浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



カツカレー考察〜東上野・洋食・レストランベア


12月12日(土)第二食


今日は、昨日の続き、、、
と、いっても、それほど続いては、いない、のだが。
また、二日酔い、ということ。


で、やっぱり第一食は、例によって近所の路麺、アズマ。


帰宅し、風呂に入ったりしながら、使い物にはならず、、。


昼過ぎ、やっと、どうにかなってくる。
と、なると、なんだか無性に、カツカレーが食いたくなった。


これは、先週の土曜にも食べたかったもの、
なのだが、結局、食べられていないので、
また、食べたくなったのだろう。


どうも、カツカレー、というのは、定期的に、
食べたくなるもの、の、ようである。


カツカレーといえば、私には、神楽坂のめとろ

あるいは、カツカレー発祥の店、という、銀座のスイスグリル

または、最近は、寿のキッチン南海


カツカレー、と、いうのは、なんであろうか。
むろん、ものとしては、カレーライスにとんかつ、
あるいは、カツレツをのせたものであることは、
いうまでもないのだが、少し大げさにいうと、
その本質は、なにか、ということ。


まあ、そこまで、大上段に振りかぶらなくとも
よいのだが、カレーライスと、とんかつ、と、どちらも
ものすごく、ありふれたもの、なのに、のせただけで、
私には、なんだか、まったく、別のモノ、に、
なっているような気がしている、のである。


カツカレーの誕生は、先の銀座のスイスグリルで、
往年の巨人の名選手、千葉茂氏、が関わっているらしい、
ということなので、おそらく、戦後、昭和30年代、までには
生まれているメニューなのであろう。


では、メニューとしては、どういうポジションなのか。


なにものせなくとも、一品で完結している、
カレーライスの上に、さらに、具、として、とんかつをのせる、
と、いうのは、スポーツマンの千葉さんが考えたということも
裏付けているが、いわゆる、ガッツリ系、体育会系の
メニューなのであろう。(当時運動選手は盛んに「肉を食え!」
などといわれていたと思われるが、そんなメニューであろう。)


そして、やはり、少しぜいたくなメニューということ
でもあろう。さらに上にのせる、ぜいたく、で、ある。


これらのポジションは、ある程度、
今でもかわっていないものだとも思われる。


この上にのせる、ということをもう少し考えてみよう。


他に、こういう+αのメニューにはどんなものがあろうか。
考えてみると、意外に少ないのではなかろうか。


例えば、温かいそばの類はいろんなものをのせるが、
どちらも一品で独立できるのに、あえてのせている、
というのではないだろう。大海老天二本をのせても、
天ぷらそばやっぱり、天ぷらそばとなって完結し、
下のかけそばは、もちろん独立した一品としてあるにはあるが、
存在感は、カレーライス一皿には勝てない、であろう。


両方とも存在感(満足感といってもよいか)のある
メニューの合体ということで、そうそうない組合せ
ではあろう。


自分のことを考えると、子供の頃、あるいは、学生、
さらには、30代前半までは、食いしんぼう、ではあるが、
量を求めるということは、あまりなかった。
それで、カツカレーというものは、味覚的には、
好きなのだが、量の問題でそれほどよく食べるもの
ではなかったように思う。


多少余談になるが、私は子供の頃から、30代前半までは、
やせっぽっち、といってもよい体形であった。
その後、量も食べられるようになった
のは、おそらく持病であった、胃潰瘍が、最近のピロリ菌の
除菌という治療法で、大きく改善したことが影響である。
しかし、ご想像の通り、太ってきたのはよいのだが、
ここなん年かは、コントロールしないと、適正体重を
越えてしまう危険を抱えるようにもなったのであった。


ま、ま、そんなことはどうでもよい。
カツカレーのこと、で、あった。


いま、カツカレーはどんな所で食べられるのか、
というのも、見ておきたい。


広くいえば、やはり、いわゆる『洋食』のメニュー、
で、あろう。ここでいう洋食とは、銀座煉瓦亭やら、
資生堂パーラーだったり、浅草ヨシカミだったり、という
洋食やの老舗、で出すオーソドックスな洋食という意味である。
だが、これらの店で、カツカレー、が、あるのか。
全部はわからないが、資生堂パーラー本店にはなし、
ヨシカミにもなし、、、。どうであろうか、ない方が、
多いのかもしれぬ。(先の、スイスグリルには、むろんあるが。)
どこの店にもカツもカレーもどちらもあり、作るのは、
簡単であろうに、ない、というのも、少しおもしろい。


結局、老舗洋食やは、カツカレーを食べるところではない、
ということであろう。お客としては、他にもチキンライスやら、
クリームコロッケだったり、うまいのもがたくさんあるから、
カツカレーはなくてもよいし、ガッツリ系と、老舗洋食やとは、
方向が違うので、店でも出さぬ、ということであろう。


じゃあ、どこかといえば、いわゆる、スタンドカレー(チェーンであるが、
COCO壱番屋のようなところ)、学食、定食や、というようなところ。
(やっぱり、ガッツリ系の業態。)
定食やと、洋食や、というのが、定義としては、曖昧であるかもしれぬ。
キッチン南海や、カロリー、のような、ところ。学生が主なお客、
だが、生まれは洋食や系の定食や、というようなところ。


あるいは、浅草水口食堂のような、昔からある大衆食堂には、あったっけ。


酒を呑む、という客が多ければなさそうだし、
定食やに近ければ、ありそう、そんな感じであろうか。
(先の、洋食や系の定食やと、大衆食堂の違いは、
刺身や煮ものがあるか、かもしれない。
むろん洋食や系にはこれらはない。)


カツカレーは一般的には、今見てきたような背景を
持っているのだと思う。それでは、私にとって、
“なにか別のもの”、と感じさせるものはなんであろうか。


よくよく考えてみると、カツカレーはカツカレーで
どこのものでもいいかといえば、そうでもない。
やっぱり、好みがある。


理想的には、やっぱり、神楽坂めとろ、が私には、
一番うまいカツカレー、で、ある。
ポイントは、濃いこと。
カレールーも濃く、カツはラードで揚げている。
やっぱり、こってり、方向。


で、カレールーがかけられた、カツ、というのが、
また、うまいのだが、どうも、別物、と、感じているのは、
この、味ではなかろうか。
カツにしても、カレーにしても双方出会うとこにより、
双方とも別の味になる。
では、どういう味なのか、具体的に文字で書けといわれても、
それはそれで、むずかしいのでは、ある。


もう少し分解すると、フライの衣。これとカレールーの
組合せが別の味になる。で、あるので、ラードで揚げた、
というのが、ここで効いている、ように思う。
これがうまい、のであれば、フライであれば、なんでもいいのか。
実際に、海老フライや、メンチカツをのせたカレーも
世の中にはある。
しかし、やっぱり、フライの中身は、豚ロース肉でなくては
ならないように思う。海老では物足りないし、逆に海老からみれば、
カレーでは味が強すぎる。あるいは、メンチカツでは、
別の味がついているので、これも、行きすぎ、のような気がする。
やっぱり、豚ロース肉がベストの組合せであろう。


結局、あまり、うまく説明できていないような気もするが、
カレーライスの上に、カツをのせるだけで、
(盛付けの順番としては、逆であろうが。)


カレーライスでもなく、とんかつ、あるいはカツレツ、でもない、
カツカレーという別の料理になっている、と、思うのである。


さて。

そうとうに、長い、考察になってしまった。


そんなことで、今日いったのは、近所で、
前はなん度も通っているのだが、始めての店。
清洲橋通りから路地を西側へ入ったところ。
東上野のレストランベアという。
この路地は、永寿病院の前を通って、上野駅方向に向かっている
通り。清洲橋通りを入って、すぐ左側。


基本的には、チェーンではないが、先の定義では、
洋食や系定食や、になろう。
13時すぎ、きてみると、さすがに土曜日、
人は引けて、2〜3人。
日替りの定食が、750円。
町の洋食レストラン、で、あろう。


入ると、白髪のおじちゃんだが、毎度〜〜、と、
妙に威勢がよい。
(私は、毎度〜、ではないが、、。)


四人掛けの広いテーブル席に座ると、
スポーツ新聞を置いてくれる。
柳橋大吉も、そうであった。)


迷わず、カツカレー。
店の外の看板にも、日替りとともに、
カツカレーも別記してあったので、売り、なのではあろう。
(他にも、フライもの盛り合わせから、ハンバーグその他、
洋食や系定食やメニューは一通りあるよう。)


揚げている、のであろう、少し時間があり、きた。






ライスがけっこう、大盛、カツも大きい。
ここは店自体が、ガッツリ系のようである。


ラードではないかもしれぬが、カレーの味も濃く、
普通にうまい、カツカレーで、ある。


満足、満足。


勘定をして、やっぱり、


毎度どうも〜〜〜、と元気がよい。


こんな近所なのに、きたことがないのは、迂闊、
で、あった。







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