浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



資生堂パーラー・日本橋高島屋店


4月30日(日)夜


夜、で、ある。


昨日の夜、なにか、TVででもやっていたのであろう。
筆者の日本橋高島屋、野田岩のページ
のアクセス数が、妙に高かった。


そうであった!。忘れていた。
うなぎの季節到来である。


この陽気になれば、うなぎ、である。


銀座線で、18:00、日本橋到着。


新館、特別食堂へ、向かう。
エレベーターが開き、フロアーに足を踏み入れる。
と、先客、が案内の店員と話をしている。


店「ええ、、、。でも、野田岩さんは、売り切れになってるんですよ」。


ありゃ、りゃ。


それはそうであろう。甘かった。
筆者のようなページのアクセス数が上がるくらいである。
大量の人が今日は押しかけたのであろう。


すごすごと、回れ右、、、。


はて、どうするか。
野田岩のうなぎ、のことしか頭になく、まったく
他の選択肢を考えていなかった。


困った。


他のうなぎ屋へ行く気もしない。
この高島屋の新館には、この特別食堂以外にも
6階に、テナントのレストランフロアがある。
少し覗いて見るか。


と、資生堂パーラーがあった。


資生堂パーラーといえば、むろんのこと、本店は銀座。
そして、ここは、池波正太郎先生御用達し、
池波レシピ、で、ある。


先生が、戦前、株屋の小僧時代から、通ったところである。


いい時代、というのだろうか。
先生が10代の頃である。高価で、ハイカラなこういうところに
出入りをしていたのである。
戦後も先生は、銀座の本店へはよく足を運び、
「今日の、○○は、まずい!いかがなものか」
などと、文句をつけていた、なんということも、自ら
お書きになっている。
まったく、先生ならでは、で、ある。
そりゃあ、そうであろう。10代の頃から、通っていれば、
なにをいっても、いい。


ともあれ、資生堂パーラー銀座本店。
筆者は、足を踏み入れたことはない。
東京の洋食は、安くはないことは、むろん、知っている。
しかし、ビーフカレーライス、¥3000、は、いかになんでも、
高いであろう。


テナントの入り口に、メニューが出ている。
見てみると、そこまでの値段ではない。
本店と、値段が違うのである。


入ってみるか。


お客さんは、特別食堂同様、お金持ちそうな、老夫婦やファミリー、
そんな印象である。


ビールをもらう。


メニューは決まっている。
ミートクロケットと、チキンライス。


ミートクロケットは、ライスかパンが付いているが、
このライスをもらわないで、チキンライスにする。
これが、池波流なのである。
以前に、作品で読んでいたが、
「ライスを、チキンライスにかえる」の本当の意味がやっとわかった。


「一緒にお持ちした方がよろしいですね」
「はい」


とても、お上品で、ちゃんとした接客態度である。
また、厭味な印象もない。


ビールを呑みながら、待つ。
このビール、ピルスナー、といっていたが、
なんであろう。オリジナル、ではなかろうか。
微かに、フルーティーな印象がある。


先にナイフフォークと共に、福神漬け、らっきょうなどが、
テーブルに置かれた。
これをつまみに、ビールを呑む。


さて、運ばれる。





おおこれが!


なにか、やはり、感動がある。
白い大きな皿。金のライン。奥中央に、同じく金の資生堂のロゴ。


ミートクロケットは、濃いオレンジ色のソースが敷かれた中央に2個。
そして、フライされたパセリが載っている。


ナイフで切って食べてみる。


ミートクロケット、という名前で中はどんなものか、想像がつかなかったが、
クリームコロッケである。
ようは、ソースよりも具が多い、ということなのであろう。
肉は小さなサイコロ状に切られた鶏肉。
この鶏肉が、うまい。
なんというのであろうか。
肉もよいのであろうが、クリームソースで煮込んでいるというのでなく、
きちんと、鶏肉として主張している、というのか、鶏肉として
しっかりしている、というのか。


また、素揚げのパセリ、と、いうのもなにか、新鮮な感じがする。
とくに、びっくりすることはないはずだが、こんなものもうまい。


ソースはトマトベースなのであろう。
酸味が強めでこれもうまい。


チキンライス。
これは、まあ、クロケットほどの驚きはないが、
ふつうにうまい。



うまかった、うまかった。
これ、本店と同じ味なのであろうか。


お会計、¥3570。



なかなか、よいんじゃなかろうか。
野田岩のサブであったが、今日はちょっとめっけもの、で、あった。




資生堂パーラー