合は、なかなか苦しい。


つっかえて、戻って、なんというのを繰り返すのは、
あまり愉しい作業ではない。


言葉がちゃんと入っていると、軽快に進むし、
元来はおもしろおかしい噺をしているのだから、
やはり、自分でも愉しみながらできる、のである。


一方で、座って本番通りに声を出してする稽古も
やはり私のような素人はした方がよい。


師匠(志らく師)に習っていた頃、最初にいわれたことだが
(前座さんなどにも最初にいうことらしいが)人前で落語をする場合は
とにかく大きな声を出すということ。


あがったり、恥ずかしかったり、いろいろでどうしても
声が出なくなる。これでは伝わるものも伝わらない。


広いところでも狭いところでも最後列の人の向こうに向かって
普段の自分のMAXの声のさらに二段階くらい上の声で
声を出す。


むろんプロであれば毎日のように高座に上がっているので
すぐにこの声が出せるが、素人にはなかなかできるものでは
ないのである。


(しかし、やはり落語家というのも話芸のプロ。
今は寄席でもホールでもマイクがあるので問題はないが
以前はむろん肉声。歌舞伎の役者なども、むろんそうであった。
皆、基本肉声でお客にものを伝えられるように訓練されていた
のである。おそらく、歌舞伎の役者も今でもマイクなしで
大向こうまで声は通るはずである。)


なので、やはり、座って声を出しての稽古も必要なのである。


先週から稽古を会社の帰りに隣の駅(飯田橋)まで
歩きながら始めていたが、今日、枕(落語の場合、
頭に喋るのを枕というのだが。)からちゃんとやって、
噺の方もある程度まとまり、なんとなく、形になってきた。


やはり、こうなると、自分でも愉しい。


弾みになるかもしれない。


しばらくサボっていたが、また、新しい噺を本気で憶えようかしら。


しかし、この土日。


なんとかなるであろうか。


ちょっと不安。