浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭の年越し2026 その2

引き続き、断腸亭の年越し。

昨日は、稲荷町の中国意境菜[白燕]のおせちを
みてきた。
むろん、くらげだったり、きゅうりの甘酢など、よく
知っている冷菜以外にも中国料理には冷たくて
うまいものはたくさんあるということを教えてくれた。

もう一つ、冷凍の袋入りで、ふかひれ姿煮があるのだが、
これは後程。

さて、次、毎年お世話になっている、市谷の鮨や
[鮨太鼓]のおせち。
こちらは38,000円也。

壱ノ重

もうどのくらいであろうか、ここのものを長く食べているが、
やはり毎年少しずつ変わってきている。
おせちは基本、伝統的に日持ちを考えているので、
味が濃いものであったが、これも段々に薄味になってきている。
また、当初は、混ぜ込みの鮨のお重も頼んでいたが、
年とともに食べ切れなくなってきたので、これは数年前から
やめている。

蒲鉾(小田原鈴廣)、田作り、叩き牛蒡、黒豆。
中央、いくら、紅白なます(三浦大根使用)、数の子入り松前漬け、
栗きんとん(富の川越いも使用/江戸屋弘東園・入間郡三芳町

数の子だけで入っていたと思うが、これは松前漬けに吸収
されているよう。

弐ノ重

筑前煮、車海老、蟹爪変わり揚げ、鰤の幽庵焼き、
伊達巻、煮帆立、鮪しぐれ煮、たらこ西京漬け

おせちでは定番の煮物、いわゆるお煮しめ
お煮しめというと里芋が入ると思うが、これは里芋は
入っていなかった。日持ちを考えてのことか。
筑前煮でも里芋は入ってもおかしくなないと思うが
ちょっと寂しい。

おせちは、お節、と書くが、いわゆる節会、せちえ、が
起源といってよいのであろう。
節会は元来は宮中の行事で、正月だけではなく、
五月五日の端午の節会、九月九日重陽の節会などなど
たくさんあったわけである。
これが時代とともに武士や民間に広まったものなので
あろう。
お節とは微妙に意味が違うが、正月に雑煮を食べるといった、
民俗学でいう儀礼食というものもある。
また、おさんどんをする女性が正月に休むという意図も
加わっていたのであろう。
むろんのこと、地方毎、身分毎、家毎、に違っていた
はずである。

なんとなくお節料理というと、少し前には一般に決まった
料理を皆思い浮かべたと思うが、あれは、大正から昭和の
始めに、東京の新聞、雑誌などに関わる料理研究家といった
おば様方作ってきたものというのを読んだことがある。

つまり、日本全国伝統的なものでもなんでもない。
それで、別になにかお節らしい決まったものを食べなければ
いけない、ということはまったくない。今は、まったく食べない
という若い人も少なくなかろうし、甘いものが好きなら
栗きんとんや黒豆だけでもよいだろうし。
田作り、ごまめ、昆布巻きなども、私はたいしてうまいとも
思わない。いわれはともかく、たいしてうまくもないものを
無理して食べる必要はまったくない。
ただ本当に由緒のあるお家で、決まりのものとしてずっと
用意をしてきたというご家庭では、継続して然るべきであろう。
一般には保存食として正月期間、数日日持ちがして、好きな、
うまいものだけでよい、のである。
まあ、皆さん、各ご家庭でそうなっているであろうし。

紅白を視る。

終わりが近づき、神田[まつや]の生そばをゆでる。

一応、長ねぎを切って水に晒しておく。

生そばをゆでるのは、なかなか難しい。
そば同士がくっついたり、鍋の底にくっついたり。
よく混ぜながら。
また、ぼんやりしていると、すぐにゆですぎてしまう。
やはり、気持ち堅めがよいだろう。

水道水が、まったく冷たい。洗って、ざるへ。
つゆは缶からそば猪口へ。

生わさびでもあれば、100点満点だが、まあ、
これだけのために買うこともなかろうと、なし。

うまくゆだった。

紅白から、CDTV

翌昼前、起きて、火鉢の火を熾す。

もちろん、雑煮用の餅を焼くため。

子供の頃、餅を焼くのは父親の仕事であった。
父親は、なぜか雑煮が大好きで、元旦から大量に
餅を愉しそうに焼いていた。
その頃は、石油ストーブの上であったが。

東京の切餅である。
これは今は一つずつ個包装されているが、私の子供の頃は
米やで、あれは一升だったのか、大きな一枚を数枚買って、
温かいものが届く。
これが固まったら、包丁で切るのである。
この切る作業をなぜか母にやらされていた。
今考えると小学生の子供に切らせるというのは、かなり
無茶であろう。危ない。おそらく一二度は、指を切っていた
と思う。

で、そう、火鉢はおそらく、東京大森の祖父母の家には
あったのであろうが、私の育った父親の家には
もうなかった。
まあ、私の代になって、もう一度火鉢を買い直している
わけではある。
餅も焼くし、鉄瓶で酒の燗も付けるが、暖房の役割も
ちゃんと果たしている。
ソファーではなく、板の間に座布団で座る生活を
しているとエアコンだけでは下が寒い。

雑煮。

鶏ガラの澄んだしょうゆ味のつゆで、ゆでた
里芋に鶏肉、小松菜、三つ葉を散らしたもの。

晦日までに鶏ガラで出汁を取り、里芋、鶏肉、
小松菜をゆでておく。

朝、出汁にしょうゆで味を付け、具を入れ温める。
焼けた餅を入れ、三つ葉を散らす。
具は、温める程度で間違っても煮ない。

以上、ここまで、断腸亭の例年通りの年越し、で、ある。

 

 

 

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