浅草在住、断腸亭錠志の断腸亭料理日記はてな版です。(内容は本店と同じです。)

断腸亭料理日記本店



白魚・秋

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3960号

10月27日(水)第二食~

さて、前号につづいている。
白魚。

最初に生にぽん酢しょうゆで食べた。
早く食べなければ。

やっぱり、天ぷら、である。

パックから洗って移しておいた。


パックの写真をもう一度。

380円は安かろう。

秋に、こんなに出回っていたのか。
気が付かなかっただけかもしれぬ。

白魚といえば、寒い頃。
1月、2月。

広重 江戸土産 佃白魚網夜景

江戸前隅田川河口、今の中央区新川、
あるいは湊(みなと)。
湊というのは、文字通り、あそこが江戸のみなと(湊)
江戸湊であったので町名に残っている。

あの付近でも、四手網で夜、篝火を焚いて、
佃島の漁師によって白魚漁が行われていた。

湊というが、江戸期長い間に土砂がどんどんたまり、
浚渫(しゅんせつ)技術がなく、遠浅が進んだ。
大型の船はここまで入ってこれなくなり、
品川沖に停泊し、荷は小舟に移し掘割を通り
日本橋をはじめ江戸市中各地に運んでいた。

そのおかげで、ずっと白魚がこのあたりでも
獲れたのであろう。

黙阿弥先生の歌舞伎「三人吉三廓初買
(さんにんきっさくるわのはつかい)」
「大川端庚申塚の場」。

かの有名な「月もおぼろに白魚の篝も霞む春の宵・・・」の
名台詞。
舞台上この日は節分。やっぱり今の2月。
初春を告げる江戸の風物詩であった。

この時期は白魚の産卵期で海から川へ向かう。
これを目掛けた漁なのであろう。

ともかくも、白魚は秋にも獲れる。

作る。

最初に大根をおろしておく。

天ぷら油を揚げ鍋に用意。
これは、胡麻油ベースでストックしてあるもの。
余熱をしておく。

白魚に粉をまぶす。

粉はすべて、天ぷら粉。
もうこれ一本。

ボールに全卵一個、冷水、氷2個。
よく溶きほぐす。
ここに粉。堅くもなく柔らかくもないところを
目指す。

ここの粉をまぶした白魚。
軽く混ぜて、180℃に上げた油へ投入。
どうもかなりの確率で入れすぎてしまう。
注意。

揚げる形は、かき揚げよりも、ちょっとバラケル
感じを目指す。
かき揚げを揚げるのは、実際には火を通すのが
難しというのが理由ではあるのだが。
食べるにしても、ばらけていた方がうまかろう。

白い紙を皿にのせ、ここにのせる。
天つゆは、いつもの桃屋のつゆ。
ただ最近、スーパーで見つけた無添加「特選」というやつ。

大根おろしは絞らない。
桃屋のつゆは2倍なので、ちょうどよくなる。

白魚というのは、天ぷらにすると、正直のところ
ほぼ味はわからない。まあ、縁起物の域を出ないか。
淡泊な魚なのである。ほぼ衣と天つゆ、おろしの味。
「特選桃屋のつゆ」はなるほど出汁感が強いよう。

なぜこんなに白魚が珍重されたのか。家康の好物で、
その後代々将軍家へ佃の漁師によって毎年献上されていた。
つまり将軍家の魚であったから。
また、先に書いたように江戸の風物詩であったから、
このあたりが理由ではなかろうか。

さて、翌日。
大量にできたので、冷蔵庫へ入れてあった。
乾麺でぶっかけそばにした。

つゆも同じ、大根おろしも。
冷蔵庫に入れた揚げ置きの天ぷらは、オーブントースターで
一度熱くする。どうせ冷やすのだが、でんぷん質の食品は
温めた方が圧倒的にうまい。

そして、まだ、残っていた生のもの。
夜中、玉子とじにした。

白魚は玉子とじも定番であろう。
淡泊なので少しのしょうゆと、塩はちょっと強め。
出汁は夜中なので、ほんだし
青みは、細かく切った大根の葉っぱ。

よい酒の肴、で、ある。

 

 

 

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