浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



蕎麦・巴町・砂場

10月7日(木)夜



ビックサイトへ行った帰り、
5時すぎ、ゆりかもめで、新橋まで出る。


ちょっと、愛宕山の方へいってみようと、
考えたのである。


銀座線に乗り換えて、虎ノ門までくる。
愛宕山というのは、愛宕下通りと、桜田通りに
はさまれている。


それぞれ真っ直ぐいくと、芝で東京タワーと増上寺へ。


愛宕山というのも私は、登ったこともなく、
一度くらいは見ておかねば、と、思ったのである。


虎ノ門の交差点から桜田通り。
ビルの谷間、右側に金毘羅様がある。


この通りは、今は桜田通りといっているが、
古くは、西ノ久保通りといっていた。


西ノ久保とは、今はまったくなくなってしまっている
地名だが、この通り沿い、飯倉あたりまでの呼び名であった。


今は虎ノ門が町名だが、以前は交差点のあたりが、
金毘羅様にちなんで、琴平町
そこから西ノ久保桜川町、西ノ久保明舟町と
いっていた。


歩いてくると、左手、ビルの向う側に愛宕山らしき山が
見えてくる。


今はこのあたり、完全なオフィス街。
それも昔の商店などは少なく、きれいなビルが
建ち並んでいる。
今、一軒だけ、左側にみえたが、昔は、骨董、
中でも、刀剣を扱うような少し高級なところも
多かったという。


愛宕山への参道へは反対側の愛宕下通りが
表側だが、こちらから上がる道もあろうかと、
探してみようと、思ったのである。


と、あれ?


ビルの1階に、蕎麦やの看板。
[巴町 砂場]。


おお、こんなところにあったのか


砂場の系列ではこの近くの大坂屋砂場(こちらは
なん回かいったことはあった。)と並んで、巴町も、老舗として有名であるが、
それよりなにより、ここも池波レシピ。


銀座日記などにも登場する。


池波正太郎の銀座日記(全) (新潮文庫)



“FOXの試写室は不便だが、帰りにここに寄れるのが
たのしみである”、などと、書かれている。
(FOXの試写室がどこにあったのかは、知らないが。)
先生は、ここでは天ぷらそばが、ことに旨かったとも。


しかし、私は、毎度書いているが、
このあたり、土地勘がなく、仕事やらで、、
先の[大坂屋]まではきたことが、あったが、
ここまではテリトリー外であった。


帰りに寄ろう!。


その前に、愛宕山愛宕山


左側に入る道で、愛宕山を貫いている
トンネルがあった。


もう少し、桜田通り、西ノ久保通りを歩いてみる。


と、あれ?。


神谷町駅についてしまった。


ここまできたら、愛宕山はすぎてしまっている。


はて?はて?。


今度は、裏通りを戻りながら歩いてみる。
裏へ入ると、表のきれいなビルとは打って変って
小さなお寺さんやら、その家作のような
ちょっと、昔風の街並み。


このあたりも寺町のよう。
ちょっと、大きなお寺。
天徳寺。


なにか、聞いたことがある名前。
(江戸の地図で、あとで調べてみると、
その頃は、このあたりに大きな寺域を占めていた
ようである。)


あー、わかった。
トンネルの脇から、愛宕山に上がる道があった。


もう、段々、暗くなってきた。
いいや、先に、そばを食おう。


表の通りまで戻り、巴町砂場へ。


入ると、まだ6時少し前、奥の座敷で、宴会など
やってはいるようだが、テーブル席は、一組しか
お客はいない。


端っこのテーブルに座る。
歩いてきたので、汗が噴き出す。


扇子でパタパタ。


女将さんであろうか、メニューを持ってきながら、
まだ、暑いですね〜、と、ニコニコ。


はい。


ビールを下さい。


座って、パタパタ。


えーと、つまみは、、?


焼鳥。
蕎麦やの焼鳥は、うまいであろう。


ビールがきた。
焼鳥を頼む。


と、先のニコニコの女将さん、小鉢の刺身を
置いていった。





おお。
中トロではないか。
これ、お通しとは別の、サービスのよう。


あー、すみません、と、私。


老舗に似ず、気さくな雰囲気。


刺身をつまみながら、ビールを呑む。
お通しの枝豆もうまい。


焼鳥もきた。





ほー。
串ではない。


山椒がまぶされている。
鶏もさることながら、焼ねぎがまた、ばかうま!。


ひとしきり呑んでつまむ。


さて。
そばは、なににしようか。


どうも、ここの看板は、とろそば、というもののよう。
ニコニコの女将さんになにかと聞いてみると、やはり、
つけとろ、のよう。


「玉子が入って、ご飯にかけても、おいしいです」と。


つけとろも、私は、好物。
なるほど、じゃあ、それ下さい。


きた。





これも後でわかったが、どうも、つけとろ、は、
ここが元祖、ともいう。


とろろのつゆは、たっぷりとあり、なるほど、うまい。


池波先生は、濁ったつゆは嫌い、だったので、
とろそば、ではなく、天そばだったのか。


食べていると、ちっちゃな、ご飯も持ってきてくれた。





ご飯にかけると、これがまた、
うまいこと、夥(おびただ)しい。
いや、ほんとに!。




ご馳走様。
立って勘定。



ありがとうございまーす、と、
送り出してくれる。




うーん。


なんで、もっと早くここにこなかったのか。
悔やまれる。



私には、少し不便なところだが、
遠回りをしても、またこよう。



うまかった、うまかった。



ぶらぶらと、愛宕山へ。





TEL:03-3431-1220
住所:港区虎ノ門3丁目11−15