浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・弁天山美家古寿司 その2

週をまたいでしまったが、引き続き、
浅草[弁天山美家古寿司]。

前回は、つまみ、たこと鰹。

にぎり、生のいかが切れていて、白身、鯛と平目昆布〆。
光物、小肌と鯵、まで。

といったところで、仕込みが終えて若い衆も
降りてきた。
満席の満席で、てんてこ舞い、で、ある。

と、若親方が、これを出してくれた。

おぼろをまぶした、切った玉子。

いつも最後に内儀(かみ)さんが頼むが、
ついででもあったのか、先に出してくれた。

おぼろというのは、今は東京の鮨やでも
限られた江戸前を看板にしているところでしか、
作っていないだろう。
芝海老だったり、海老や白身魚の身をほぐし、
甘く味を付けたもの。ここのものは、ほぼ芝海老
のよう。
もちろん、手作りで、かなり手間がかかる。
なにに使うのかというと、太巻など海苔巻に
入れたり、酢〆の種などと一緒ににぎったりする。

うちの内儀さんは、それこそおぼろだけで
食べたいというので、こうして玉子焼きと一緒に
出してくれる。

さて、次、貝類。

もちろん、平貝。

あれば、必ず頼む。
私、貝類は積極的には食べないのだが、平貝
だけは別。好物、で、ある。

見た目は帆立のようだが、まったく別物。
このサクサクとした食感が堪らぬ。

ここで出すので、元来江戸前、東京湾でもよく獲れた
わけだが、今は三河湾、瀬戸内海が主な産地。
しかし、それも獲れなくなっており、置いていない
ことも多い。これもまた、保護、さらに是非
養殖も実用化してほしい。技術的にはある程度
目途はついているようだが、大きくなるのと、
デリケートな貝で環境変化に敏感とのことで、
ハードルは高いよう。
これもまた、大切な江戸前にぎりの種、で、ある
なんとか実用化してくれることを願う。

次は、これ。

北寄貝。これは、内儀さんだけ。
貝の江戸前仕事では多いが、軽く酢に
漬けている。

そして、今日の貝類の目玉。

おわかりになろうか、これ。
鮑(あわび)。
今は、全国的に、鮑は生のままにぎる。
だが、江戸前鮨では、蒸し鮑といって、
火を通して出す。プチっとした食感で柔らか。
塩蒸し、などともいうが、今はじっくりと塩ゆでし、
ゆで汁をもう一度吸わせる。柔らかでよい歯切れ。
滋味深い味。
江戸前鮨の初夏から夏の風物詩といってよい。

そして、海老。

さいまき海老といっている、車海老。
江戸前の天ぷらで使うものよりも大きかろう。
ゆでてここでは、軽く酢に漬ける。
海老というのは、ゆで置きをするとどんどん、
水分が失われ、パサパサになる。
それを防ぐため。
ゆで置きでも流通しているので、にぎりずしの
海老などうまいものとは、私なども思っていた。
若親方は、酢に漬けてあるので、おぼろを
はさんでくれている。内儀さんのものには、
たっぷり。

そろそろ終盤。

まぐろ。

今日は、づけと、中とろ。

づけは、中とろもあるが、ノーマルな
赤身のづけにしてみた。

づけというのは、幕末近く、江戸、馬喰町あたりの
鮨やが始めたと聞く。基本は赤身をしょうゆに漬ける。
もちろん、日持ちをさせるため。
東京では家庭でもやったものである。
日持ちだけでなく、しょうゆのうまみが加わり
生よりもうまくなるという副次効果があった
わけである。
それ以前、まぐろも足が速いので、生のまぐろが
魚河岸にあがると、売り切ってしまわねばならず
江戸中にまぐろがあふれたという。

以前は赤身専門で、私が若い頃などは、生の赤身も
づけ、といってた頃もある。
ここでは、最近は中とろも常によういしている。
漬ける塩梅が難しそうだが、確実に赤身よりも
うまい。

さて、最後は、やっぱり海苔巻。

今日は、鉄火とかんぴょう巻。

若い頃は、いろんな巻物をやってもらったことが
あったが、今はこうして定番のものになってきた。

ちょっと小さくてわかりずらいかもしれぬが、
かんぴょうには、おぼろを入れていくれている。

また、鉄火のまぐろは、ちょっと脂のあるところ。

どちらも、もちろん、べら棒にうまい。

うまかった、うまかった。

勘定は、二人で27,060円也。
諸物価高騰の折、多少上がっているか。

ご馳走様でした。

また。

 

弁天山美家古寿司

 

 

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