浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭イタリアへ行く パート2 その29

さて、引き続きイタリア。

明日帰るのだが、ミラノ・マルペンサ空港からの出発が
午前なので、ジェノヴァからミラノに移動。

ミラノで前回観ていなかった、ミラノのドゥオーモの
中に入っている。

おそろしく高い天井。

そして、天井画のようなものはない。

これ、前から疑問に思っていた、のである。

例えば、直前に観た、ジェノヴァのサンティッシマ・
アヌンツィアータ教会
はキンキラで極彩色の天井画があった。
これに対して、ここもそうだし、前回のフィレンツェの
ドゥオーモ、サンタマリア・デル・フィオーレ大聖堂も
ドーム部分には見事なものがあるが、面積が大きい信者が
座る手前の身廊(しんろう)部分の天井には画はない。

大きな聖堂でも、天井画がないところがある。
なんだ、意外に地味じゃないか、と思ってしまう。
ちょっと調べてみると、理由が少し分かった。

聖堂によって個別の事情もあるようだが、
まず、ここ、ミラノのドゥオーモのは屋根が高く、
尖っている。昨日書いた、ゴシック様式。屋根を高く尖らす
ために内部の天井は高い高いアーチ構造になっている。
これでは物理的に画は描けない。また、仮に描いても
高すぎて見えない、というのも理由。

一方、一般的にはバロック様式、ルネサンス様式だと
天井画が描かれることが多い。先のジェノヴァの
サンティッシマ・アヌンツィアータ教会はバロック様式で
その例に入るか。またルネサンスの有名どころだと、
ミケランジェノの大傑作の天井画がある、バチカンの
システィーナ礼拝堂。

フィレンツェのドゥオーモは、バロック様式に入るらしいが、
ドーム部分に集中させるために手前の身廊部分には描かれ
なかった。また、フィレンツェでは明快で広々とした空間が
好まれたと、説明されるよう。バロックとしては例外と
いうことか。

一概に法則のようなものを当てはめ切れず難しいようだが
こんな感じのようである。

で、ここは、装飾として、その代わりというのか床の模様。

これは祭壇右側奥のパイプオルガンの前。
(ちなみに、このパイプオルガンはイタリア最大らしい。)
ここだけでなく、聖堂中の床がすべてこのモザイクで
装飾されている。これ、色つきも含めて皆、大理石。
そして、驚くべきはあまりに複雑なデザインであったため
完成したのは1920年頃で、400年も掛かっているよう。

また、これ、ステンドグラス。

ここは祭壇真後ろの、後陣、窓になっている部分。それぞれ、
聖書に出てくる場面を描いているが、すべて別のモチーフで
全部で55枚。一枚の大きさが世界最大のものがあるらしい。

そして、これ。

これもここで観ておくべき像。
お分かりなろうか、これ、まるで人体模型のよう。
ちょっとぐろい、か。

あるのは祭壇左手脇。
San Bartolomeo、サン・バルトロメオ、聖バルトロマイ。
キリストの十二使徒の一人で、皮をはがれて殉教したと
言われており、まとっているのは自らの皮、と。
この像は、マルコ・ダグラーテ、1562年の製作。こういうの、
ちょっと苦手。この方、ミラノの守護聖人でもなんでもない
のだが、あまりにこの像の完成度が高く人気になり、聖堂中へ
入れたらしい。むろん日本の「解体新書」よりも前だが、
この頃、解剖学への関心が高まり、まあ、流行ったらしい。
すごい。

身廊から祭壇方向を見る。

先に、ここ。

祭壇上の高いドームの天井部分の赤いランプのアップ。
十字架も見える。その十字架の中心。

実はこれ、この聖堂で最も神聖で、観ておかねばいけないもの。
信者であれば、まず最初に祈るべき対象。

Santo Chiodo、サント・キオード、聖釘(せいてい)と日本の
カトリックでは訳している。聖なる釘(くぎ)。
なにかというと、キリストが掛けられた十字架の釘、と。
カトリック教会では最も重要な一級聖遺物 (Reliquie di
prima classe、First-class relics)としている。

聖遺物、今回もいくつか書いているが、ホンマカイナ、と
思われる方もおられようが、真偽ではない。宗教なので。
私もそのハシクレだが、カトリック信者はそう信じる。

仏教でも仏舎利、お釈迦様の遺骨、があるであろう。
お寺の塔、五重塔、三重塔は一応、歴史的には仏舎利を
安置する塔という扱いになっているといってよいのだろう。

そういうものである。この聖釘も、伝説、伝承の域を出ない
部分も多々あると思われるが、一応キリストの死と復活から、
今に伝わる由来はちゃんと語られている。

さて、もう一度祭壇方向の画像を見ていただきたい。
引いている画角なのでサイズ感が伝わりにくいかもしれぬ。
柱一本の太さが、標準的なもので直系2m50、太いものは
2m95~3m43という太さ。

この太い大理石の柱とともに、荘厳。
神、または、カトリック教会の圧倒的な権威とそれに対して
人の小ささ、のようなものを感じさせる。

ここの設計にはこの時代にミラノにいた、かのダヴィンチ先生も
コンペに参加しているが、残念ながら彼のものは不採用で、
多少参考にされた程度のよう。

このゴシック建築の傑作はこれら太い大理石の柱群に尽きる
といってよいのだろう。
全部でこの柱が52本という。これは一年が52週だから、ともいう。

高さで24~25mで、天空を目指し、林立、石の森を構成している。
徹底的に「巨大さと垂直性」にこだわったと、評価されるよう。
(ミラノ大聖堂HP)そして、むしろ天井画がないからこそ、
これが生きる、と。

さて、さて。
教会建築の話、はっきりって、難しい。もう一度整理すると、
ゴシック(13世紀~14世紀)、ルネサンス(15世紀~16世紀)、
バロック(17世紀~18世紀)、という時期と順番。

だが、建築期間が長く、内装と外装、あるいは身廊、ドーム
などなどでそれぞれ時期がずれ、複数の様式が混ざっている
ことも少なくない。

それぞれの聖堂毎の個性として理解し、そこも含めて、
鑑賞するもの、なのかもしれない。

 

つづく

 

 

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