浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



断腸亭イタリアへ行く その6 フィレンツェ6

4736号

さて、引き続き、フィレンツェ

アルノ川を渡って、斜め右(西)方向へ。

しばらく歩くと、左側にこれ。

この広場、半円形で広いが、なにもない。横に長い巨大な建物。
正面外観の造りは意外にシンプルに見える。
名前が、ピッティ宮殿(Palazzo Pitti)。
ヴェッキオ宮殿が密集したところに建っているのに対して
こちらはまわりに建物が少なく、独立して見える。

ここもなんと、ヴェッキオ宮殿に続いて、メディチ家のものであった。
いったい、どれだけフィレンツェメディチ家の持ち物があったのか。
(実は、フィレンツェにはさらにあと二つメディチ家が所有した宮殿
(palazzo)と呼ばれるものはあるよう。まったくもの凄い。)

ここは、今は美術館になっている。
向かって右の方にチケット売り場があり、列も少なくすぐに買えた。

最初にこの宮殿の成り立ちを簡単に書いておこう。

15世紀中頃、当初はメディチ家ではなく、銀行家のピッティが建築を
始めた。それでピッティ宮殿というよう。しかし、ピッティ死後、
ライバルであった先日書いた、トスカーナ大公コジモ・メディチ一世が
買い取り、建築を続行。その後メディチ家三代に渡って建築が続けられ、
完成は16世紀末ということになるよう。
ヴェッキオ宮殿が政治の場になったので、こちらがメディチ家
生活の場になったとのこと。

宮殿中央の入口から入る。

中庭。

入って、階段。

意外に、シンプル。

が、いきなり。

えげつないシャンデリア。

そして、天井。

上品だが、やはり、これでもか、というゴージャス感。
これだけでも、もう、やられてしまう。

次の部屋。
ヨーロッパらしくちょっと東洋趣味があるのか、

中国のものと思われる大きな壺がある。白地に青。15世紀、16世紀
なので、明、あるいは清の景徳鎮であろうか。

部屋自体の造りは落ち着いてやはり上品であろう。
淡いピンクに落ち着いた緑の大理石の柱。お洒落。
ところどころに金の飾りがあしらわれている。

が、天井はやっぱり、これ。

これもフレスコ画、で、あろうか。
だが、平面ではなく、金も入った浮き彫り。モチーフは天使、なのか。
ゴージャスでファンタジー?、いや、カトリックの国なので天使は崇高、
神聖な感じか。

次の部屋。

噴水のようなオブジェがある。
白にグレー系で落ち着いている。天井は木製だが、精緻な彫刻の、
日本でいう格(ごう)天井で重厚。

部屋ごとに、ここまで趣向の違ったデザインで、それも素人目に見ても、
どこも、これでもかと、凝っている。手間と金の使い方。さらに、
技術の高さに、まさに恐れ入る。

微妙に時代が後になるかと思うが、近い時代のフランスベルサイユ宮殿。
なん年か前にあそこにも行ったことがある。意外に、こんなものか、と
思った記憶がある。
当時の先端技術、貴重な鏡をふんだんに使った巨大な鏡の間など個々
秀でたものもあろうが、バラエティー感と完成度、深さなど
総体をみると、こちらフィレンツェが優っているのではなかろうか。

同時代の我が国だと、安土桃山から江戸前期、現存するものは日光
東照宮、二条城あたりというようなことになるか。
決してクオリティーは引けを取らないと思うのだが、、、。
私が思うのは、この時代の日本の文化財は、多く戦いで失われている
こと。信長の安土城、もちろん秀吉の大坂城、京都聚楽第などなど。
秀吉の黄金の茶室が真っ先に思い浮かぶが、徳川家のもの
以上のものがあったはずである。が、ほぼ失われている。絵画でも
狩野派琳派と、誇れるものは少なくない、はず。
お。そうである。方向は正反対だが、この時代だと京都桂離宮なども
加えたい。庭、建築、あの枯れた美しさも、我が国が誇るべきもの
であろう。
が、このバライエティーを考えると、フィレンツェメディチ家
脱帽せずばなるまい。

そして、ここで終わらないのが、もの凄い。
壁から、天井を、パノラマで撮ってみた。

天井も金の浮き彫り彫刻に真上には密集した精緻な人物の
フレスコ画(?)。

壁には、これでもかという数の絵画。
皆、メディチ家で収集したものという。

これが続く。

彫刻もある。

どうでもよい絵がただ並んでいるのではない、のである、これ。

ラファエロ 「ヴェールをかぶった婦人(ラ・ヴェラータ La Velata)」。

ご存知ラファエロは、ダビンチ、ミケランジェロと並んでルネサンス
三大巨匠。ここで最も見るべきものは、これだったようなのだ。
しかし、白状をすると、表示があったのかどうかもわからず、私、
まったく、気付かず、後でわかった。(よく見ると、額に下に
Raffaelloとある。)

ラファエロ・サンティ(Raffaello Santi)1516年頃。彼の作品で最も
美しい女性とのこと。確かに、これだけ取り出して見ると、
なるほどさもありなん。もちろん、これ以外にも名作ゴロゴロ。

気付かぬくらいなので、私の目のレベルが知れるが、とにかく、
これらの部屋のゴージャスさと絵画の物量に当てられ、はっきり
言って、疲れ切ってしまった。
やはり、これが文化に酔う、ということ?、美の洪水に思考停止だ。

廊下の窓から外を見ると昨日のドゥオーモが見えほっとする。

 

つづく

 

 

Corte Calzaiuoli Elegant Suites

 

 

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