浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



浅草・並木藪蕎麦

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3965号

11月5日(金)第一食

金曜日。

この数日、珍しく秋らしい気候が続いている。
今日も天気はいい。

尾張屋本店

で一杯やって、海老天の温かいそばでもたべようかと
思い、出掛ける。

例によって、15時すぎ。

ありゃ。きてみると、休み。
金曜休みだったかぁ。

なんだか、順序が逆のようだが、並木の[藪蕎麦]に
まわってみようか。

お気付きかもしれぬが、しばらく行っていない。

なんだか足が遠のいていた。
1年くらいにはなる。
なにか気分を害されたのだと思うが、
もはや詳細は覚えていない。
難しいものである。

忘れたことは忘れたこととして、ともかくも、
のぞいてみよう。

暖簾が出ており、営業中。

分けて、硝子格子を開けて、入る。
アルコール消毒。

観光客らしいの人あり、そこそこ埋まっている。

お座敷でもテーブルでも、どうぞ、と。

真ん中のテーブル、壁側にする。

お姐さんがコップの水を持ってくる。

そばやというのは、今は、そば茶などを出すところも
あるが、元来は寒い時期でも水を出すのが普通であった。
そばやは、蕎麦の香りを味わうために、緑茶は出さない
と聞いたことがある。
それで水。
まあ、温かいそば茶であれば、この問題は
クリアできるわけである。
(そういえば[尾張屋本店]は緑茶を出していたような。
私は、別段緑茶でもかまわないが。)

ともあれ、注文は、お酒、ぬる燗と、天ぬき。

この時期であれば、こうであろう。

マスク入れ。
どこでも、これが出るようになった。
まあ、あまり使わないが。

お酒もきた。

そば味噌、ぬる燗。

一杯。

それとわかる菊正の樽の香り。

菊正の四斗樽がいつも店の奥に置かれている。
飾り、なのかもしれぬが。

菊正宗は樽の香りを付けた瓶詰も出していたように
思う。

今は、樽の香りの付いた酒を出すところは
少なかろう。この香りも、久方ぶり。
よいものである。

天ぬきもきた。

開けると、こんな感じ。

天ぷらそばの、そばぬきで、天ぬき。

藪系は、車海老ではなく、芝海老のかき揚げ。

毎度書いているが、これが酒の肴なのである。

だが、これ、なんとなく小さいように見えまいか。
気のせいかもしれぬが。

衣をくずして、レンゲですする。
濃いつゆが、菊正によく合う。

ともあれ。
今日のお姐さんの対応はやけによい。

ここ数年、随分と変わってしまっていたように
思う。浅草も観光客が増え、さらに外国人観光客で
大行列ができ、それこそたいへんな騒ぎであった。
中国語と英語のメニューまで用意していた。
あの頃は、蕎麦やとしてのサービス、どころでは
なかったのかもしれぬ。
そこへもってきて、コロナ禍で急転直下、観光客どころか
お客がこなくなった。

そういう意味では、やっと普通に戻った、ということ
なのかもしれぬ。

さて。

そばにしよう。
もちろん、ざる。

きた。

つゆをそば猪口に移す。

わさびを箸先に付け、一箸分そばをつまむ。
そばを持ち上げ、つゆにそばの先、1/3をつけ、
一気に手繰る。
ほぼ噛まずに喉から胃袋へ。

この時、左手はそば猪口を持っている。
これ、大事である。
持たずとも、添えるだけでよい。

前にも書いているが、最近の若い人、いや、私と同年配でも
これができていない者が多い。いわゆる、犬食い。
左手は、テーブル、あるいはお膳の下にだらんとたらし、
頭を下げ身体も伏せ、そばをすする。
今日も、二組ほど観光客らしい若者カップルがいたが
やっぱり一人はこうであった。背筋を伸ばせ、
とまでは言わぬが特にざるそばの場合、犬食いは
かなりみっともない。

 

 

03-3841-1340
台東区雷門2丁目11-9

 

 

 

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