浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



洋食・日本橋・たいめいけん

6月13日(金)夜


夕方、日本橋の得意先へ。
初めていくところで、この界隈、日本橋の北と南に
ビルがいくつもあり、随分と探して汗だく。


6時頃終わり、今日はこのまま帰ることにする。
昭和通りと、永代通りの交差点で、連れと別れ、
交差点を渡り、日本橋寄りに。


なにを食おうか。


昼間は暑かった。


たいめいけん、にいってみようか。
路地に入り、たいめいけんは、右側。


と、祭、で、ある。





神輿を担いでいる。
そうか、今週は、山王祭で、あった。


ここは日本橋一丁目。
山王祭と、我々の台東区界隈の祭とは、随分に雰囲気が違う。
むろん、この日本橋一丁目界隈に住んでいる人というのは、
今はほとんどいないのではあろう。
人々の半纏を見ると、「野村」など、会社名の入ったものを
着ている人々も多い。
動員されている、のであろう。



しばらく眺め、たいめいけん、に。



日本橋の洋食屋、たいめいけん、はご存じの通り、
池波先生の通った店。「池波レシピ」、で、ある。
『日曜日の万年筆』、『むかしの味』
などなどに、書かれている。


むろん、私もここにはきたことがあったのだが、
どうも、相性が悪かった。
そんな店が、誰しもあるだろう。
20代の頃だったと思われるが、
内儀(かみ)さんと。季節は冬。座ったテーブルが、出入り口そば。
人の出入りで、外気が常に入り、食事どころではなく、
寒かった、という記憶しかなかった。
それ以来、とんと入ってみる気にならなかったのである。


今日が暑かった、ということだったのか、なんなのか。
よくわからぬが、なんとなく、いってみよう、
という気になった、のである。


二階の小皿料理、ではなく、一階。
入り、席に案内される。
まわりを見回すと、まだ気持ち早い時間のせいか、
空席もちらほら、ある。


メニューをもらう。
さて、なににしようか。


ますは、ビール、だが、、。


同じ洋食屋でも、銀座の煉瓦亭

浅草のヨシカミ

グリルグランド


など、洋食屋でも、なん度も通っているところでは、
店に入る前からなにを食べようか、決まっている。
ここはそんなわけで、初めてに近い。


そうである。
こんな時には、決めているメニューがあった。
池波先生の真似。
ポークカツレツと、チキンライス。
おかずに、白いご飯ではなく、味付きのご飯にする、という
のが、意図、ではある。


ビールがきた。


料理がくるまで、つまみがないな、、、


あ!、そうであった。
ここには、名物があった、長年50円でやっている、
ボルシチと、コールスロー


歩いている、お姐さんに頼む。


すぐにきた。





前にきた時にも、頼んだように思うが、味の記憶はあまりなかった。
コールスローは、気持ち甘めだが、うまい。
ボルシチは、この値段である。
肉などは入っておらず、今風にいえば、ミネストローネ。


呑んでいると、すぐに、ポークカツと、チキンライスがきたが、、、





ありゃ。



そうであったか。
ポークカツはライス付であった。
(その上、ポークカツの付け合わせは、コールスロー。)
えーーー。いってくれよ〜、という感じだが、
知らずに頼んだ己(おのれ)がわるい。


仕方ない、腰を据えて、食うか!、で、ある。
この年で、これだけ食べるのは、かなり、、で、あるが、、。
(申し訳ないが、残す、という選択肢もあるか、
とは考えつつ。)


まずは、ポークカツ。
肉も大きめ、ごつごつした感じ。


ナイフを入れると、衣は硬めで、しっかり揚がっている。
脂身もあり、うまい。
デミグラスソースもよい。


付け合わせも合わせて、ビールとともに、食べる。


ふう。


食べ終わった。


さて、チキンライス。


これは、かわったところは、ないだろう。
普通にうまい。


食べながら、考えた。


この白いライスを“手付かず”で、残したら、
他の客に出すだろうか?と。


まあ、冷めてもいるし、まさか出さぬであろう。


いや、ジャーに戻して、他のと混ぜて・・?!


そんなことを考えつつ、チキンライスを、食べ終わる。


さて、どうしたものか。


無理をすれば、食べられそうである。
明らかに、身体のことを考えれば、やめた方がよいのだが、、。
週末だし、(意味がわからぬが、、)食べようか。
残っていたボルシチでライスを食べる。


食べ始めて気が付いたのだが、
このボルシチ、奇妙にご飯に合う味である。
うまい、うまい。


完食。


いやー、かなりの食いすぎ、で、ある。


レジで、勘定。
3000円ちょい。


ドアの外に出ると、随分と列ができている。
いい時間に入ったのかもしれない。


昭和6年創業。池波レシピでもあり、
また、東京の洋食を代表する、日本橋たいめいけん
その名に十二分に値する味、で、あろう。
(今日は寒くなかったし。)



たいめいけん