浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭、京都へ その5

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祇園の板前割烹[阪川]。

湯葉の椀物、あん肝と雲子の酢の物、鰹などのお造り、
かぶら蒸し、まで。

カウンターの私の目の前に置かれた七輪。

ねぎはもうよいので、向こうに置かれた。
魚はまだのよう。

あがった。

若い衆が、もろこです、と盛り付けられたものを出す。

これも、以前にきた時にも出た。
この日記を見直したら、11月。
ほぼ同じ時期である。

もろこは、琵琶湖のもの。
ご主人の出身が滋賀県と聞いた。

琵琶湖のもろこ、というのはこの時期のものなのか。
高級魚だそうな。

魚を立てて盛り付けるのは、意図であろうが、
なぜであろうか。
かかっているのは甘酢か。

こんな小さいのだが、脂がのって、うまい。
目の前でおあずけを食っていただけあって、ねぎの焼き具合も
絶妙でよろしい。

次。

おつゆ、で、あるが、中は真薯。

上にのっているのは、里芋、海老芋、か。

これが、驚き。
なかは、蟹。

隣のお客は、大きな、ズワイガニ、で、あろうか、
を食べ始めているが、真薯の中にたっぷり。
おまけに味噌まで入っている。

負け惜しみではないのだが、私自身蟹にはあまり思入れはない。
なにしろ、殻をむくのが面倒ではないか。

おいしいところだけ凝縮されて一つの真薯のお椀に
なっている。

流石。

また出た。

これはふぐ、だそうな。
焼き白子。

塩をまぶして焼いてある。
ふぐの白子は焼くのが最もうまいのではなかろうか。
まさに堪えられない。

あれで終わりかと思ったら、これ。

これに以前にきた時にも、まったく同じものが
出たと記憶している。こうばこがに。

せいこがにともいう、松葉がにのメス。

外子と味噌を身の上にきれいに盛り付けられてある。
まさに旬のもの。

うまい、うまい。

ご飯。

ちりめん山椒。

赤だし、なめこであったか。

香の物、蕪、白菜、しば漬け、壬生菜。

これはびっくり。
ちりめんじゃこが、秀逸。

京都ではちりめん山椒は定番である。

だが、このちりめんじゃこの食感が、まさに縮緬(ちりめん)。
縮緬というのは、縮れが入った絹の織物である。
まさか縮緬を食べたことがあるわけではないが、
フワッと、シャリッと、というのであろうか絶妙な食感。
ちりめんじゃこの由来がやっとわかった思いである。

京都でもなん度もちりめん山椒は食べているが
こんなものは初めてであった。

うまかった、うまかった。

水菓子。

ぶどうやら、ゆるいゼリー寄せのような感じ。

腹も一杯。
まさに、堪能。

お会計は2万。
コースと酒。まあ、そんなものであろう。

ご馳走様でした。

立って、出る。

と、まあお約束だが、京都は必ずご主人が外まで
走って、見送りにきてくれる。
今日は、女将さんもともに。
二人で、こちらが角を曲がって見えなくなるまで。
これでわるい気がする者はおるまい。

ご馳走様です。
とても、おいしかったです。

ここまで。
トータルで、やはり京都の料理やは、素晴らしい。

東京にだってこれだけの腕と、素材を扱うところは
あるのであろうが、なんといっても厚みが違っていよう。
こんな店が、祇園先斗町はじめ、京都には数多ある。
人、職人の厚みと、歴史の厚みである。
とりもなおさず、これが文化というもの。
どうしたって、和食は京都が我が国最高峰であることは、
まったく揺るぎがない。

これが我が国が誇る、世界遺産、和食である。

 

 

 

 


ぎおん 阪川
075-532-2801
京都市東山区祇園町南側570-199